※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

2025年に会員犬猫数40万頭を突破し、国内フレッシュペットフード市場を牽引し続ける株式会社バイオフィリア。同社は今、ドッグフード「ココグルメ」の単一事業から、猫用ブランドや海外展開、オフライン店舗の拡大という多角的な成長フェーズへと突入している。創業当初からの悲願である殺処分問題の解決、そして家畜動物のアニマルウェルフェア実現に向け、着実に歩みを進める同社。2026年4月に控える新ブランドの始動や、刷新されたビジョンに込めた思いとは何なのか。今回は代表取締役CEOである岩橋洸太氏に、第二創業期ともいえる現在の挑戦と、未来への展望を聞いた。

失敗を恐れず挑戦し続ける姿勢が成功の秘訣

ーー起業のきっかけを教えてください。

岩橋洸太:
学生の頃から「殺処分等による不幸などうぶつをなくしたい」という思いがありました。ビジネスでの解決を目指し、最初はブリーダーと新たにワンちゃん、ネコちゃんを家族に迎えたい方をマッチングする事業を立ち上げ業界の中からの変革を目指しました。しかし先行業者の存在や収益化の難しさから、うまく業績が伸びなかったのです。時間軸で見ても、ビジネスとして一定規模まで成長し、業界を変えられる準備ができるまでには10年以上かかると思いました。その10年の間に殺処分がどれだけ行われるかと考えた時に、この道では却って遠回りになってしまうと感じました。

その後も事業の方向性を模索しましたが、理屈では正しくてもビジネス性と収益性が伴っていなければ、理想を実現できないということを、さまざまな失敗を通し、多くのことを学びました。しかし失敗を重ねる中で、うまくいかない要因を特定できました。そして、「失敗の要因を一つずつ解消すれば、成功するサービスをつくれるはずだ」と考え、たどり着いたのが、獣医師監修の手づくりごはん「ココグルメ」です。自分の愛犬の死も重なり、思いと事業性の両面から「これしかない」ということで始めました。

ーー商品化に向けて、苦労したエピソードがあれば教えてください。

岩橋洸太:
「人の食品と同等レベルの品質・製造方法にこだわった手づくりごはん」という新ジャンルの確立に苦心しました。理想の品質を求め、人間用の食品工場を何十社も訪問しました。しかし、当時のペットフード業界は低い衛生基準でつくられているという食品業界からのイメージもあったのか、食品工場側から「ペット用を扱うことで、イメージダウンにつながる」と、断られるケースがほとんどでした。ようやく見つかっても、私たちが求める要件に合わないなど、工場探しは、サービスを始めるにあたって最大の難関でした。

「一本足打法」からの脱却 3つの軸で広がる事業展開

ーー直近で、注力した展開について教えてください。

岩橋洸太:
以前は「ココグルメ」という一つの事業に頼る、いわば「一本足打法」のような状態でした。しかし、直近2年で「商品」「チャネル」「国」の3軸が重なりました。これらが相乗効果を生み、事業は多角的に進化を遂げています。

まず「商品」の軸では、愛犬用の「ココグルメ」に加え、愛猫用の「ミャオグルメ」や、愛猫用ピューレおやつ「にゃっち」を立ち上げました。特に「にゃっち」はリリース直後から目覚ましい成長を遂げていて、成長市場である猫の領域でも手応えを感じています。従来のワンちゃんの主食だけでなく、ネコちゃん向けや「おやつ」というカテゴリーへ商品ラインナップが広がったことは、弊社の総合的な変化を象徴しています。

次に「チャネル」の軸です。これまではオンライン販売が中心でしたが、セールスチームを強化し、実店舗での展開を加速させています。資金調達により採用を進め、セールス部の本格的な立ち上げとチームメンバーの拡大を実施。社内一丸となって取り組んだ結果、取り扱い店舗数は2,000店舗を突破しました。「ココグルメ」は冷凍商品なので、専用設備が必要となり導入のハードルは高いものでした。しかし、これだけ短期間で拡大できたことは、組織の大きな自信につながっています。

そして3つ目が「国」の軸、つまり海外展開です。台湾や香港への進出を果たし、現地のモールや自社通販を通じ、日本の品質を海外のワンちゃん、ネコちゃんにもお届けしています。海外展開により、単なるスタートアップを超え、グローバルブランドを持つメーカーへと組織の厚みが増したと感じています。

ーー海外展開において、日本との違いや課題はありましたか。

岩橋洸太:
まず感じたのは、「ワンちゃん、ネコちゃんを愛する気持ちは万国共通である」ということです。輸出コストがかかるため価格は高くなりますが、それでも現地の方々に手に取っていただける。これは、愛犬に良いものを食べさせたいという思いが国境を越えて共通している証拠だと思います。

