1934年に創業し、学校や企業のユニフォームの製造・販売を中心に、スーツ事業やリユース事業を展開するキンパラ株式会社。なかでも、2023年に立ち上げた学生服のリユース事業は、学生服専門店を運営する企業の取り組みとして全国的に珍しく、注目を集めている。
同社の3代目社長である金原周平氏は、古い体質の会社を変えるべく、人事評価制度や組織体制の見直しを行ってきた。金原社長に、新たに展開した事業の内容や社内改革の取り組み、今後の展望についてインタビューを行った。
創業90年の歴史を守りつつ時代のニーズを捉えたビジネスを展開
ーー貴社の事業内容を教えてください。
金原周平:
弊社は1934年に創業し、縫製工場としてスタートしました。現在は、学生服や企業ユニフォームの製造・販売を中心に、スーツ事業やリユース事業を展開しています。静岡県西部を中心に、学生服は約130種類、企業ユニフォームは約2000種類の商品を製造・販売してきました。一般的な学生服(主にセーラー服)のほか、安全性能を高めたタクシードライバー用ユニフォームや、弥生人をイメージした貫頭衣を手がけたことがあります。
ーースーツ事業はいつ頃から始めましたか?
金原周平:
20年ほど前から「ゴールドワン」というオリジナルブランドのスーツショップを運営していました。しかし、抜本的な改革を決意して、2022年に「ゴールドワン」の店舗を閉店。株式会社オンワードパーソナルスタイルとパートナー契約を結び、オーダースーツブランド「KASHIYAMA」の店舗を新たにオープンしました。
学生服のリユースで地域と社会に貢献する
ーー現在、貴社の制服リユース事業が注目を集めていますね。
金原周平:
以前から、学生服の購入代金についてお客様から相談を受けることがあり、経済的に困難なご家庭に向けて何かできることはないかと考えるようになりました。アパレル業界におけるリユース市場の活発化を背景に、弊社の強みである縫製技術を生かして、使用済み学生服の回収と必要な方への提供を行う事業を開始しました。一方で、従来の新品販売事業との兼ね合いもあり、社内からは反対意見もありました。
しかし、制服のリユースはSDGsの観点からも社会的意義があると確信し、2023年に「リパラーレ」というリユースブランドを立ち上げました。現在、買い取らせていただいた学生服は、丁寧に検品・クリーニングを行い、「公式中古品」として販売することで、従来の新品販売事業と差別化を図っています。
必要に応じて自社工場で修理できるところが弊社の強みだと感じています。使い終わった制服を持ってきて「良い取り組みですね」とお客様に共感してもらえることが嬉しいですね。
新たな評価制度やジョブローテーションの導入で活気ある職場へ
ーー社長が感じていた組織の課題と、それを改善するための社内改革について教えてください。
金原周平:
専務を務めていた頃から、会社全体に活気がなく、もっと組織を活性化したいと思っていました。そこで、5年前に新たな人事評価制度を導入しました。四半期に1度のペースで目標設定と評価を行い、その都度評価者との面談でフィードバックを行っています。
この評価制度を取り入れるまでは、課題を感じても伝える機会がありませんでしたが、現在は定期的にコミュニケーションをとれていることにメリットを感じています。また、評価項目の中に「改善提案目標」を入れることで従業員の意見も吸い上げられるようになりました。
また、従来は社内で異動がなく、企業ユニフォームの部署に配属されたらその部署で技術を磨き続けるという働き方でしたが、今後はジョブローテーションを通して幅広い経験を積めるような働き方に変えて、組織全体の活性化につなげていきたいと考えています。
見過ごされてきた課題を見つけながらさらなる成長を目指す
ーー社長が大切にしている考えについて教えてください。
金原周平:
陶芸家・河井寛次郎氏の「何もない 見ればある」という言葉を大切にしています。大学時代にこの言葉を教わったときは意味がわかっていなかったのですが、社会に出てから自分なりの解釈ができるようになりました。
一見課題がないように見えても、視点を変えれば改善点が見つかるということです。この考え方を参考に、これまで見過ごされてきた課題を見つけ、改革を進めてきました。
ーー今後の展望をお聞かせください。
金原周平:
今後は、組織改編やキャリア採用で整った社内の体制を活かし、企業ユニフォーム事業やオーダースーツ事業のさらなる拡大を目指します。さらに、スクールショップとスーツ事業「KASHIYAMA」やリユース事業を有機的に連携させることで、弊社独自の強みを活かした新たな事業を創出していきたいと考えています。
また、地域社会に貢献できる企業として、積極的に社会貢献活動に取り組んでいくつもりです。
編集後記
お客様や従業員と真摯に向き合いながら、新しい事業や組織改革を進める金原社長の誠実さを感じることができた。これまでユニフォームによって多くのお客様を笑顔にしてきたキンパラ株式会社は、今後も地域で信頼される企業であり続けるだろう。
金原周平/1979年静岡県生まれ。2002年に慶應義塾大学商学部卒業後、3年間の会社勤務を経てキンパラ株式会社に入社。2016年に専務取締役に就任し、人事評価制度の刷新による組織改革と既存事業の収益向上を推進。2020年、代表取締役社長に就任。既存事業の拡大に加え、スーツ事業の革新や、EC事業、リユース事業などにも新たに取り組む。