※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

諏訪商店グループは、県内の土産物や海産物を販売する卸問屋として、千葉県市原市に諏訪商店として創業。県内の味噌販売店などのM&Aを行い、自社の農場をつくるなど、経営の多角化を進めてきた。

自社の特徴や経営理念に込めた思い、千葉県の活性化を目指すプロジェクトなどについて、代表取締役の諏訪寿一氏に話をうかがった。

食材の生産から加工、製造、販売まで一貫して行う6次産業が強み

ーーはじめに貴社の事業内容について教えてください。

諏訪寿一:
食品を基点に、作物の栽培から自社商品の製造や卸売まで行い、直営店の「房の駅」も運営しています。主力商品は千葉県の名産品ですが、全国の商品も一部取り扱っています。

作物の生産から加工、販売までを一貫して行う、いわゆる6次産業を行っているのが他社との大きな違いです。グループ企業の株式会社房の駅農場では、いちごやさつまいも、落花生などを栽培し、干し芋や煎り落花生の加工工場も運営しています。このように商品の原料となる作物の栽培から携わっている点が、弊社ならではの特徴です。

ーー先代であるお父様から会社を継いだ経緯を聞かせてください。

諏訪寿一:
学生時代には休みの間に家業を手伝っていたので、跡を継ぐことは以前から意識していました。当時は業績は悪くないけれど、社内の雰囲気があまり良くないと感じていたのです。そのため、自分がこの会社を何とかしなければいけないと思っていました。

卒業後、弊社に入社し、28歳のときに先代から「3年後に退任する」と話がありました。そこで自分が跡継ぎだと思っていた私は、その場で次期経営者としての意気込みを語りました。しかし、先代は別の社員を後継者に指名するつもりだったそうです。

こうした食い違いはあったものの、結果的に会社を引き継ぐことになり、後継者育成講座に通うなどして会社経営について学びました。

事業構造の見直しや多角化経営を進め、会社の危機を回避

ーーこれまでの困難を乗り越えたエピソードを聞かせてください。

諏訪寿一:
あるお菓子メーカーの食品偽装が引き金となり、お土産全体の売上が下がった時期がありました。ただ弊社ではその前から直営店を出店し、小売業にも進出していたため、赤字分をいくらか補てんできました。

また、東日本大震災やコロナ禍の際には、徹底的にコストを削減し、利益率の改善を図りました。さらに、店舗の改廃や工場の統廃合を行い、M&Aも実施しました。こうした事業構造の改革に取り組み、事業を多角化することで乗り越えてきました。

ーーM&Aを行う際、どのような企業に声をかけていますか。

諏訪寿一:
自分たちの事業を残したいという強い思いがあり、私たちも応援したいと思える企業と提携するようにしています。そのため、お互いの思いが合致しなければ、計画が白紙になるケースもあります。

今後も、M&Aはもちろん、新たな商品の開発などを通して、地元に根ざす思いをつなぎ、地域に貢献していきたいと考えています。

諏訪商店の礎を築いた「大切にする、カタチにする、高める」

ーー会社を経営するうえで大切にされている考えは何でしょうか。

諏訪寿一:
経営理念である「大切にする、カタチにする、高める」を、私たちの指針にしています。「大切にする」は、お客様や生産者の方々、一緒に働く仲間、さらに自分自身にも感謝し、一秒一秒を大切に生きることです。

「カタチにする」は、それぞれが持つアイデアや考え、周りの方々への思いを具現化することです。「高める」は会社や店舗、工場、商品の質を高め、スタッフ全員が成長できるように努めることです。

こうした基礎の部分ができていなければ、売上が右肩上がりになり、会社の規模が大きくなったとしても、本末転倒です。そのため、社員一人ひとりがこの理念を体現し、生き方を整えていってほしいと思っています。

この経営理念を導入してから社内の雰囲気も良くなってきたので、さらに社内に定着させていく方針です。

千葉県の発展に貢献し、つらさも楽しさも共有する仲間の輪を広げる

ーー注力されている取り組みを教えてください。

諏訪寿一:
SDGsの理念に基づいて、千葉県の発展に貢献する「千葉もっと元気に楽しく笑顔にプロジェクト」を立ち上げました。

このプロジェクトは、「子ども元気貧困ゼロプロジェクト」「食品ハイキゼロプロジェクト」「千葉54市町村笑顔プロジェクト」「海と山を守るプラスチックゼロプロジェクト」の4つに分かれています。

日々の業務の延長線上としてこれらの活動を行い、私たちの思いに共感してくれる仲間を増やしていきたいと思っています。

ーー今後はどんな未来を目指しているのでしょうか。

諏訪寿一:
「満開の桜大作戦」と名付け、2032年までにグループ全体で売上123億円の達成を目指しています。弊社ではつらいときはともに涙を流し、嬉しいときはともに笑う仲間を「桜咲く園」と表現しています。

私たちが核となり、この桜咲く園を農場や取引先、工場、販売網、そしてお客様まで広げ、満開の桜を咲かせていきたいと思っています。

ーー貴社が求める人物像を聞かせてください。

諏訪寿一:
積極性と自主性がある人がいいですね。失敗を人のせいにせず、自分の責任ととらえ、自ら考えて行動できる人にぜひ仲間になってほしいと思います。

社内向けのブログでよく使う言葉に「外れ値であれ」があります。この言葉には現状維持を打破し、思い切ったチャレンジをしてほしいという思いを込めています。これは幼少期の私の成功体験が基になっています。

私は小学2年生のときに野球チームに入りたかったのですが、3年生以上でないと加入できない決まりでした。そこで、彼らがランニングしている後をついて一緒に走ったり、バッティングのときにボール拾いをしたりして必死にアピールしました。

すると、見かねた野球チームの監督が、特別に加入を認めてくれたのです。このように他の人がしないようなトライがチャンスをつかむきっかけになるので、果敢に挑戦してほしいと思います。

編集後記

商品に使う食材の栽培も手がけ、地元企業と協力しながら千葉県の食の魅力を発信している諏訪社長。千葉県の食の豊かさをアピールしたいという思いが、ひしひしと伝わってきた。諏訪商店グループは、これからも千葉県の魅力を日本中に届けてくれることだろう。

諏訪寿一/1971年生まれ。明治大学を卒業後、1996年に株式会社諏訪商店に入社。2003年、同社代表取締役に就任。店舗展開、隣接異業種への進出、M&Aなどに注力している。