
起業家になるという強い思いと出会いが道を切り開く
ーー起業に至るまでの経緯を教えてください。
岡本啓毅:
弊社の共同創業者である今村とアメリカの留学先で出会い、親しくなったことが始まりです。当時から「20代で一緒に起業しよう」と話していましたが、お互いにビジネス経験がなく、まずはそれぞれが別のベンチャー企業に就職しました。しかし、今村が入社した会社は非常に厳しい環境で、8ヶ月後に出張先で倒れ、入院を経て退職したのです。
その後、今村が就職活動の一環で登録したのが「第二新卒ナビ」というサイトです。株式会社第二新卒という小規模な会社が運営するものでした。今村がキャリア面接で「将来的に起業したい」と話したところ、この社長がアルバイトとして彼を採用してくれることになったのです。
この経緯を聞いた私は「社長と私たち2人の小さな会社であれば、早く起業に近づけるのではないか」と考えます。そして私もその会社で働きたいと申し出ましたが、資金的な理由で一度は断られました。それでも諦めきれず「3ヶ月無給で働き、結果が出なければ辞めても構わない」と提案し、採用していただいたのです。
そうして事業が軌道に乗り始めた頃に、突然社長から「今月末で岡本さんと今村さんを終了にしたい」と告げられます。理由は、家族4人で海外に移住する決断をしたからとのことです。そこで、私たちは新しい会社を設立し、株式会社第二新卒の事業を買収しようと考えました。そして、新会社での売上を買収費用に充てる提案が受け入れられ、2012年2月、株式会社UZUZは創業したのです。
ーー株式会社UZUZとなり、変えたことはありますか?
岡本啓毅:
入社する方と企業とのミスマッチを防ぐことに、より力を注いでいます。
特に弊社には、「将来性のある職に就いてほしい」という若者を支援する会社としての思いがあるので、その一環としてITエンジニアの道を目指す方々への支援を始めました。しかし、当初は課題もありました。エンジニア未経験の方にとって、ただ説明しただけでは業務内容がイメージしづらく、入社後すぐに退職してしまうケースが多くあったのです。
そこで、入社後の業務と同じ内容を事前に体験できる場として「ウズウズカレッジ」を設立しました。事前に仕事を体験してもらうことで、業務内容が合うと判断した場合はエンジニアの道に進み、合わない場合は別の職種を選べる仕組みです。その結果、入社後の短期離職率を大幅に低下させることに成功しています。
求職者に伴走し、よりマッチした就職先を支援する

ーー改めて貴社の事業について聞かせてください。
岡本啓毅:
既卒や第二新卒を対象に人材紹介事業を展開しており、最近では新卒者のサポートとして、YouTubeを活用した情報発信サービスも新たに開始しました。また、就職活動に関する質問にキャリアアドバイザーが完全無料で回答する「キャリエモン」というQ&Aサービスも運営しています。登録しているだけで企業からのスカウトも届きます。
さらに、グループ会社として株式会社ESESと株式会社Otaksの、2つのIT企業を設立しました。これらの会社を設立した理由は、日本のエンジニアの約7割を占めるとされるSES※(客先常駐型ITエンジニア)のSESの働き方や待遇面の向上や、SESエンジニアが理想のキャリアを実現できる業界にしていくことを目指しています。2024年には、IT教育事業を行う「株式会社UZUZ COLLEGE」も分社化しています。
(※)SESエンジニア(System Engineering Service):客先常駐型のITエンジニア
ーー貴社の強みはどのような点にありますか?
岡本啓毅:
求職者一人ひとりの希望に耳を傾け、目指すキャリアに合った提案を行う点です。必要に応じ、入社後も長期的な支援を行うケースもあり、現在では、クライアント企業の約6割が従業員数1,000名以上の大手企業です。特にIT企業からのリピート依頼をいただくことが増えていますね。
ありがたいことに弊社の就職支援は、若者の減少に伴う採用難の解決策として評価をいただくことが多くなりました。また、弊社で働く社員一人ひとりが「求職者に寄り添いたい」という強い思いを持っており、単なる就職支援にとどまらない、求職者の人生に伴走する姿勢を貫く仕事を心がけている点も弊社の強みとして挙げさせていただきたいですね。
「若者がウズウズと働ける世の中をつくる」ためにできること
ーー最後に今後の展望を詳しく教えてください。
岡本啓毅:
弊社は2024年に法人を2社立ち上げており、2025年にも新たに2つの法人を設立する予定です。
1つは、就労サポートを行う会社です。就業中に適応障害やうつ病を発症した方からも多く相談を受け、支援を行っています。しかし、健康回復前に無理をしてしまうと症状が悪化するケースもあるのです。そこで、資格取得や生活リズムの改善を支援し、就職につなげる「就労移行支援施設」を設立しようと考えています。
もう1つは学校法人です。若者が在学中にキャリア形成や仕事選びの知識を身につければ、就職ミスマッチを減らせると考えています。これまで、いくつかのIT専門学校での授業を担当してきましたが、一講師では教育全体を変えるには限定的な活動にとどまります。そこで、自らが理想とする学校の運営を目指しています。
将来的には「UZUZモデル」として、株式会社UZUZホールディングス、学校法人、奨学金制度の3つを循環させる仕組みを構築したいと考えています。具体的には、各株式会社で得た売上を学校法人に寄付し、それを原資として学生に奨学金を提供。さらに、育成した人材の就職サポートをしたり、UZUZグループで活躍してもらうことで、若者の未来を支援する持続可能なモデルを実現したいと考えています。
編集後記
若者が「ウズウズ働ける世の中」をつくりたいという岡本氏の熱意は、インタビュー中も一貫していた。求職者が抱える課題に真正面から向き合い、次々にアイデアを具体的な支援、そして、ビジネスにしていく姿はまさに起業家の理想像である。ミスマッチをなくし、入社後のキャリア支援まで伴走する姿勢は、未来の働き手を育て支え続けることで、求職者だけでなく日本の労働市場、ひいては社会全体を活性化させている。企業経営の枠を超えた価値観の提供だといえる。

岡本啓毅/1986年生まれ。北海道出身。米国アラバマ州立大学ハンツビル校を卒業後、ベンチャー企業に入社。IT業界の営業として1年勤務後、起業のため退職。若者がウズウズ働ける世の中をつくるべく、2012年UZUZを設立する。就職の悩みを解決できるYouTube「ひろさんチャンネル」を立ち上げ、現在登録数は約7万人。2025年に株式会社UZUZホールディングスを立ち上げ代表取締役社長に就任。