※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

テレビやラジオよりもネットを見る社会になりつつある近年、広告業界では、ユーザーのニーズに合わせた販売促進をおこなうダイレクトマーケティングによるネット広告が多く展開されている。

そんな広告業界において、ニッチな市場だった頃からダイレクトマーケティングに取り組んでいたのが株式会社売れるネット広告社である。今回は、代表取締役社長CEOの加藤公一レオ氏から、起業のきっかけや企業風土、今後の展望などについてうかがった。

母親への思いが起業へのモチベーション

ーー海外での生い立ちが、現在の考え方にどのような影響を与えていますか。

加藤公一レオ:
海外での生い立ちが、私の起業のきっかけです。父親がブラジルで日本食レストラン事業を展開していた時に私が生まれ、その後、ブラジルからアメリカに移りました。

しかし、父親の会社が倒産し、両親が離婚してしまい、8歳くらいからは母子家庭で育ちました。家では、母親が常にお金の心配をしている様子を見て、小中学生の頃から「起業してお金持ちになって母親に贅沢をさせる。親孝行する」という思いがあり、それが私の原動力でした。

ただ、母親からは「絶対に起業はするな」と言われていました。それは父親が倒産したのを目の当たりにしていたからで、母は商売や経営の大変さを理解していたようです。そのため、「リスクがあることをしてほしくない」と言われ続けていました。

実力と知名度を積み重ね、リスクのない起業を実現

ーーどのようにして起業されたのか、起業までのストーリーを教えてください。

加藤公一レオ:
昔から「実力と知名度さえあれば、リスクのない起業ができる」と信じていました。そこで大学卒業後は、経験のために大手総合商社の三菱商事株式会社に入社、その後は、広告業界大手の株式会社ADKホールディングスに入り、修業をしながら知名度を上げていきました。

当時、社員が3000人ほどいる会社でしたが、全社のネット広告の売り上げの4分の1を私が稼いだことによって、社内外の有名人になったのです。そこから、本の出版や取材、講演などが増え知名度と実力が急激に上がり、「ここが起業のタイミングだ」と感じ、2010年に弊社を立ち上げるに至りました。

ーー実力と知名度をつけてからの起業の成果は、実際にいかがでしたか。

加藤公一レオ:
おかげさまで初月から黒字になりました。「ネット広告と言えば、加藤公一レオ」というブランドが完全にでき上がっていたので、ニュースで会社の設立を取り上げていただいたこともあります。その他にも、起業当初から問い合わせの電話をいただき、多くの方が挨拶に来てくださり、結果的に営業することなく受注が入るようになりました。まさに私が理想とした「リスクのない起業」が実現できたと思っています。

ネット広告の先駆者が革新的なアプローチで大手企業との取引を成し遂げる

ーーなぜネット広告に注目するようになったのですか。

加藤公一レオ:
私がADKに入社した当時、多くの人はマスメディア向けのブランディングをやりたがっていたと思います。しかしながら、私はその中で、「差別化のために正反対のことをしよう」と決め、当時はニッチな分野であったネットのダイレクトマーケティングに着目したのです。市場規模が小さかったため周りからはばかにされたのですが、「絶対にいつかこっちがくる」と信じていました。

そんな中、リーマン・ショックや震災で日本が不景気になり、広告主の費用対効果意識が高まり、ネット広告が急速に成長していきました。今はご存じの通り、ネット広告が圧倒的No.1の広告媒体になっていますね。

ーー創業当時、大手企業と取引するために、どのようなアプローチをしましたか。

加藤公一レオ:
当時、セミナー方式を採用することは珍しかったのですが、私はプレゼンテーションが得意だったので、100人ほどの規模のセミナーで講演を行いました。その結果、参加者の中から「依頼したい」という方が増え、複数の健康商品や化粧品を扱う大手企業から声がかかったのです。

独自の選考基準と教育体制

ーー貴社で活躍する人材の採用基準をお聞かせください。

加藤公一レオ:
選考基準としては、「外見がいい人」です。勿論、これは単に容姿の良し悪しを指しているわけではありません。私は、今まで何かを一生懸命取り組んできた方にはオーラがあり、これも外見のひとつの要素と捉えています。そういう意味もあり、弊社では採用面接時にPowerPointで自分を売り込むプレゼンテーションを行っていただき、そのプレゼンテーションの姿や内容を見て、採用を判断しています。

ーー入社後の教育体制はどのような仕組みになっていますか。

加藤公一レオ:
弊社では、企業理念や企業構造の研修を受けた後、4月〜6月末までは、各部署を約2週間ずつ回り、業務内容の理解を深めてもらいます。また、7月に配属になってから12月末まではOJTですが、入社9ヶ月後の1月からは完全に独り立ちします。教わるよりも実務を通じて学ぶことで、効率的に仕事を覚えられるからです。

ーー人材育成で工夫していることはありますか。

加藤公一レオ:
新規受注をとるだけの部署などの業務を段階的に分解した後に廃止し、受注から既存活動まで全て1人の営業マンが行う方法に変えました。効率を求める今の時代とは逆行しているのですが、弊社では何でもできる社員の育成を目指しています。

ダイレクトマーケティングを通じて目指す世界の姿とビジョン

ーー今後の展望はどのようにお考えですか。

加藤公一レオ:
2023年に上場を果たし、今後は海外進出を考えています。もともと、グローバルにサービスを提供をすることを目指しており、「世界中にたくさんのドラマを創る」という企業理念を掲げています。

弊社が最終的に目指しているビジョンは、「世界中をダイレクトマーケティングだらけにすること」です。私がこの世界に入る前は、イメージ広告が主流であり、効果のわからない広告に対して無駄な投資をすることも多く、それによって倒産する会社もありました。弊社はその部分にメスを入れ大きな改革を行ってきました。日本だけではなく、世界一のダイレクトマーケティング支援会社になっていきたいですね。

編集後記

加藤社長は取材中、「行動さえすれば、人生楽勝です。日本は真面目な人が多く、すばらしい人たちばかりなのに、行動しない人が多い。日本は、自分さえ行動すればなんでも叶う国、成功しやすい国です」と語る。

独自の選考基準や教育制度、チャンスを与えるシステムは、行動できる人を育てていく風土があるように感じた。広告業界と株式会社売れるネット広告社のさらなる飛躍が楽しみだ。

加藤公一レオ/1975年ブラジル・サンパウロ生まれ、アメリカ・ロサンゼルス育ち。西南学院大学経済学部卒業後、三菱商事株式会社に入社。Havas Worldwide Tokyo、株式会社ADKホールディングスにて、一貫してネットビジネスを軸としたダイレクトマーケティングに従事。担当した全てのクライアントのネット広告を大成功させる。広告業界のオリンピック「アドテック」で3年連続人気スピーカーランキングで1位を獲得。2010年に株式会社売れるネット広告社を設立。