家電にまつわる細かな悩みに応え、独自の「ニッチ戦略」を得意とするエスケイジャパン株式会社。代表取締役の杉弘行氏は「大手が好んで手がけない分野だったとしても、そこに参入することには大きな意味がある」と語る。
そんな杉代表は組織づくりにおいても独自の戦略を用いる。社員を積極的に社長に登用し、新会社を増やし続けたいというのだ。一体その真意はどのようなものか。社長の思い描くものづくりと組織づくりのプランをうかがった。
家電量販店の分社化を経て創業
ーー貴社を創業した経緯を教えてください。
杉弘行:
家電問屋に勤務していた頃、社員からの強い要望があり、分社して私が新会社を立ち上げ代表に就任することになりました。その後社名を変更して今のエスケイジャパングループが誕生したというわけです。
分社化当時は今とは異なり、家電問屋をメインに営んでいました。しかし、時代の流れから問屋を取り巻く環境が厳しくなるだろうと考え、業態を現在の家電の製造・販売に変更したのです。
ーー杉代表のモットーは何でしょうか。
杉弘行:
私のモットーは「約束を必ず守ること」です。あたり前のことかもしれませんが、約束を厳守することは信頼の獲得や、顧客との関係を対等に保つことにつながります。
私たちのような中小企業にとって、約束を守ることと、約束を守ってもらうことは同じくらい重要です。たとえば1万個納品の案件があったとして、弊社が納品の約束を守っても、顧客に購入の約束を守ってもらえなければ、弊社は大赤字になってしまいます。
このような事態を避けるために、弊社は必ず約束を守るようにしており、顧客にも約束を守ってもらえる関係をつくるようにしています。
会社はサービス精神だけでは成り立ちません。信頼獲得と会社を守ること、これらを両立させ続けることは意外と難しいのです。
「信頼」が勝ち取った初対面で15億円の契約
ーー仕事の中で印象に残っている出来事を教えてください。
杉弘行:
今まで取引したことが無い新規顧客から、いきなり15億円分の発注をいただいたエピソードがあります。その顧客とは初対面だったので、そのような発注をいただき本当に驚きました。
発注に至った背景を聞くと、その顧客は弊社のことを、知り合いから聞いていたそうで、評判の良さから信頼できると判断していたとのことでした。
このとき私は改めて「信頼」の大切さを実感しました。会社の良い評判は一つ二つの実績くらいでは獲得できません。長きにわたり真面目に仕事を続けてきたからこそ、この出来事につながったのだと思います。
「社長を増やす」ことで人材も組織も成長
ーー貴社独自の強みは何でしょうか?
杉弘行:
単なる“会社員”の集合体ではなく、全員が”社長”のように会社全体のことを考えるマインドをもった集合体・組織であることです。
弊社はあえて事業ごとに会社を分けて運営しています。各会社の社長は弊社の社員から選出します。事業と人材の準備が整った時点で新たな会社を設立し、新社長が誕生するのです。
会社を分ける理由は、中小企業の課題である優秀な人材を集めるためです。中小企業だとなかなか優れた人材は集まりにくいと言われますが、社長になれるような環境づくりを整備し、それを発信することで、起業家のようなマインドやトップを目指すやる気を持った人材を集めることができると思っています。
ニッチ戦略で競合の少ない独自ポジションを確立
ーー貴社の強みを教えてください。
杉弘行:
大手が好んでは手がけないニッチなニーズに応えられる点です。たとえば扇風機や小型食洗器、移動式クーラーなどは大手が参入しにくいジャンルです。弊社はあえてこれらを手がけることで大手との住み分けをしています。
また、弊社はハードだけでなくソフト面でもニッチなニーズに応えています。ここでいうソフトとは家電の取り付けのことで、家電量販店が取り付けに対応していない商品にも、対応できる部隊を整えることで顧客獲得につなげています。
商品自体にも強みがあります。たとえば小型食洗器(※1)は持ち運び可能なほど小さく、置く場所を選びません。設置工事無しで使うことが可能です。海外に比べ小さい規格になっている日本のキッチンでも使いやすくなっています。
(※1)食器洗い乾燥機SJM-DWM6UVC / SJM-DW6A
また、移動式クーラー(※2)も、設置工事無しで部屋に置けばすぐに使えます。クーラーがついていない北海道の住宅や社宅のほか、現場事務所のような簡易施設などでも季節限定で設置できます。実際に、今までクーラーが不要と言われていた北海道地域では、多くの注文をいただき、かゆいところに手が届く商品として愛用されています。
(※2)移動式エアコン(冷風機)SKJ-KY26A / SKJ-KY20A
今後も引き続き、生活の「困った」にピンポイントで応えられる商品を展開していく予定です。
ものづくりと組織づくりのへの思い
ーー組織として注力しているテーマは何でしょうか?
杉弘行:
真摯な姿勢でものづくりに向き合うことと人材育成です。
ものづくりに真摯に取り組むべき理由は、製品の「付加価値」が大事だからです。商品はニーズと付加価値があればおおむね売れるものですが、実際にニーズと付加価値を合致させることは簡単ではありません。
そこで弊社では毎月1回、全事業所の全営業社員を集めた営業会議を実施しています。家電からペット商材、理美容までさまざまな商品をつくっているので、会議はまさにアイデアが飛び交う場となっています。
社員を社長として働けるレベルまで育成し、新たな会社を立ち上げ、グループ全体の多様性や体力を高めていく。この流れが進んでいけば弊社はより安定した環境を手に入れられるでしょう。
ーー今後はどのような組織づくりに取り組みたいですか?
杉弘行:
一人でも多くの社長を創出し、一社でも多くの会社をつくりたいと考えています。
私は全社員に対して「入社した以上は社長になってほしい」と常々考えており、実際に社員にも伝えています。経営者の思考を持って働く社員が集まれば、自然と企業は栄えるでしょう。社員のやりがいや報酬にも反映されます。
私は「経営者になりたい人、おいで」という気持ちで求人を出しています。大企業の社長になるのは難しいですが、弊社であれば誰にでも社長になれるチャンスがありますし、頑張り次第では大企業の社長になることも可能です。
現在はグループとして7社を展開していますが、今後5〜10年後に20社程度まで増やすことが理想です。そのためには社長を任せられる人材が不可欠なので、実力を発揮したい方はぜひ弊社に来てほしいですね。
編集後記
社長を増やして会社を増やせば組織として強固になる。本気で「社員全員に社長になってもらいたい」と語る杉代表の言葉からは、確信を感じさせる「言霊」のようなものが感じられた。同氏のような社員を信じ抜く人物こそが、次の時代をけん引する人材を生み出すのだろう。
杉弘行/1951年、山口県出身。大阪の大手生命保険会社に就職後、地元山口県の家電製品の問屋に就職。27歳で北九州支店、支店長に就任。その後同社が分社化し、現在のエスケイジャパングループを設立。代表取締役に就任。