株式会社オフィスバスターズは、オフィスで使用される什器(じゅうき)の買い取り・販売を行っている会社だ。オフィス什器のレンタルサブスクリプションサービスも提供し、ベンチャーから大手企業まで幅広く利用されている。
法人向けのリユース事業を始めたきっかけや、循環型社会がもたらすメリットなどについて、代表取締役会長の天野太郎氏に話をうかがった。
オフィス什器の中古需要に着目。創業時の社会からの逆風
ーー総合商社に入社した理由や、リユース事業を始めたきっかけを教えてください。
天野太郎:
学生のときに雑誌出版で起業し、就職の際も将来の独立を視野に活動していました。そのため、ビジネスの知識を網羅的に得られる職場で働きたいと思い、総合商社に入社。事務機器の輸出に携わりました。
あるとき、海外のお客様から「新しくなくていい。中古のものはないか」という話を受けました。それがヒントとなり、中古品を海外に輸出する会社を立ち上げるため、独立を決め、その後、国内でも中古品の需要があると知り、法人向けの什器のリユース事業を始めるに至ったのです。
ーー国内でリユース業が確立されていない中、苦労も多かったのではないですか。
天野太郎:
環境保護の基本は、廃棄物を減らす「リデュース」、繰り返し使う「リユース」、そして再利用する「リサイクル」の3Rです。しかし、当時はこの考えが浸透しておらず、中古品販売業者は廃棄物の中から拾ったものを売っていると思われていました。
また、メーカーからは自分たちの商品が売れなくなると非難を受け、買い取りを申し出ても廃棄するより手間がかかると面倒がられてしまい、仕入れにも苦戦しました。
起死回生となった3つの大きな転換点
ーー事業が軌道に乗ったきっかけは何でしたか。
天野太郎:
これまで大きな転機が3回ありました。その1つ目が、世界的な金融危機を引き起こしたリーマン・ショックです。企業がコスト削減を迫られる中、最初に中古品が注目されるようになったきっかけです。
2つ目は、2011年に起きた東日本大震災です。地震でたくさんの物が壊されたことで、物を大切にする意識が高まりました。
3つ目に、世界的なパンデミックとなった新型コロナウイルスの発生です。誰も予想していなかった事態が起き、地球温暖化が現実味を帯びてきたことで、環境を配慮する動きが強まったのです。
こうした転機を経て、廃棄物の削減に取り組む企業が増え、今ある物を使い回すという機運が高まりました。ようやく時代が追いつき、リユース事業が日の目を浴びるときが来たのだと感じました。
ーー創業当初はどういった取引先が多かったのでしょうか。
天野太郎:
創業したてのベンチャー企業が多かったのですが、このとき利用いただいた企業の多くは、倒産せずに経営を続けています。なぜならリユース品を活用して初期費用を抑えた分、広告宣伝費に回すなど、創業当初から適切な資金の使い方ができていたからです。
削れる部分は削り、必要なところに資金を充てるのが、ビジネスで成功する秘訣と言えるでしょう。
後押しとなった環境意識の高まりや働き方改革
ーー貴社のサービスは顧客からどのように評価されているのですか。
天野太郎:
廃棄コストの削減だけでなく、省エネ目標の達成という付加価値も得られると好評です。大学と連携し、CO2削減量を可視化するなど、よりインパクトを大きくできるよう取り組んでおり、こうした良い口コミが広がり、多くのお問い合わせをいただいています。
また、持続可能な社会を目指すSDGsの意識の向上により、中堅企業や大手企業からも声がかかるようになりました。特に昨今では什器のサブスクリプションサービスの需要が伸びています。
多くの企業では働き方改革の一環として、働く場所の改善が進められています。そのため機能性が高く、デザイン性に優れた商品を試したいというニーズが高まっているのです。什器のサブスクリプションサービスの活用は、先進的な企業が発端となり、徐々に地方やその他の企業へ浸透しています。
リユースを軸とした新事業で物を循環!経済や社会、環境を豊かに
ーー新規事業を始めたとお聞きしました。
天野太郎:
新たに始めたのが、レンタルスペース事業やスケルトン解体事業、アート事業です。
レンタルスペース事業では、物を置いておくスペースを提供することで、処分するか否かを検討する手間を削減できるようにしました。不要な場合は弊社で買い取りをし、廃棄せず再活用できるようにしています。
スケルトン解体事業では、建材などが再利用できる解体方法を編み出し、建物のリユースを進めており、アート事業では廃棄予定のものをアートに活用し、新たな価値を生み出す活動を行っています。
さらに今後は、公共事業や文教市場への参入を目指して、国や県の事務所、あるいは学校や塾で使わなくなった什器を買い取り、必要な場所へリユース品を提供していきたいと考えています。
ーー組織づくりにおいて意識していることを教えてください。
天野太郎:
「多様性と個性を尊重する」をスローガンに掲げ、社員の強みや個性を活かすことを意識し、部署に配属してから様子を見て、それぞれの適性に合わせて定期的に異動を行っています。
各自の意見を尊重するため、社員からの提案で新たな事業が生まれることもあり、定着率の高さにもつながっていますね。
また、弊社のような中小企業は間に入る人が少ない分、どうしても経営者の色が強く出てしまいます。そのため管理職は自分とは違うタイプの人間に任せるようにし、あえて異なる価値観を取り入れることで、意見の偏りをなくせるように心がけています。
ーー今後の展望を聞かせてください。
天野太郎:
働きやすい職場づくりや、給与のアップなど従業員の待遇改善に取り組み、リユース業界全体の底上げを図りたいと考えています。
また、リユース品の活用でコストカットした分が給与に反映され、人々が豊かになり、さらに環境への負荷も低減できる。こうした好循環を実現すべく、サーキュラー総合商社として社会に貢献していきます。
編集後記
リユースという言葉がまだ国内で浸透していなかった時代から、いち早く目を付け、今の事業を立ち上げた天野社長。こうした先見の明があったからこそ、今の成長につながっているのだと感じた。株式会社オフィスバスターズは、企業のみならず日本社会の必需品ともいえる什器を循環させ、経済を豊かにし、環境にやさしい社会をつくっていくことだろう。
天野太郎/名古屋大学経済学部卒。1993年総合商社丸紅に入社し事務機器販売を担当。ロシア、米国駐在を経て独立し、2002年株式会社アトライを創業。同社で中古事務機の輸出事業を営み、株式会社テンポスバスターズと共同出資にて株式会社オフィスバスターズを設立。2018年代表取締役会長に就任。2023年TOKYO PRO Marketへ上場。