※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

国内最大級の時計専門店であるBEST ISHIDAグループ。北海道から福岡まで、国内最大級のブランド数を取り扱う11店舗を展開している。2024年4月には、東京麻布台ヒルズにスイスのラグジュアリーブティック「TimeVallée Azabudai Hils」を日本で初めて出店した。

「TimeVallée」を設立したリシュモン・グループとパートナーシップを組み、新たな形態で展開している。代表取締役社長の石田充孝氏から、大切にしている思いやこだわり、今後の事業展望についてうかがった。

「父と兄を支えたい」その気持ちから経験してきたこと、大切にしている思い

ーー家業を継ぐにあたって、どのような経緯がありましたか。

石田社長:
ベスト販売は父が創業した会社ですが、兄もいたので、もともと会社を継ぐ気持ちはありませんでした。就職活動では、「父と兄の経営する会社をサポートしたい」という思いで、コンサルタント業を志望していました。そして、「まずは現場を知った上でコンサルタントを目指そう」と考え、現場主義の商社に入社したのです。

入社後は、リスク管理を行う部署に配属され、途中からは子会社や関連会社の管理に従事しました。結果的には父や兄を助けるような業務を行っていましたね。

その後、CFOとしてDole Asia Holdings Pte.Ltd(Doleアジアホールディングス)に出向しましたが、その後父が亡くなり、兄も病気だったので、結果的に私が会社を継ぐことになったのです。商社での29年の経験があったからこそ、会社を引き継ぐ能力を備えられたと思っており、感謝しています。

ーー大手商社時代から現在に至るまで、共通して大切にしていることはありますか。

石田社長:
「感動と笑いと夢をもつ」ことです。商社時代から言い続けているのですが、まずは自分たちが夢を持たないとお客様に「感動」と「笑い」と「夢」を届けることはできません。ほかには、「今を生きる」ことですね。過去を振り返って後悔したり、未来を考えて心配するのではなく、今を一生懸命生きると前に進んでいけます。だからこそ、"今を生きる"ことを大切にしています。

「チェンジ&チャレンジ」ーー社長のモットーが与えた変化

ーー社長就任後に注力して取り組んだことは何ですか。

石田社長:
会社に入った時から「チェンジ&チャレンジ」と従業員には伝えてきました。その中でまず取り組んだことは「ブランドをしっかりと語れる人材づくり」でした。私は、「ブランドというものは、過去があるからこそ今がある。だからこそ、ヴィンテージ販売も大事であり、今の商品の販売も大切だ」と思っています。

弊社は、時計業界でも珍しく、ブランドの正規販売とヴィンテージ販売の両方をおこなっています。両部門には厚い壁があったので、その点を変えたいと思い、初年度の人事で40〜50名ほどをシャッフルしました。

ーー実際に取り組んでみて、変化はありましたか。

石田社長:
スタッフのスキルが大きく向上しました。正規販売のメンバーは販売に対するスキルがあり、ヴィンテージ商品の販売担当メンバーは過去の時計について知識があるので、お客様と深い話ができます。それぞれが身につけたノウハウを共有することで、お客様に喜びや感動を提供でき、顧客満足度の向上にもつながりました。

日本初の形態にもチャレンジ!新しいイノベーションとしての新店舗

ーー店舗へのこだわりや、今年新しく出店した店舗の特徴を教えてください。

石田社長:
お客様が「この店で買いたい」と思う店舗空間にしたいと思っています。各ブランドの色、良さを感じられるような空間づくりを目指しています。新宿店や表参道店、札幌店は時計のマルチブランドを扱っている標準的な店舗です。「ISHIDA」という看板があり、その中に複数のブランドのエリアがあるイメージですね。

それに対し、新店舗の「TimeVallée Azabudai Hills」では、リシュモン・グループとパートナーシップを結び、世界的な高級ブランドのアイテムを一挙に取り扱っています。「ISHIDA」の経験とノウハウをかけ合わせて新たな角度からラグジュアリーウォッチの魅力を伝えるイノベーションを実現しました。

