親が子どもを学習塾に通わせる理由は、学力向上や受験合格、学習習慣の定着などさまざま。多種多様なニーズに応える学習塾が存在する中、学びの本質である「合格の先」まで見据えた指導で子どもたちと本気で向き合っているのが、創英コーポレーションだ。
昨今は個性や意欲、適性などを測る総合型選抜(旧・AO入試)を導入する大学も増えているが、同社はこの対策講座を精力的に行っていることでも知られる。
個別指導塾でありながら「合格より大切なものがある」と熱く語る代表取締役社長の豊川忠紀氏に、その真意を聞いた。
約50種類の職種を経験した後学習塾を起業
ーー貴社の事業内容について教えてください。
豊川忠紀:
主な事業内容は学習塾の経営ですが、弊社は創業当初から「合格や学力向上よりも大切なものがある」という思いを持ちながら事業を運営しています。
弊社が大切だと思っているのは、受験そのものではなく、受験合格を目指す過程で身につく副次的なものです。例として、合格を目指して努力した経験、諦めずに取り組み続けた経験、目標達成のために自分で計画を立てた経験などです。
受験はあくまで、子どもたちを成長させるための手段でしかなく、私たちはその手段を通して子どもたちに何を与えられるかを考え続けています。
ーー貴社がそのような価値観を持つに至った背景をお聞かせください。
豊川忠紀:
私は学生の頃、学業や受験に対してあまり努力できず、自分の興味があることや好きなことばかりやってきました。初めてアルバイトをしたのは、15歳のときです。バイト先のハンバーガーショップの店長が私のことを「君、使えるなぁ」と褒めてくれて、評価されたことをとても嬉しく感じました。
このことがきっかけで働くことが楽しくなり、もっといろいろな仕事を経験してみたいと思うようになりました。それから20代後半で起業するまでに約50種類の職種を経験し、その中で自身の仕事観がだんだんとできあがっていきました。
学習塾を起業したのは、子どもが好きだったこと、そして今までの仕事では得られなかった、価値のある経験ができると思ったからです。
ーーどのような思いで事業を運営しているのでしょうか?
豊川忠紀:
私はさまざまな仕事の経験が発端となり、人生の目的について考えるようになりましたが、子どもたちが人生について考えるきっかけを与えられる大人は今、とても少ないように感じています。
教育業界は、親や学校の先生に次ぐ身近な「第三の大人」として子どもたちと接し、彼らが夢と目標を持つきっかけをつくることができる貴重な存在です。だからこそ私たちは、自身が持つ夢や目標に対して真摯に向き合い、楽しく働き、その姿を子どもたちに示していくべきだと思います。
ーー今後のビジネス面での展望や貴社の強みをお聞かせください。
豊川忠紀:
弊社は学習塾としては珍しく、「探求型学習」に取り組むための講座を提供しています。「正解のない問い」の答えを考え、それを論理的にまとめたり、意見を交換し合ったりし、力を養う「TanQゼミ」という講座です。昨今の入試ではこのような数値で測りにくい問題が論文や面接で出題されていますし、この講座は、受験した後も子どもたちにとって「一生ものの力」として良い影響を与えると思います。
そして今後は、この取り組みを加速度的に広げていきます。弊社は神奈川県内で最も拠点数の多い個別塾で、東京にもすでに20拠点ほど進出しており、これからは都内を中心にさらにペースを上げて拠点数を増やしていけたらと考えています。
メソッドではなく価値観を共有して人材の質を維持する
ーー人材面についてはどのようにお考えですか?
豊川忠紀:
弊社はこれまでに130校以上開校してきましたが、閉校した教室は1つもありません。このような成果を出し続けていられるのは、人材の質をキープすることを絶対条件にしているからだと思います。
他社では入社して3か月程度の新卒社員を拠点長にする塾も多くありますが、弊社では最低でも1年間は研修を受けてもらい、時間をかけて育てます。
その理由は、社員や講師にも「生徒にただ勉強を教えるのではなく、目標達成に向かう姿勢や取り組み方に主眼を置いて指導する」ことの重要性をしっかり理解し、実践してほしいからです。
適切な指導は子ども一人ひとり違うので、カリキュラムや教え方に絶対的な正解はありません。講師たちにはメソッドではなく、私たちの大切にしている価値観を伝えて、成功事例は社内で積極的に共有することを意識しています。
ーー最後にどのような人と一緒に働きたいかを教えてください。
豊川忠紀:
弊社は未来ある子どもたちが自分に自信を持ち、前向きに生きていけるよう関わることを大切にしていきたい、と強く思っているので、この考えに共感してくれる方に来てもらいたいと思います。また、子どもたちは努力してどんどん成長していくので、その模範として「自分も仕事を通じて成長したい」という意欲があり、実際に成長できる方と一緒に働けると嬉しいですね。
編集後記
豊川社長は取材の最後に「仕事選びの際に職種や業界で悩む人は多いけれど、結局は自分次第。面白い仕事とつまらない仕事があるのではなく、面白くできる人と面白くできない人がいるだけ」と語った。また、かっこいいと思える人や素敵だと思える人と仕事をすることが大切とのこと。
子どもたちの未来に本気で向き合う創英コーポレーションを今後も応援していきたい。
豊川忠紀/1970年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。アルバイトも含めて50種もの職業を経験し、「仲間たちと高い目標に挑む」という方向性を見つけ、1999年に株式会社創英コーポレーションを創業。小学生〜高校生対象の個別指導専門塾「創英ゼミナール」をはじめ、幼児から大人まで、あらゆる年齢層の人に対して幅広い教育サービスや福祉関連事業を展開している。