パンやケーキ、炊飯米などの製造販売を行う株式会社サンフレッセ。BtoBの取引が中心だが、メーカーとしての事業だけではなく70年以上のノウハウをもとにセールス・マーケティングの分野でも新たな仕組みをつくるなど、常に新たなチャレンジを続けている。コロナ禍を乗り切り、売上も好調な株式会社サンフレッセの代表取締役社長、富澤愼太郎氏に今回はお話をうかがった。
営業や財務、製造の仕事を通した幅広い学びが社長業の「糧」となる
ーー社長に就任する前に、他社で7年修業していますが、そのときのお話をうかがえますか。
富澤愼太郎:
弊社は祖父が立ち上げ、私は3代目です。2代目である父からは「別の企業で修業してきなさい」と言われていたので、新卒でサンフレッセに入社することは考えていませんでした。就職した会社では財務や営業の仕事を担当し、5年間修業をするという条件でしたが、仕事が本当に楽しく、そして、素晴らしい上司に恵まれたこともあり、私からお願いして在籍を2年間延長させてもらいました。
本当はもう1年長く営業の仕事をしたかったのですが、先代に相談したところ、「そろそろ戻ってほしい」と言われたため、家業に入ることになりました。
サンフレッセに入社してからは製造の研修を半年ほど受けました。研修自体は大変でしたが、モノをつくる大変さを学べた貴重な経験でした。
ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。
富澤愼太郎:
弊社は、創業して73年目になりますが、当初は学校給食のパンを製造するところからスタートし、その後、ケーキと炊飯米も製造するようになりました。今はこの3つの商品が柱となっています。
コロナ禍で気づいたBtoCの大切さ。グローバルな視野でお客さまに「安心と喜び」を届け続けたい
ーー社長に就任してから、一番大変だったことは何ですか?
富澤愼太郎:
私は2019年の6月末に社長になり、そのすぐ後に新型コロナウイルスが感染拡大し、本当に大変でした。給食はコロナ禍でも継続していただき、給食事業は比較的安定しておりましたが、外食関係やホテルなどのお客様向けの製品出荷は激減しました。
社員に休んでもらうなど、いろいろな対策を検討した中で、人員を削減する選択肢もありましたが、弊社はその選択はしないと決めました。事業は厳しい状況ではあったのですが、助成金にも助けられ、何とかしのぐことができました。
ーーコロナ禍を乗り切った貴社の強みは何でしょうか?
富澤愼太郎:
私たちの強みは、パン・ケーキ・炊飯米・給食という複数の事業ポートフォリオをもっている点です。そして各事業ともに、競合の大手企業に勝つために、常にお客様にお喜び頂ける新製品開発に全力でチャレンジし、そして、モノづくりに全力で取り組み、競合に負けないハイクオリティな製品をお客様にお届けできる点も強みです。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
富澤愼太郎:
これまではBtoBの仕事が多かったのですが、コロナ禍での経験を踏まえ、もっと自分たちのマーケティング力を高めて、BtoC寄りの事業展開も進めていきたいと考えております。現在、冷凍ケーキをスーパーの冷食売り場で販売していただくなど、少しずつですが、事業を前に進めている最中です。
また、今までは国内の事業だけでしたが、海外でのビジネス展開も検討しています。信頼できる従業員のおかげで質のいい商品を提供できており、ものづくりにはかなり自信を持っています。70年間運営してきたノウハウや知見をベースにして、私たちがプラットフォーマーになるような仕組みづくりもしていきたいと思っています。
2024年現在、73期目を迎えましたが、前期(72期)は売上が100億円を超えました。コロナ禍や物価高騰なども乗り越えて利益が出せるようになってきた中で、新たな1年の良いスタートを切れたのではないかと思っています。
編集後記
後継者として新卒で入社せず、他社でさまざまな修業を積んで3代目となった富澤愼太郎社長。社長就任後のコロナ禍で従業員をリストラしない経営を続け、懸命にサポートした結果、2023年度には過去最高の売上を叩き出した。従業員やお客さまを常に大切にし、事業活動で何を貢献できるかを考える富澤社長が描く未来に今後も注目だ。
富澤愼太郎/1976年生まれ。立教大学経済学部卒業。一部上場のメーカーに入社し、7年間の修業期間を経て、2005年に株式会社サンフレッセに入社。2019年に代表取締役社長に就任。