お客様に「感動」を与えるためには「時計」にこだわらない

ーー新規顧客獲得のためにどのような取り組みをしていますか。

石田社長:
「違う領域の顧客を獲得しよう」という発想で動いています。たとえば、新宿にあるヴィンテージ販売店のメイン顧客は時計マニアの男性です。しかし、それでは買い取りや販売で扱う商品も、男性向けに偏ってしまうため、女性をターゲットにした店舗を大阪に出店するなど、顧客の幅を広げる取り組みを行っています。

このように、今までタッチしていなかった領域に投資をして、新たな顧客を獲得することで、これまでの顧客に対しても還元できるように考えています。

ーー貴社のHPはオウンドメディア(自社媒体)も充実していますね。

石田社長:
たとえば、『休日ムーブメント』では、「時計を取り入れた新しいライフスタイルを想像して楽しんでもらいたい」という気持ちで行っています。

TOKYO FMで放送している「Tick Tock Talk♪(チックタックトーク)」は深夜の時間帯におこない、時計好きの人をターゲットにして、本当に聴きたくて聴いてくれる濃いお客様向けに発信しています。YouTubeの「BEST TIME BEST LIFE」では、さまざまなゲストと「時」について語るビジネストークを展開しています。

幅広い年代の人に時計を好きになってもらうために、コンテンツを充実させています。また、時計好きは物へのこだわりがある方が多いので、「いいモノ Gift selection」では、風鈴、カミソリ、爪切りなど、こだわりの商品を紹介しています。時計だけではなく、さまざまな商品を取り揃えて顧客の満足度を向上させたいと考えています。

会社の強化のための「社長塾」と採用活動

ーー今後、どのように体制強化をしていく予定ですか。

石田社長:
より高いサービスレベルを求めていきたいため、研修にもっと力を入れていこうと考えています。経営全体の強化を考えると、私と同等に考えられる人材を増やすことが大切になるでしょう。具体的な取り組みとしては、幹部クラスを対象にした「社長塾」があります。

ーーどのような人材を求めていますか。

石田社長:
コミュニケーション能力が非常に大切ですね。お客様に感動して笑っていただいて、夢を与えることができれば、自然と物は売れていきますので、人との会話を楽しめる人が良いですね。実際に弊社には、コミュニケーション能力が高い人が多くいます。そのような人は、人との出会いを楽しめたり、自分から積極的に関わっていけるので、仕事を楽しんでいるように見えますね。

編集後記

石田社長は取材中、何度も「お客様に感動と笑いをお届けし続ける会社でありたい。そのためには、まず社員が感動と笑いと夢をそれぞれ持つことが大事」と語っていた。この考え方こそが顧客満足度に直結しているのだろう。

さらに、「5年後、10年後には、時計以外でも楽しいことを広げていけたら良いなと思います。たとえば、昔ながらの洋食レストランをイメージした『まちの定食屋さん』のほか、『まちの時計屋さん』などをつくってみたいですね」と、夢ある構想がとまらない。今後も石田充孝社長が率いる株式会社ベスト販売が目指す未来を追いかけていきたい。

石田充孝/BEST ISHIDAグループ、株式会社ベスト販売の創業者、石田嘉孝氏の次男として誕生。明治大学商学部を卒業後、1992年、伊藤忠商事株式会社に入社。子会社や関連会社を管理する部署に配属。豪州や英国での駐在勤務を経て、2020年にDole Asia Holdings Pte.LtdにCFOとして出向。同年に株式会社ベスト販売の3代目の代表取締役社長に就任。TimeVallée Azabudai Hilsの他、SDGsを考えたVintageの拡大、TokyoFMでのラジオ番組、YouTube番組など、時計の発信にも力を入れている。