1989年、工業用テクニカルイラスト制作会社として立ち上がった株式会社レイ・クリエーション。現在は「情報をデザインする会社」として、エネルギー、環境業界を中心に多彩なプロジェクトを展開している。代表取締役の原田徹朗氏にこれまでの歩みや今後の展開についてうかがった。
デザインに目覚め、学び、経験し、仲間とともに独立
ーーデザインの道に進んだ経緯をうかがえますか。
原田徹朗:
新聞社が運営する奨学金を利用して大学に通う中、新聞折り込みチラシのデザインに興味を持ったことがきっかけです。大学中退後はデザイン専門学校で文字組みについて学び、デザイン事務所に入社しました。配属された営業部門では実績を上げましたが、やはり「デザインをやりたい」という気持ちが強くなり、退職後に個人でデザイン会社を設立しました。
創業まもなく3人のチームで活動を始めましたが、そのうち2人が怪我をして仕事に影響を及ぼしたことなど、実にさまざまな出来事がありました。それでも苦労したと感じることはなく、常に人とのふれあいを楽しんできたと思います。
ーー事業内容を教えてください。
原田徹朗:
医療、工業、エネルギー、教育の4つの領域で、デザインコンテンツを制作しています。ファッションや不動産領域では参入している同業者が多いため勝機がないと考え、競合が少ない工業用コンテンツに注力してきました。結果的に、全領域が事業として成長したので、独自性のあるデザイン会社として続いていると感じます。
ーー独自の強みについて教えてください。
原田徹朗:
同業者のほとんどは、紙媒体、Web、展示会や店舗など、特定の領域がありますが、弊社には特定のメディアに特化していません。そのため、各領域の課題を解決するにあたっては、SNSから展示会まで、メディアの境界を越えてさまざまな手段から選べます。
工業系に特化しつつも、特有のプラットフォームを持たないことが一番の強みだと言えるでしょう。また、代理店などを通さずお客様とダイレクトにつながる「完全独立系デザイン会社」であることも特徴です。
ドローン映像から研究者支援まで――「技術×デザイン」の可能性を発信
ーー動画コンテンツも制作されていますね。
原田徹朗:
4K360度カメラをドローンに乗せて撮影することにより、迫力のある映像を提供する「プロジェクト360」を進めています。マイクロドローンの360°など、さまざまな360°カメラを駆使して、観光やビジネスに利用できる360°動画を作成しています。
また、「誰もやっていないことに挑戦したい」という気持ちから、映像だけで実現する展示会パッケージを企画。プロジェクターなどの機材をワンパッケージにし、簡単に運搬・設営できる形を開発。海外の展示会にも気軽に参加でき、ボタンを押すだけで来場者にPRできるコンテンツを用意すれば、ひとりのスタッフによるワンオペでも豊かな展示会となり、人件費などコスト削減できるメリットにもつながります。
ーー教育機関との連携も興味深いですね。
原田徹朗:
大学で講義を開くようになり、「研究者同士の交流が少ないのでは」と感じていました。そこで、研究者へのインタビューや各種記録映像、プロフィールを載せたポータルサイトを立ち上げたところ、とても評判が良かったのです。有名な先生と若手研究者の間には遠慮が生まれるものですから、研究者同士のアイスブレイクに役立っていると思います。
新たなコンテンツとともに信念を持って目指す未来
ーー今後の展望を教えてください。
原田徹朗:
デジタルテクノロジーが進化しているものの、コンテンツはあまり充実していません。「見てもらいたい部分を見せられない」というのは開発系企業が抱える悩みです。リアルを再現した3D空間をコンテンツ化し、ビジネスでの活用を目指しています。
たとえば製造業の場合、メタバース(3次元仮想空間)で工場見学できるようにすれば、人間が入れない場所や金型内の化学反応まで紹介できます。学生・企業向けのCG常設展や説明会も企画中です。
「デザイン業はコンサルタント業に似ている」とつくづく感じ、弊社ではデザインの枠を越えた結果をお客様に提供することを心がけています。難しいことを難しく伝えるデザイン会社ではなく、「先進的な総合制作プロダクション」を社員みんなで目指していきたいと思います。
編集後記
起業のきっかけについて「デザインが好きなだけ」と語った原田社長。純粋な視点があるからこそ、企業や研究者の隠れた課題を見つけ出せるのだろう。人々の生活を豊かにするために進化してきたデザインは、テクノロジーを味方につけたことでより未来に近づいているのだと感じた。
原田徹朗/1958年山口県出身。大学中退後、専門学校を卒業し、デザイン会社に8年間勤務。1989年、株式会社レイ・クリエーション創業。2008年、大阪ものづくり研究会を発足(異業種5社による3Sの研究会)。2010年、株式会社大阪ケイオス設立、代表取締役副社長に就任。2014年、工場の端材から新たなプロダクトをつくり出す「端材アップサイクル講座」を開設。