現代の企業には自社の商品やサービスの価値を伝えるだけでなく、企業そのものの魅力を、社内外に発信してゆくブランディングも求められている。
そんな中、コーポレートブランディング、インナーブランディング、採用ブランディング、サステナビリティブランディングなど、幅広い領域で企業を支援するブランドコンサルティング企業が株式会社揚羽だ。
代表取締役社長の湊剛宏氏から、学生時代の夢を追い続けた起業の経緯や、日本の大手企業を元気にしたいというビジョンをうかがった。
ブランディングの重要性と効果
ーー貴社の事業内容を教えてください。
湊剛宏:
弊社は、日本の大手企業を中心にコーポレートブランディング全般を支援しているブランドコンサルティング企業です。コーポレートブランディングに関わる課題を解決するための、企画立案から制作、実行までを一気通貫で担っています。
コーポレートブランディングというのは、クライアント企業そのものや商品やサービスを、取引先や株主に対して効果的に伝えるために必要なことです。また、その企業で働いている従業員に対して、社内の活性化を目的としたインナーブランディングを行うこともコーポレートブランディングの重要な要素のひとつです。
ーーインナーブランディングが必要とされる背景を教えてください。
湊剛宏:
現代の日本の大手企業で働くサラリーマンのモチベーションは非常に低いと感じています。社内の風通しも悪く、やりがいを感じにくい環境です。その結果、企業の存在意義が見えにくく、社会貢献への意識が薄れている社員が多いと感じます。
このような状況を打破し、「仕事に意欲を持って働く従業員を増やしたい」「社内のエンゲージメントを高めたい」という大手クライアントのニーズは非常に高いと実感しています。社内の空気が変わり、従業員のモチベーションが上がれば、自ずと企業の業績も伸びるでしょう。弊社は、活気のある企業を増やすことに貢献し、日本経済の活性化にもつなげたいと強く思っています。
ーーインナーブランディングがもたらした変化や効果はありましたか。
湊剛宏:
ある大手メーカーから、「新商品を生み出すにあたって、イノベーションを起こせる人材を育成したい」という依頼がありました。その際に、弊社から「ファーストペンギンになろう」という社内キャンペーンを提案しました。このキャンペーンは、結果は問わずイノベーティブなチャレンジをした人を評価する取り組みで、3年間続けた結果、イノベーションを起こした従業員がなんと全体の70%にも及びました。地道な活動でしたが、「このような活動を積み重ねて行けば必ず会社は変わるのだ」と確信できた非常に印象深い出来事でした。
ドキュメンタリー映像に憧れて起業
ーー起業に至るまでの背景や動機について教えてください。
湊剛宏:
学生の頃からドキュメンタリー映像を作りたいという夢を持っていました。特にBBCがつくるドキュメンタリー映像に感銘を受け、テレビ業界を志して就職活動をしました。「経験を積んでからBBCに行こう」と思っていたのですが、縁あってリクルートに勤めていた先輩から声をかけられ、仕事を熱く語る人たちに出会いました。そこで、「なんだか面白そうだな」と興味をもち、同社に入社し、営業職としてリクルーティング領域の経験と知見を得ました。
30歳になりドキュメンタリー映像をつくる小さな制作会社に入社しました。硬派なドキュメンタリー映像を作っている会社で、少しずつですが、「自分の志向に近い分野に近付いたな」と感じることができるようになっていました。
2社で学んだことで、それぞれの分野の知見を掛け合わせて、2001年に映像制作プロダクションとして立ち上げたのが、株式会社揚羽です。
ーーどのように事業を軌道に乗せたのでしょうか。
湊剛宏:
採用映像は、企業のドキュメンタリー映像に似ていると思っています。企業の歴史を深く知り、企業が目指すものを描き出すことで、人の心に残る映像をつくるのです。この手法は多くのクライアントが求めるところと合致したようで、現在も依頼が絶えません。
ドキュメンタリー映像づくりのノウハウを持ち、なおかつ人事コンサルティングなどのビジネスから培った経験と知見を活かせることが大きな強みであると認識しています。
社長が描くビジョン、成長戦略と理想的なチームプレイヤー像
ーーどのような人と一緒に仕事がしたいですか?
湊剛宏:
言われたことだけを真面目にコツコツやる人よりも、勝つために常に工夫を続けられる人です。クライアントとともに問題を解決し、売り上げを上げるための具体的なアクションを自分で考えて実行できる人材と一緒に働きたいですね。
ーー今後の展望について聞かせてください。
湊剛宏:
「コーポレートブランディングといえば揚羽」と思ってもらえる会社になっていきたいと思っています。そのために、まだまだ会社の規模を拡大する必要があり、まずは、営業職として前線に立ち続ける従業員を増やしていきたいですね。
弊社の営業職は、クライアントである大手企業の人事担当者や経営企画の方とともに仕事を行うため、意識するしないにかかわらず「自分の頭で考える力」が鍛えられます。企業の未来を担うため責任は重いですが、自分の頭で考え創造し行動することで得られるスキルは何ものにも代えがたく、従業員は非常にやりがいを感じてくれていると思っています。
編集後記
大手クライアントの抱える課題を明確に理解し、寄り添いながら解決してゆくことで成長してきた株式会社揚羽。特に最前線の営業部隊は、大きなプレッシャーと創造力が要求される大手企業の案件を通じ、「自分の頭で考える」ことでその能力が鍛え上げられ、大きな成長を遂げている。その社員について誇らしげに語る社長の優しい目が印象的だった。こうした一人ひとりの活気が日本経済の未来をつくっていくだろう。
湊剛宏/早稲田大学卒業。1992年、株式会社リクルートに入社。新卒採用、中途採用、教育研修の営業を7年間経験。1999年、テレビドキュメンタリー制作会社に転職。AD、ディレクター、プロデューサーを経て、2001年に揚羽プロダクション(現株式会社揚羽)設立。