日本緑茶センター株式会社は、ハーブティー市場をいち早く日本で開拓したパイオニア企業だ。世界中のお茶やアルガンオイル、塩などの輸出入を手がけ、人々の健康に関わる食の事業を幅広く展開している。
抹茶ブームが世界で巻き起こるなど、海外からも注目を集める日本のお茶市場。同社の代表取締役社長である北島大太朗氏に、日本のお茶の可能性や事業戦略を聞いた。
お茶を通して人々の健康と業界の活性化に貢献
――貴社の事業内容について教えてください。
北島大太朗:
弊社は世界中のお茶やアルガンオイル、塩などを輸出入する事業をメインに展開しています。たとえば、岩塩に6種のハーブとスパイスをブレンドした万能調味料の「クレイジーソルト」は、弊社が手がけている商品の1つです。ハーブをお茶として飲むだけでなく、食べて楽しんでもらいたいという思いから始めました。
また、嗜好品業界を活気づけたいという思いから、まだ日本に浸透していない頃からカフェインを取り除いた「デカフェ」商品を手がけています。社内に妊婦がいたこともあり、安心して飲めるデカフェのお茶を専門のブランドとしてスタートさせました。
ーー協会の活動についてもお聞かせください。
北島大太朗:
日本マテ茶協会や日本中国茶普及協会などを立ち上げたのは、業界自体を盛り上げたいと思ったからです。協会では、茶類の知識をつけるための講習を開き、受講者数は数百名を超えています。
食用や美容、薬理など異業種の方々との交流の場にもなっていますし、一社でできることには限りがあるので、同じ志がある方々と茶類の普及に努めているところです。
大量の在庫を抱えた苦境を切り抜けて成長
ーー貴社に入社した理由と社長就任までのことを聞かせていただけますか。
北島大太朗:
一番は幼い頃から家業である弊社の商品に慣れ親しんでいたことが大きな理由です。それにもともと食品自体に興味もあり、世界をまたにかけたビジネスをしたいとも思っていました。さらに、心と身体の健康に役立つビジネスは何かと考えたら、弊社しかありませんでした。
入社当初はアメリカとドイツでビジネスの仕方などを学び、それから営業部長、副社長を経て社長に就任。社長就任後は、量販店の開拓に力を入れるところから始めました。
ーー就任後に苦労されたエピソードを教えてください。
北島大太朗:
当時、お茶の原料で多くの在庫が出てしまい、どうにかして売らなければならない状況にありました。原料として売るだけでは難しかったので、開発部門を設けて新製品を開発することで、なんとか良い品質の状態で売り切ることができました。
そのときは本当に大変でしたが、量販店での経験や茶類の原点、マーケットインの考え方などがすべて自分の中でつながり、ビジネスマンとして鍛えられた実感があります。
「ハーブと暮らす」をテーマにハーブをより身近な存在にしたい
ーー今後の展望をお聞かせください。
北島大太朗:
大きくは、得意先の拡大とインバウンド需要の2つがあります。昨今は世界で抹茶ブームが起こっており、また日本紅茶の認知も拡大しています。今は円安効果もありますから、輸出に力を入れていち早く世界に展開していきたいですね。
インバウンド需要に関しては、弊社は有名な神社等の売店などで商品を販売しており、現在多くの受注があります。また、漢方に精通している中国人にもハーブティーが多く売れるなど、思いがけない「引き」があります。
品質の良い商品を扱っていると、いろいろな角度からこういった引きがあるので、いっそう営業にも力を入れたいと思っています。
また、弊社は「ハーブと暮らす」をテーマに掲げ、今後は食以外の商品も提供していこうと考えています。食のブランドだけでなく、ライフスタイルブランドとして多くの人にハーブに親しんでもらいたいですね。
そのほかにも、ハーブティーの中で「フルーツティー」というセグメントを確立しようとしているところです。フルーツティーという飲みやすい分野からハーブティーを知ってもらい、徐々に親しんでもらえたらと考えています。
ーー北島社長の大切にしている考え方を教えてください。
北島大太朗:
弊社では複数の部署が協調性をもってビジネスを行い、その結果をお客様へと届けられるように心がけています。中でも私が大切にしている精神は、自分自身に対してのみですが、自己犠牲と情熱です。自己犠牲をするくらいでないと他者はついてきてくれません。自己犠牲と情熱は私の行動指針であり目標でもあります。
編集後記
「品質の良さ」にこだわり、人々の心と身体の健康に貢献する日本緑茶センター。「儲かれば何でも良いという考えは一切ない」と話す北島社長の真剣なまなざしからは、自社の事業に誠実に向き合ってきたことがうかがえた。
茶類に対する熱い思いを持つ北島社長率いる同社が、日本の価値あるお茶文化を世界に届けるようこれからも応援したい。
北島大太朗/1972年生まれ。東京都出身。獨協大学経済学部卒業後、父が創業した日本緑茶センター株式会社に入社。2007年に営業統括部長、2013年に代表取締役副社長を経て、2014年代表取締役社長に就任。2017年には、長年のアメリカ農産物市場拡大への貢献を評価され、「第6回米日農産物貿易の殿堂入り(U.S.-Japan Agricultural Trade Hall of Fame)」を受賞。