ZERO商事株式会社は、外国人人材に特化した人材派遣会社である。派遣後の365日24時間相談サービスで、労働者の長期定着を支援する。また、住居の紹介サービスも行い、外国人人材を採用する企業の負担を軽減できるようにサポートしている。
起業の経緯や、開校予定の日本語学校の運営方針、今後の展望などについて、創業者の古川拓海氏に話をうかがった。
人材派遣・育成・不動産事業を展開し、働き手と企業の双方をサポート
ーーはじめに事業内容を教えてください。
古川拓海:
人材派遣に関しては、在日外国人の派遣や人材管理を行っています。また、言語や文化の違いによる職場での課題を解消するため、365日24時間相談を受け付けています。これにより職場でのトラブルを未然に防ぎ、長期定着をサポートしています。
人材育成事業では、2025年4月に日本語学校を開校する予定です。日本での就職を希望する方に日本語や文化を学んでもらい、就職に向けた育成を行います。自立するための実践的なカリキュラムを用意しており、社会で活躍するためのスキルを身に付けられます。
不動産事業では、外国人人材の受け入れ先の支援を目的とし、物件紹介サービスを行っています。このように人材採用から教育、住居の確保を三本柱としてワンストップで行う事業を展開しています。
ーー日本で起業したきっかけは何ですか?
古川拓海:
来日当初は日本語が話せないことが原因で、半年ほど職に就けず苦労しました。この経験から、私と同じ苦労をしなくて済むように、日本での就職を希望する方をサポートしたいと思ったことがきっかけです。
また、人材不足の日本で外国人労働者の需要が高まると予測し、外国人人材に特化した派遣会社をつくろうと思い立ちました。そこで起業に必要な知識を蓄え、起業資金を確保するため一般企業に就職し、少しずつ準備を始めました。
母国ではさまざまな経験を積んだものの、日本での経験や地位はゼロに等しいものでした。そのため、すべてゼロの状態からスタートし、会社を大きくするという決意で「ZERO商事株式会社」と名付けたのです。
ーー起業当初はどのような面で苦労しましたか。
古川拓海:
派遣先から人材に対して「ここは日本だから日本のルールを守ってください」と言われることが度々ありました。しかし、それぞれ育ってきた背景は違いますし、日本の礼儀やマナーに慣れるまではある程度の時間が必要です。
そこで、私自身が彼らのことを深く知るために現地に出向き、人柄や生活習慣などを学びました。その後、彼らが育ってきた環境と日本との違いを説明し、派遣先の企業を説得していきました。
また、トラブル対応では夜間に呼び出しを受ける場合もあり、従業員に負担がかかっていました。しかし、相手が生死をさまよう危険な状態の場合もあるため、重要な業務です。そこで日頃から「1本の電話で相手の人生が変わる」と、責任の重さを意識するよう伝えてきました。
さらに緊急連絡先に自分の電話番号も記載し、私も対応に当たる姿勢を見せ、彼らの模範となれるよう意識しました。
日本で活躍できる外国人人材を育成するための取り組み
ーー開校予定の日本語学校の運営方針を教えてください。
古川拓海:
教員候補として、若手人材を中心に採用していきたいと考えています。2024年の4月に、日本語学校の教育内容などを審査する制度を定めた「日本語教育機関認定法」が創設されました。これにより、5年後には新しい国家資格である「登録日本語教員」の取得が義務付けられます。
教員採用に関して高齢者層も視野に入れていましたが、これから国家資格を取得するとなると、若年層が中心となります。ただ、現役世代であれば自身の経験を学生に教えられるため、私たちにとっては大きなメリットとなります。これから教員の採用を強化し、実践的なスキルを提供できるよう尽力していきます。
ーー外国人人材に対し、日本での就職を斡旋する具体的な対策はどういったものですか。
古川拓海:
今後は各国の大学などと連携し、日本在住の外国人だけでなく、現地の人材を確保することも考えています。また、就職時に直面する課題に対処するため、現地での就労支援も計画しています。
日本語や日本のカルチャー教育だけでなく、実務研修を受けられるよう、現地で喫茶店や給食センターをつくる予定です。さらに日本の高いホスピタリティを習得する場として、ベトナムでのホテル運営も視野に入れています。
こうして自国で事前準備をしておけば、実際に日本で就職したときのギャップを埋められます。さらに実務経験があることで、採用時のアピールポイントにもなります。
言語や文化の壁を越え、お互いを尊重し共生する社会へ
ーー今後の展望をお聞かせください。
古川拓海:
フランチャイズ化やM&Aも視野に入れ、住宅提供サービスを全国に拡大していきたいと考えています。企業にとっては短期間で退職者が出た場合、無駄な家賃が発生してしまいます。そこで私たちが全国各地の住居を紹介することで、コストの削減につなげます。
また人材派遣に関しては、アジア圏やヨーロッパ圏の企業にも斡旋していきたいと思っています。求職者に対しては、現地の環境や歴史、文化、生活するうえでの注意点などについてレクチャーも行います。
また、それぞれの就職先に合わせて就業トレーニングも実施し、安心して仕事を始められるようにサポートします。さらに、現地の物件を案内するシステムを導入し、就職先も住む場所も一括で検索できるようにするのが理想です。
このようにひとつのサイトであらゆるサービスを完結できる、人材派遣版のAmazonを目指していきます。
ーー貴社が求めるのはどのような人物ですか?
古川拓海:
新しいアイデアを取り入れ、ビジネスの可能性を切り拓いていける方を歓迎します。なお、今後の事業展開においてシステム構築は必須なため、ITエンジニアも募集します。
言葉や文化の違いを乗り越え、お互いを理解し合う共生社会の実現に向け、協力してくれる方をお待ちしています。
編集後記
世界各国の言葉や文化の違いを認め合う、共生社会の実現に向け奔走する古川社長。人口減少が進み、人材のグローバル化が重視される日本において、それが不可欠な考えだと感じた古川社長は、ZERO商事株式会社を率いて、誰もがいきいきと働けて、企業の負担も軽減できるように、これからも世の中に貢献していくことだろう。
古川拓海/1982年中国福建省生まれ。2008年留学生として来日。2014年ZERO商事株式会社設立。現在では、日本にとどまらず、中国、ベトナムをはじめとする外国企業との取引も活発に行っている。また、自社に限らず、在日外国人の起業の手助けも行う。