※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

1軒の喫茶店を開店したことからはじまり、レストランの運営や菓子パンの製造、さらに空港や高速道路のサービスエリアへの店舗展開を経て、大手企業へと成長し続けてきた風月フーズ株式会社。飲食・食品企業としての原点回帰と、交通販路事業者として地域との共生を志す代表取締役社長の福山剛一郎氏に、今後の展望をうかがった。

大人になってから再び目覚めた、家業を継ぐことへの意識

ーー家業を継ぐことを意識するようになった経緯を教えてください。

福山剛一郎:
物心がついたころから経営者の息子だということは理解していたので、何となく「いつか会社を継ぐことになる」「いずれ経営者になるだろう」というイメージは持っていました。

とはいうものの、思春期になると「最初から敷かれているレールを走ること」に抵抗を覚えるようになったんです。その当時は、会社を継ぐことを前提にキャリアを築いていくより、ゼロから違うことに取り組みたいという思いの方が強かったですね。

ところが、いざ就職活動をしても、やりたいことがなかなか見つからず焦るようになりました。何を成し遂げたいか、何に挑戦したいかが明確にならないまま、九州の企業に就職しました。

就職先では、企業と地域の方々とのつながりを学んだり、仕事でやりとりをしていた個人事業主の方々から経営について学んだりして、知見を得られました。そうして経営について知識を深めていくうちに、自分には「風月フーズの後継者として挑戦できるチャンスがある」と感じ、それならば「挑戦してみたい」と改めて思いを抱くようになりました。

「おいしい」と言ってもらいたい思いで、知識や技術をアップグレードし続ける

ーー社長就任後の取り組みについて教えてください。

福山剛一郎:
弊社の起源は、1949年に開店した喫茶店です。当時は、一人ひとりのお客さまの好みに合わせたブレンドを提供していました。そこからレストラン経営や、パンの製造販売などに取り組んだことで、今日の風月フーズができあがりました。

2020年に私が社長に就任しましたが、1973年から運営していたサービスエリア(以下、SA)事業に対し、「集客装置」として頼っている組織文化に違和感を覚え、改革すべきだと感じました。

SAは、自然に多くの人たちが集まる場所です。それだけに、商品をより多く売ることに注力し過ぎて「おいしいものをつくろう・届けよう」と思う気持ちが欠けていることに気がつきました。現在は、よりおいしい商品を多くの人たちに届けたいという思いで、商品づくりの基礎から学び直しています。

ーー今、最も力を入れていることを教えてください。

福山剛一郎:
食品を提供する会社として、あらためて商品開発に力を注いでいます。調理の基礎から学び直すために、外部から専門の先生を招き、たとえば、クッキーの製造工程についてイチから指導を受ける、といったことも行っています。こうした積み重ねによって、よりおいしい商品を生み出すために必要な知見を得られると思っています。

おいしさを追求するためには、これまでのつくり方に捉われるのではなく、学び直しも必要です。「おいしいものをお客さまに届ける」ためには、製造工程や温度管理など基本の学び直しが大事だと思っています。

背景にあるのは「お客さまに喜んでいただく」という思いです。そのために、弊社のすべての商品をおいしいと感じていただけるように、今後も研究開発に努めていきます。

「売れた」ではなく、「売った!」と言い切るために、プロセスを追求し続けたい

ーー今後の展望を教えてください。

福山剛一郎:
地域共生のSAをつくっていきたいと考えています。SAは多くの方が集まる場所だからこそ、生産地の方たちとのご縁ができやすい環境です。地域の方々との「つながりをつくる」ことが、弊社にとってのテーマのひとつでもあります。SAは情報発信にも適した場所なので、地域の魅力を最大限に伝えられる取り組みをしたいですね。

SAの周辺は基本的に過疎地が多いので、積極的に盛り上げていきたいと思っています。そのエリアの食材を使った商品や食事を提供したり、特産物コーナーを設置して売り場を展開したり、経済をうまく回して地域が盛り上がるきっかけをつくりたいですね。

こうした取り組みを重ねていくことで、商品が「売れた」ではなく自分たちの力で「売った」と言い切れる状態になると思うんです。自信を持って「商品を売った!」と言い切れるよう、組織として今後も成長し続けていきたいです。

目標は、やはりお客さまの笑顔です。お客さまに満足していただくためには、まず第一にプロセス管理が必要。おいしいものを提供するには何をすべきなのか、どのような形で商品をお届けすべきなのかなど、今後もプロセスを追求しながらより良い商品を提供していきます。

編集後記

大手企業として成長した現在でも、製造の基本を学び直し、知識や技術の学び直しを心がけている風月フーズ株式会社。顧客においしい商品を提供すべく、SAでの業務展開はもちろん、製造工程の学び直しやプロセス管理などに力を注いでいる。「おいしい」だけではなく、地域共生のSAづくりという観点でも今後の展開に注目していきたい。

福山剛一郎/福岡市出身。慶応義塾大学卒業後、九州の地場大手企業に就職。2008年に風月フーズ株式会社に入社。2020年に代表取締役社長に就任。