一方でビジネス環境は異なります。日本では自社通販サイトが主軸ですが、台湾や香港では「Shopee」や「HKTV Mall」といった巨大モールでの販売が主流で、お客様の反応もそちらの方が良い傾向にあります。また、フレッシュフード市場が未成熟な地域もあります。一から開拓していくプロセスには、特有の難しさもあります。今後は各地の環境を整備しながら広げていくことが課題であり、楽しみでもあります。

「家庭の手づくり食」を再現する2つのこだわりと新たな挑戦

ーーフレッシュペットフードと既存のペットフードの違いを教えてください。

岩橋洸太:
既存のペットフードは、主に2つのカテゴリーに分かれます。1つは、一般的に「カリカリ」と呼ばれる乾燥したドライフードです。もう1つは、缶詰やパウチに入っているウェットフードです。既存のペットフードとフレッシュペットフードに法的な違いなどの明確な定義はありませんが、私たちが独自で考えているポイントとしては2つあります。1つ目は、人間が食べているものを原材料に使用して製造している点です。2つ目は、栄養素をなるべく損なわないよう低温加工で製造している点です。「家庭の手づくり食」の再現を目指し、香りや旨みにもこだわっています。

現在は、この価値観を応用した「ココグルメ・ドライ」も展開中です。ココグルメのドライフードを出してほしいというお客さまのお声から、独自の低温製法によって、ドライタイプでありながらココグルメの品質の再現に挑戦しました。まだ認知度は高くありませんが、こうした新しい選択肢も広めていきたいですね。

ーー今後、どのような事業展開を予定されていますか。

岩橋洸太:
2026年4月から、大きく2つの動きがあります。1つは「ココグルメ」のセカンドラインとなる「ココモグ」の開始です。「ココグルメ」は品質に絶対の自信を持っていますが、一方で価格面で継続が難しいというお声もいただいていました。そこで、スーパーのお肉売り場で「国産」と「外国産」が分かれているようなイメージで、ココグルメのコンセプトや製法はそのままに、日本の食品同等レベルの品質管理ができる海外工場で製造することでコストを抑え、より多くの方に手に取っていただきやすくしたのが「ココモグ」です。より広いお客様・購買層のお役に立ちながら、ココグルメの手作りごはんの哲学を感じていただけるよう、幅広いラインナップを整えました。

もう1つは、新たなブランド「こもりね」の立ち上げです。ワンちゃんの睡眠に着目し、既存のココグルメシリーズとは違ったアプローチで、「睡眠の質から健康を支える」という発想の新ブランドです。人向けでは「ヤクルト1000」や「BAKUNE」といった睡眠テックが注目されていますが、実はワンちゃんたちは人間以上に睡眠時間が必要です。こもりねを通して「睡眠を改善していくことで、健康になれるのではないか」という新しい価値観の提供ができればと思っています。具体的には、睡眠中にゆっくりとタンパク質を吸収できる独自のスローエナジー設計や、GABAを配合したりといった機能性を持たせたドライフードからスタートします。

また、ワンちゃんの睡眠課題へのアプローチだけでなく、飼い主さまの心の負担を減らすことも目的としています。とくに共働きや一人暮らしの飼い主さまの場合、どうしてもワンちゃんを留守番させる時間が長くなってしまいます。私も一人の愛犬家として、留守番をさせる罪悪感や、外出先で愛犬の様子が心配でたまらなかった経験があります。もしワンちゃんが留守番中に穏やかに眠ってくれたら、飼い主さまも安心できると思うんです。そういった発想から、留守番中の愛犬の「心と体」の健康維持をサポートし見守ってくれる「みまもりごはん」という意味を込めて、「こもりね」と名付けました。

仕事などで忙しい飼い主さまが手に取りやすいよう、また、価格面で多くのお客様にお届けできるよう、初めはドライフードから開始しますが、今後はウェットやフレッシュなども開発していくつもりです。

ビジョンの刷新と変わらぬ「原点」への思い

ーービジョンを刷新されたとのことですが、どのような背景があったのでしょうか。

岩橋洸太:
創業時は「動物の幸せから人の幸せを」というビジョンを掲げていました。今でも気に入っている言葉ではあるのですが、事業が拡大する中で、「人の幸せのために動物を利用するのか」という誤解を招く可能性を感じるようになりました。説明すればご理解いただけますが、そもそも説明が必要なこと自体を変えていくべきだと考えたのです。

私たちが本当に目指しているのは、動物も人も、共に幸せになる世界です。そこで、社名の由来でもある「バイオフィリア」という概念に立ち返り、ビジョンの表現をより「共生」を意識したものへとアップデートさせ、「ともに、しあわせになろう。」へと変えました。この本能に気づくことで、動物も人の世界も幸せになれると信じています。

社名をあえて変えず、知名度の高い「ココグルメ」というサービス名にしなかったのも、この「バイオフィリア」という社名に込めた思いを何より大切にしているからです。ペットフードという事業領域だけでなく、殺処分問題やアニマルウェルフェアといった、より広く大きな課題に向き合うためにも、この社名と理念は不可欠でした。組織が大きくなっても、この原点の思いだけはぶらさずに持ち続けたいと考えています。

