※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

日本の民泊事業に大きなインパクトを与えている、matsuri technologies株式会社。同社が世に送り出した「StayX」は使われていない空間を宿泊施設、短期賃貸などの方法で貸し出すことを実現した。インターネットを通じた集客や、リアルタイムの空室管理、AIを用いた清掃員管理など民泊施設の管理のあり方を革新的に変えている。同社を起業した代表取締役の吉田圭汰氏に、起業の経緯や事業への思いをうかがった。

挫折から再スタート。「民泊」に着目し、新たなビジネスを生み出す

ーー創業までの経緯をお聞かせください。

吉田圭汰:
はじめは大学在学中に、友人とソフトウェアを開発する会社を立ち上げました。

当時はベンチャーキャピタルやスタートアップへの支援が今ほど多くはなかったため、他者の資本を預かることが怖く、着手するにはハードルが高かったというのが正直なところでしたね。

同社の事業は、結果的に売却することになりましたが、今後の進路を考えたときに「最初の起業でできなかった部分を見直して、もっとビジネスをしたい」という思いが強くなり、創業したのがmatsuri technologies株式会社です。

ーー創業したのは23歳。会社に対する思いは何か変わりましたか?

吉田圭汰:
2度目の起業では、お預かりした資本をもとに、価値を生み出す事業をつくるという視点が加わりました。また、事業を行うにあたり自分がコントロールできそうな部分だけに集中せず、不確実な部分でもどんな状態かをきちんと見極めて、実行の有無を決めるようになったことも、大きな変化でした。

ーー貴社のメイン事業である、民泊関連事業に行き着くきっかけを教えて下さい。

吉田圭汰:
民泊事業を始めた2016年ごろは、AIへの期待が高まり始めたタイミングでした。データを入れれば自動学習してくれる技術を、当時流行っていた民泊のカスタマーサービスと掛け合わせてみたら面白いのではと考えるようになりました。

事業を興す「種」の可能性を作っていくなかで、日本で民泊をどのように確立させるかということに賭けようと思いました。

発想の源は「使われていない空間を活用できないか」という視点

ーー改めて、貴社の事業について教えてください。

吉田圭汰:
私たちの事業は、民泊物件の候補となるスペースを住宅宿泊事業というライセンスに基づいて、宿泊施設に変えて無人で管理することです。もともとは無人管理ソフトウェアを貸し出しする機会が多かったのですが、徐々に弊社で物件を管理することも増えてきました。不動産を借りて、使いたい方への橋渡しをするのが、事業の大きな柱です。

通常、ホテルは人件費も含めると100室くらいないと採算が合わないのですが、私たちは普通のマンションの一室をホテルにし、鍵の受け渡しや清掃などオペレーションを全てソフトウェアで完結しています。特徴は、同じ部屋を住宅としても宿泊施設としてもお使いいただける点です。

ーー清掃スタッフなどオペレーションはどのようにしているのでしょうか?

吉田圭汰:
コンビニのように、地域へのドミナント(集中出店)でどう施設を管理していくか、という視点でオペレーションしています。

たとえば、弊社が提供しているAI分析のプラットフォーム「m2m-operations」では、宿泊施設の清掃などの現場作業を一元管理しており、登録している1,200名ほどの清掃スタッフが自動的にアサインされます。清掃のクオリティチェックは、AIが口コミなどを分析してサポートできるようになっています。

ーー創業から今に至るまで困難もあったかと思いますが、どのような発想で課題を解決していますか?

吉田圭汰:
私たちの基本的な姿勢は「使われていない空間があるなら、貸せば利益が生める。それならなんとかしてみよう」という発想に基づいています。

一つひとつの課題に全力で向き合って解決してきたことが今につながっていると思っています。たとえば、空き家などの使われていない空間は収益が発生していません。「これってすごくもったいないよね。なんで貸せないんだろう」という小さな疑問や課題の種が原動力となっています。

ーー日本に一時帰国する際の滞在先を提供する「一時帰国.com」や「おためし同棲」などユニークな展開も目を引きます。

吉田圭汰:
弊社の民泊支援事業は、宿泊者の7〜8割がインバウンド需要です。コロナ禍によりインバウンド需要がゼロになったとき、なんとかしようとして生まれたのが「一時帰国.com」や「おためし同棲」です。

ベースとなる仕組みは活かしつつ、さまざまな意味で私たちらしいマーケティングプラットフォームを構築できていると思います。

ーー固定観念に捉われない事業を生み出そうと意識している部分もあるのでしょうか?

吉田圭汰:
テクノロジー産業が発展し、ベースの概念が変わっていますので、これまでの固定観念を覆すようなアプローチや手法で事業を生み出すことを意識しています。とくに、テクノロジー主体でつくられていない業界にとっては、新たな課題が見つかりやすいと思います。

ーー今後の事業展望はありますか。

吉田圭汰:
今後は地方への展開も考えています。使われていない別荘の貸出などの需要がある地域に関しては挑戦の余地がありますね。

インターネットにあるコンテンツが多言語で翻訳されていなかったとしても、来日客は日本語で書かれたコンテンツを自動翻訳機能で読んで滞在先や旅行先を決めるフェーズになっていくはずです。観光資源としての文化が積み上げられてきた場所であれば、遅かれ早かれ人が訪れるようになるでしょうから、事業としての価値が期待できます。

ーーどんな方と一緒に働きたいですか。

吉田圭汰:
日本は今、人口減少などいろいろな課題があるなかで、どう転換するかが求められています。勇気を持って新たな価値観や事業を生み出したい方、そして長期的な視点で大きな価値のために仕事をしてみたいという方と働きたいですね。

弊社はとても早いスピードで成長している会社なので、短期間でキャリアアップしたい方には向いています。私たちの仕事は「未来をつくる」ための仕事です。そこに価値を感じられる方はぜひ、一緒に働きましょう!

編集後記

民泊事業にいち早く着目し、ソフトウェアという切り口でインバウンド需要を追い風に成長してきたmatsuri technologies株式会社。コロナ禍で需要が減少したときも、新たな事業を生み出し続けてきた吉田社長。合理的な視点を常に持ちながら、挑戦しつづける姿勢が伝わり、大いに刺激を受けた。

吉田圭汰/1992年、東京都生まれ。大学時代に起業し事業を売却。2016年にmatsuri technologies株式会社を創業。ソフトウェアを主軸に、空間の価値を最大化するソリューションの「StayX」の展開に注力している。