※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

2021年度における犬・猫の殺処分数は約1万4千匹だった。
2004年度の約39万匹と比較すると、大幅に減少はしている。

しかし、いまだに1万を超える尊い命が奪われ続けている現状がある。
その殺処分問題の解決に独自の路線で取り組むのが株式会社バイオフィリアだ。

今回は代表取締役兼CEOである岩橋洸太氏に、起業のきっかけや今後の展望についての話をうかがった。

失敗を恐れず挑戦し続ける姿勢が成功の秘訣

ーー起業のきっかけを教えてください。

岩橋洸太:
学生の頃から「殺処分をなくしたい」という思いがあって、ビジネスで解決すべく、最初はブリーダーと新たにペットを家族に迎えたい方をマッチングする事業や写真共有アプリなどの複数のサービスを立ち上げましたが、先行業者がいたり、収益化が難しかったりとうまく業績が伸びませんでした。

特に、ブリーダーと飼い主のマッチング事業に関しては、ビジネスとしてやっていくには10年以上かかると思い、同時にその10年の間に殺処分がどれだけ行われるかと考えた時に、この道ではダメだと思いました。

理屈では正しくてもビジネス性と収益性が伴っていなければ、理想を実現できないということを、さまざまな失敗を通して学びました。

ただ、失敗を経験したことでうまくいかない要因が蓄積されていきました。次は「その要因をつぶしていけばうまくいくものが作れるのではないか」、ということでたどり着いたのが「ココグルメ」です。

仮説を世に出したことで新たにわかることもあったので、実際に挑戦してみることは大事だと思います。

ーー苦労したエピソードがあれば教えてください。

岩橋洸太:
当初、「品質、製造方法にこだわった手作りドックフード」という新しい商品を開発するべく、人間向けの食品工場にお願いをしようと、何十社と声をかけました。しかし、ペットフードは人間用の食べ物よりも低い衛生基準で作られているものも多く、当社のような食品品質のペットフードであっても食品工場からはイメージダウンを懸念して断られるケースがほとんどでした。見つかったとしても、我々が求める要件に合わないなどの理由で断念せざるを得ず、工場探しには大変苦労しました。

ペットフード業界で生き残るための強み

ーー貴社の強みと企業努力を教えてください。

岩橋洸太:
品質面・価格面・お客様の数・満足度全てにおいてこだわっており、実績においては他社の3倍以上の結果を出している項目もあることです。

より良い商品を、お客様がお求めやすい価格帯で提供する。そのために、製造やカスタマーサポートやマーケティングなど、すべての企業活動においてあらゆる努力をしています。

開発チームは常日頃からより良い商品を作ろうと動いています。だからこそ商品力が強みでもあります。また、カスタマーサクセスチームがお客様とコミュニケーションを密にとり、信頼関係がしっかり築けているところも競合他社にはない強みだと思います。

ーーフレッシュペットフードと既存のペットフードの違いを教えてください。

岩橋洸太:
既存のペットフードは、2つのカテゴリーが主流になっています。1つはドライフードといって、「カリカリ」と呼ばれている、乾燥した茶色いタイプです。もう1つがウェットフードと呼ばれている、缶詰やパウチに入っているものです。

既存のペットフードとフレッシュペットフードに法的な違いなどの明確な定義はありませんが、私たちが独自で考えているポイントとしては2つあります。

1つ目は人間が食べているものを原材料に使用して製造していること。2つ目は食品の栄養素をなるべく損なわないよう低温加工で製造していることです。「家庭の手作り食」を再現した商品ということで、旨みや素材本来の香りも維持できるよう、こだわっています。

最終目標は起業当初の思いを叶えること

ーー今後注力していく点について教えてください。

岩橋洸太:
1つ目は新規取引の開拓です。弊社の売上の95%がオンラインによるものなので、ウェブを利用しない方々のために、小売店舗での販売を増やしていきたいと考えています。
現在はイオングループのイオンペット様が展開しているPETEMOというペットショップなどでご購入いただけます。

2つ目は新商品・新技術開発です。R&D(Research&Developmet)として、たとえば、病気になって療法食を食べなければならない犬や猫に向けた商品の開発をして、ラインナップの拡充をしたいと思っています。

3つ目が海外展開です。日本以外の国でもペット食の安全に関して懸念される事例はたくさんあると思いますので、そのような環境に置かれた子たちに食の楽しさを味わってもらいたいという思いがあります。

また、日本のメーカーとして商品を海外に販売することにより、日本の経済力向上にも貢献したいと考えています。2、3年後には売上100億円の達成を目指しています。弊社では殺処分をなくすための支援として、これまで保護犬猫に約40万食のココグルメ、ミャオグルメを寄付してきました。能登半島の震災では、被災地のワンちゃんにココグルメレトルトを1200袋お送りするなど、事業が大きくなればその分より社会に貢献できると実感しています。

なので会社の規模を大きくして、殺処分問題を解決し、「動物の幸せから人の幸せを」という理念を実現したいと思っています。

ーー貴社が求める人物像を教えてください。

岩橋洸太:
弊社はなるべく少数精鋭でいきたいと思っています。ただ、多様な価値観や考え方は大事です。ワンちゃん、猫ちゃんがこの世の中で当たり前に幸せになるためには、動物が好きではない人にも受け入れられる世界を目指さないといけないと思っています。ですから、「動物が好き、動物を飼っている」ことは絶対条件ではありませんが、弊社の動物と人の幸せな共生社会をつくるという価値観に共感していただける方に入っていただきたいですね。

弊社では、割り当てられた仕事をこなすだけではなく、自分で課題を特定し、行動に移すことが重視されます。オーナーシップを持って主体的に働いている方が活躍しているイメージです。

従業員は皆自社のサービスが好きで、誇りを持って働いています。だからこそ「自社商品をより良くしてたくさんの人に伝えたい」という思いが生まれ、自然と自分から考えて行動するのだと思います。

編集後記

ペットフードを通して殺処分問題に取り組む岩橋CEO。動物を大切に思う気持ちは従業員のみならずお客様にも伝わっている。

「動物の幸せから人の幸せを」という理念実現のため、海外進出への準備を着々と進めている。今後どのように企業が成長していくのか、株式会社バイオフィリアから目が離せない。

岩橋洸太(いわはし・こうた)/1989年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、SMBC日興証券にて未上場企業の上場準備、支援業務(公開引受業務)に従事。退社後、2017年に株式会社バイオフィリアを、矢作裕之(取締役COO)と共同創業。愛犬の死をきっかけに2019年フレッシュペットフード「ココグルメ」を開発・提供。食領域から人と動物の幸せな共生社会を目指している。