※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

経営が厳しい病院や介護施設が増える中、医療と介護に特化したコンサルティング事業を行っているのが、株式会社ZACだ。

同社は組織心理学や認知工学をベースとした組織デザイン理論「知律」を用い、研修や人事コンサルティングサービスを提供している。今の事業を始めたきっかけや、高いリピート率を維持している秘訣などについて、創業者の金森秀晃氏にうかがった。

医療や介護に特化したコンサルティング事業を始めたきっかけ

ーー貴社の事業概要について説明してください。

金森秀晃:
弊社は全国の医療機関、介護施設を中心に、研修や人事制度設計などを行っているコンサルティング会社です。組織づくりや人材育成を通じて、病院や介護施設の経営を安定化させることを目的に活動しています。

また、身体の状態に合わせてマッサージなどを施術し、日頃の生活習慣やセルフケアのアドバイスを行う「エナジーサロンFee'z」も経営しています。このように、医療や介護の現場で働く方々を中心に、内面をサポートするコンサルティングだけでなく、身体のケアも行っているのがポイントです。

ーー医療や介護に特化したコンサルティング事業を始めたきっかけは何でしたか。

金森秀晃:
私はもともと医療従事者ではなく証券会社で働いていました。この仕事を始めたきっかけは、母が末期ガンを患った際、病院スタッフの対応に疑問を持ったことです。

母は前向きな性格で、私が事故で大けがを負ったときも気丈に励ましてくれ、とても救われました。そんな母が末期ガンを患い、闘病生活と向き合う中で精神的に参ってしまいました。

そんな中、医療従事者の方々はもちろん治療には一生懸命に取り組んでくださったのですが、コミュニケーションに関してはあまりケアをしていただけませんでした。息子の立場としては憤りを感じてしまうところもあったのですが、ただ全く悪気がないので、そういったものを教育する制度や仕組みに問題があると考えて、この業界でそうしたものをつくる仕事がしたいと思って起業を決意しました。

それからロイヤル・メルボルン工科大学にて、基本的な医学の知識を習得した後に、今のコンサルティング事業をスタートしました。

事業を始めた当初は、医者でもない20代の若者が話をしてもまったく相手にされず、つらくて逃げ出したい気持ちで一杯でした。それでも、かつての母や私と同じ状況にいる方々を救いたいという一心で、この仕事を続けてきました。

経営理念や課題を共有し、自分事として考えるための研修を提供

ーーサービスの特徴をお教えください。

金森秀晃:
弊社では、医療・介護業界の組織に対して、組織心理学や認知工学をベースにして体系化した組織デザイン理論「知律」を元にした人材育成の研修を行っています。この研修は受講者の方々が当事者意識を持ち、自ら課題を見つけられる仕掛けを盛り込んでいるのが特徴です。

組織の存在意義や目標を共有し、経営理念を自分事化することで、組織の一体化と活性化を目的としています。

また、評価制度を構築する際は、経営者や幹部、社労士や税理士だけでなく、管理職の方々にも参加してもらうようにしています。このように、上層部だけでなく中間層も巻き込むことで、各々に組織の課題について自主的に考えてもらうのが重要なポイントです。

ーー現在では高いリピート率を維持していますが、多くのクライアントの信頼を得ている秘訣は何ですか。

金森秀晃:
弊社が創業した当時は、病院や介護施設向けに組織づくりや人材育成に関するコンサルティングを行っている企業は珍しかったんです。病院や介護施設の方々ですら必要性を感じていなかった組織づくりについてのノウハウを積み上げてきたことが、他社との大きな差別化に繋がっていると感じています。

また、医療や介護の課題を的確にとらえ、クライアントに合わせたオーダーメイドのコンサルができるのも、弊社の強みです。これにより、既存のクライアントから高い評価を得ることで、新規のお客様をご紹介いただけるため、「何年待ってもいいからお願いします」といわれるほどの依頼をいただけるようになりました。

医療コンサルの新たな視点。キャリアと成長を求める方へ

ーー貴社の社内風土はどういったものでしょうか。

金森秀晃:
自主的にお客様のバースデーカードをおつくりしたり、仲間へのサプライズを企画したりと、人を思う気持ちが強い人がそろっていますね。スタッフのホスピタリティ精神の高さも弊社の強さのひとつです。

ーー貴社で働く仕事の魅力を教えてください。

金森秀晃:
命に関わる仕事に携わる医師や、病院を運営する院長から相談を受ける経験は、他ではなかなかできないと思いますね。

医療や介護向けのコンサルは特殊ではありますが、真摯に向き合って学んでいけば一定の結果を出せるようなノウハウを、弊社は持っています。弊社で経験を積めば、どこでも通用するスキルを身に付けられるでしょう。

ーー採用に関してはどのようにお考えですか。

金森秀晃:
定期的に応募があるので、一時期は社員の質を落とさないために厳選していました。ただ最近では、今いる社員のスキルアップのためにも、ある程度人材を確保するため、採用活動にも力を入れています。一度、他社を見た方が弊社の良さがわかると思うので、第二新卒の方も積極的に採用していきたいですね。

ーー後継者育成についてはどのように進めていますか。

金森秀晃:
経営者はスタッフをイチから育て、組織を強化してマネジメントしなければなりません。そのため、コンサルタントと経営者では、求められるスキルがまったく違います。

そこで、所属している社員から選ぶのではなく、経営者の適性を持った人材を採用し、幹部候補として養成するという方法も考えています。

「日本医療の誇りを世界へ」という、若手へのメッセージ

ーー今後の展望についてお話しいただけますか。

金森秀晃:
私の代役となってくれるマネジャーが3人いるので、会社の売上は5年後に今の3倍を目指せると考えています。特に海外の方向けに医療を提供するクライアントのサポートに注力したいと思っています。

医療レベルが世界トップクラスの日本で治療を受けたいと思っている海外の方も多いので、医療分野のインバウンドや海外進出を目指しているクライアントも増えてきました。そこで私たちも日本の医療のクオリティの高さをアピールし、クライアントを支援したいと思っています。

ーー就職・転職活動をしている方に向けてメッセージをお願いします。

金森秀晃:
あるがままの自分でいたいと言いながら、実際には自分の思い通りに生きている方は少ないように思います。給料や社会的ステータスは度外視して、自分は何がしたいのかを徹底的に掘り下げてみてほしいのです。

自分自身とじっくり対話して、人生を通して大切にしたいものを明確にし、自分はどうありたいかを考えてみてください。

編集後記

母親の闘病をきっかけに、患者や家族に対してコミュニケーションが不足している現状を変えたいと、今の事業を始めた金森代表。インタビュー内容から、日本の医療サービスを改善させたいという強い思いが伝わってきた。医療や介護現場に携わる方々を支援する株式会社ZACは、人々の幸せや、やりがいのある職場づくりに貢献していくことだろう。

金森秀晃/1974年生まれ。1998年野村證券株式会社に入社し、1年目からトップセールスの成果を上げる。2002年、株式会社ZACを設立、代表取締役に就任。