※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

2023年1月に設立されたREALITY XR cloud株式会社は、法人向けのメタバース構築プラットフォーム「REALITY XR cloud」を提供している企業だ。近年注目を集めるメタバース空間は、展示会などのイベント開催やバーチャル支店の開設、プロモーション活用などで企業から熱い視線を浴びるビジネスソリューションとなっている。

国内でも数少ない、BtoB事業としてメタバースに取り組む同社の代表取締役社長、春山一也氏に、経営者としての思いや展望をうかがった。

人見知りだった幼少期からは想像できない「経営者」としての今

ーーREALITY XR cloudの社長に就任した経緯を聞かせてください。

春山一也:
REALITY XR cloud株式会社は、グリー株式会社の100%子会社です。大学卒業後、ゲーム会社に就職したのち、グリー株式会社に転職しました。内製ゲームのプランナーや開発運営プロデューサーの経験を経て、DX支援などのBtoB事業を担う機会があり、さらに事業を成長させていく中でメタバースの取り組みと巡り合い、REALITY XR cloud社長就任のお話をいただきました。

ーー幼少期から経営者になることは夢だったのでしょうか?

春山一也:
そんなことは全くなく、むしろ大学に入る前までは極度の人見知りでした。自分自身が一企業の代表になるなんて想像もしていませんでした。

ただ、学生時代から図工や美術などで行ったものづくりが好きで、大学では少しずつ「自分がつくったものを広めたい」と思うようになり、ゲーム業界に足を踏み入れました。

ーーなぜ、経営者としての道を歩むことになったのでしょうか?

春山一也:
素晴らしい事業とチャンスに恵まれたことが大きな理由です。グリーに入社してさまざまな仕事を任せていただく中で、ビジネスを拡大させるという面白さを感じるようになっていました。グリーは、「仕事をやりたい」と伝えれば、挑戦させてくれる会社です。自分がつくったものをたくさん世の中に出していきたいと思い、仕事をたくさんこなしました。

上司や周囲に「仕事をもっとさせてほしい」「その仕事、全部自分に任せてください」と言い続けていた結果、自然と人前に立ち、人を取りまとめる立場になる機会が増えました。少しずつ「事業をもっと生み出してみたい」「マーケットをもっと大きくしたい」という思いが芽生え、今に至ります。

1,500万DL突破のスマートフォン向けメタバース「REALITY」を活用したBtoB事業

ーー貴社の事業について聞かせてください。

春山一也:
弊社はBtoBで企業や行政向けに、メタバースを中心としたプロジェクトを提案・実行する会社です。メタバース空間として主に活用しているのが、弊社が提供しているメタバースイベントプラットフォーム「REALITY Worlds」です。

この「REALITY Worlds」を機能提供するアプリ「REALITY」は、2023年11月に、全世界で1,500万ダウンロードを突破しました。国内のみならず世界でも、ここまでのユーザー数を誇るメタバース空間はなかなかありません。

この圧倒的なユーザー数を抱えるプラットフォームを活用できることが、BtoB事業を展開するうえで、大きな強みとなっています。また、弊社の組織そのものがBtoC事業で経験を積んできたクリエイターやプロデューサー集団なので、常にユーザーのことを考えてゴールに向かって突き進む力があります。これは他社には負けない魅力ですね。

ーーどのような活用事例があるのでしょうか。

春山一也:
直近では、2024年3月に「バーチャル大阪駅 3.0」をオープンしました。JR西日本グループと取り組んだこのメタバース事業では、2024年5月末時点で、延べ来場者数1,500万超のユーザーが来場したという実績も叩き出しました。ほかにも大企業を中心に、続々とメタバース空間の活用が始まっています。

2023年には、弊社と三井不動産株式会社、株式会社東京ドーム、株式会社ストリームメディアコーポレーションとの連携で「REALITY」のメタバース空間のひとつである「東京ドームワールド」でイベントを開催しました。KPOPアーティストaespa(エスパ)初の東京ドーム来日公演と連動させたもので、5週間で220万の方がメタバース空間を訪れました。

メタバース空間活用の先に見据える未来をハッピーにしていきたい

ーー今後の事業展望についてお聞かせください。

春山一也:
メタバースはこれから大きく成長する領域です。ユーザー数の伸びだけを見ても、世界的にメタバース業界が伸びることは間違いありません。これを後押しするためにも私たちがするべきことは、メタバースによってできるさまざまなことを実行から効果の証明まできちんとしていくことです。

「メタバースに投資することでどのくらい効果があるのか」「メタバースを使って何ができるのか」という懸念を抱かれている企業は多いと思います。だからこそ、デジタル戦略の中でメタバース事業を活用するイメージや実績をもっと伝える必要があります。

BtoC以外できちんとメタバース事業を成長させている企業は、弊社を含めてまだまだ数が少ないことが現状です。BtoBで利益を上げるための戦略やノウハウを有する弊社の知見をもっと活かしていきたいですね。

「REALITY」はプロダクトとして大きく成長しています。メタバース事業として売り上げや利益を出し、成長するために欠かせないプラットフォームがここにあるのです。だからこそ、企業の方がメタバースを活用することによって、価値やメリットを感じていただき、メタバースに対するイメージをポジティブに変えていくつもりです。

メタバースを使ってみんながハッピーになれる未来と、バーチャル化することによって企業さまの事業が成長できる未来を描くことが、弊社の使命だと思っています。

編集後記

ビジネス活用の可能性が叫ばれる中、多くの企業にとっては未知数が多いメタバース空間。開発や運営を手がけるプレイヤーとしてのキャリアを積んでREALITY XR cloudを率いる春山社長は、私たちがまだ経験したことのないビジネスの在り方を見せてくれるかもしれない。メタバース空間がどんな広がりを見せるのか、期待を持って注目していきたい。

春山一也/GREE内製ゲームの開発運営プロデューサーを経て、横断的に10タイトル200名規模のゲーム運営事業部部⻑として全社利益に貢献。その後ウェブ・アプリ・エンタメのB2B2C事業部門を立ち上げたのち、法人向け事業部責任者としてメタバース領域を推進。2023年、REALITY XR cloud株式会社の代表取締役社長に就任。