ーー組織が拡大する中で、創業時の熱量を維持するために意識していることはありますか。

岩橋洸太:
組織の拡大と熱量の維持を両立させることは、永遠のテーマです。インディーズバンドがメジャーデビューすると、昔からのファンが離れてしまう現状に似ていると思います。単に経済の論理や資本主義の波にのまれてしまえば、私たちがつくりたい「夢のブランド」は色あせてしまいます。だからこそ、私は1人で意思決定することはありません。現在は各分野に、プロフェッショナルなリーダーがそろっており、専門性の高いメンバーを巻き込んで意見を聞き入れながら一つに結集させる。初期のカルチャーを大切にしつつ、それを組織全体に広げていくバランス感覚が、熱狂的なファンを生み出し続ける鍵だと考えています。

30年かけて叶える「アニマルウェルフェア」の夢

ーー貴社が求める人物像を教えてください。

岩橋洸太:
弊社はなるべく少数精鋭でいきたいと思っています。ただ、多様な価値観や考え方は大事です。動物がこの世の中で当たり前に幸せになるためには、動物が好きではない人にも受け入れられる世界を目指さないといけないと思っています。ですから、「動物が好き、動物をと暮らしている」ことは絶対条件ではありませんが、弊社の「すべてのどうぶつのいのちの尊厳が守られる新しい歴史をつくる。」という価値観に共感していただける方に入っていただきたいですね。

弊社では、割り当てられた仕事をこなすだけではなく、自分で課題を特定し、行動に移すことが重視されます。「自分がこの事業を動かしている」という当事者意識を持って主体的に働いている方が活躍しているイメージです。メンバーは皆、自社サービスが好きで、誇りを持って働いています。だからこそ「自社商品をよりよくして、たくさんの人に伝えたい」という思いが生まれ、自然と自分から考えて行動するのだと思います。

ーー最後に、今後の展望を教えていただけますか。

岩橋洸太:
私たちが目指すのは、殺処分などの不幸な動物をなくすことです。この志は創業から現在まで、一切揺らぐことはありません。むしろ会社が成長したことでその実現に向けた手段が増えてきました。その一環として、「わににゃる」というCSR活動を行っています。保護団体様への定期的な寄付を継続し、累計額は3000万〜4000万円近くに達しています。事業拡大こそが、救える命を増やす最短ルートだと確信しています。

具体的には、当社の利益の一部を寄付、また、お客様の愛犬が亡くなったり病気で食べられなくなって手元に余ってしまった商品を寄付していただき、私たちが責任を持って保護団体へお届けするというものです。保護犬・保護猫の中には、持病があったり人への警戒心やストレスから食が細い子も多いのですが、「ココグルメなら食べてくれた」という感謝の声をいただくと、量的な面だけでなく質的な面でも貢献できていると実感します。

そして将来的には、ご家庭で暮らすワンちゃんやネコちゃん、家畜動物のアニマルウェルフェアにも取り組みたいという夢があります。アフリカのサバンナに住む動物の何百倍もの数の家畜動物が、人間の食のために命を落としています。人間がお肉を食べることは仕方のないことですが、その過程での動物の苦痛を減らしたり、なくしていきたい。その一つの解として、培養肉の研究にも挑戦したいと考えています。培養肉の普及には「コスト」「おいしさ」「健康面での安全性のイメージ払拭」という3つの壁がありますが、安全で安価でおいしく健康的な培養肉を提供できれば、犠牲になる家畜を減らせます。そのような未来の実現に向け、私たちは挑戦を続けていく考えです。

これは10年、20年、あるいは30年とかかる道のりかもしれません。しかし、非常に可能性のある領域でもありますし、何より私たちがビジョンとして掲げていることでもあります。事業の成長と社会貢献を両立させ、私たちが描く「夢の世界」を必ず現実のものにしていきたいですね。

編集後記

「ココグルメ」の成功に安住せず、猫市場への進出、海外展開、そして「睡眠」という新機軸への挑戦と、同社の進化は止まらない。しかし、岩橋氏の言葉の端々からは、創業時から変わらない、動物への深い愛と「殺処分ゼロ」への執念が強く感じられた。ビジネスとしての強さを増した同社は、その力を原動力に、理想とする共生社会の実現へと近づいている。2026年4月の新ブランド始動を含め、世界を変える同社の挑戦から目が離せない。

岩橋洸太/1989年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、SMBC日興証券株式会社にて未上場企業の上場準備、支援業務(公開引受業務)に従事。退社後、2017年、矢作裕之(取締役COO)と株式会社バイオフィリアを共同創業。愛犬の死をきっかけに2019年フレッシュペットフード「ココグルメ」を開発・提供。食領域から人と動物の幸せな共生社会を目指している。