コスメブランド「PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティーアップ)」を展開するDINETTE(ディネット)株式会社。まつ毛美容液をはじめとした同社の商品は20〜30代の女性を中心に人気を集めており、昨年は新たにフェムテック(女性の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービス)商品を発売したことでも話題を呼んだ。
そんな同社を率いるのが、学生時代に起業し、ブランドローンチから2年で年商17億円にまで会社を成長させた尾﨑美紀氏だ。メディアにも多数取り上げられ、また個人としても多くのファンを抱える同氏に、今までの道のりと今後の展望を聞いた。
自分の選んだ道を正解にするために突き進んできた
ーー起業の経緯を教えてください。
尾﨑美紀:
大学時代、とあるベンチャー企業でインターンシップをしていたときのことです。その企業で社長が、周囲のメンバーを巻き込みながら、何もない0の状態から1をつくっている姿に感銘を受けました。
当時、私はすでに大手企業から内定をもらっていましたが「私も0から1をつくるワクワクしたことに挑戦したい」と思い、その企業の内定を辞退して起業を決意しました。
最初に始めたのが、Instagramでコスメなどの美容製品を発信してマネタイズする動画メディア事業です。とにかく事業を大きくしなければいけないという気持ちで、起業1年目は毎日スマホと向き合い続けていましたね。そうしていたら、いつの間にかフォロワー数や問い合わせも増え、事業が軌道に乗ってきました。
何者でもなかった最初の時期はたくさん苦悩しましたが、「内定をもらった会社に行っておけばよかった」とだけは思いたくなかったんです。起業したことを正解にするためにはどうすれば良いのかを考え、後悔しないよう、少しずつ理想を形に変えてきました。
大人気ブランドはダイレクトなお客様の声を拾うことで生まれた
ーー会社の強みについて聞かせてください。
尾﨑美紀:
社名の「DINETTE」はフランス語で、日本語にすると「おままごと」という意味があります。
幼い頃はお母さんの真似をしておままごとのように純粋な気持ちで化粧や美容を楽しめていたのに、大人になると悩みを持ったり自分に自信が持てなくなったりする時があって美容を純粋に楽しめなくなる。そんな瞬間がある人は多いと思います。弊社では、大人になってからも純粋に自分らしく美容を楽しんでもらいたいという思いを込めてサービスを提供しています。
会社としての強みは、お客様の声をさまざまな角度からキャッチアップすることでプロダクトに反映しやすいこと。お客様からダイレクトに集めた声をもとに、商品を開発・改良しています。また、匿名で率直な意見を言いやすいInstagramを通して商品に関する意見を集められるのも、弊社の強みです。
最初にメディア事業を始めたときから、私はユーザーの方からのDMにはすぐに返していましたし、お客様とダイレクトにコミュニケーションをとることを心がけていました。ダイレクトにコミュニケーションをとるという点は、今でも変わらず徹底している部分です。
ーー商品の特徴はどういった点にありますか。
尾﨑美紀:
私が事業を始めた当時のまつ毛美容液市場は、効果は強いが色素沈着しやすく価格が高いもの、あるいは価格安さのみで勝負しているもので二極化していました。
こういった背景を踏まえて弊社は、色素沈着しにくく、敏感肌の方でも使えて、効果はあるけれど中価格帯のものを狙って提供しています。まつげ美容液を発売することにしたのは、お客様の声を聞く中で、目元に悩む人が多いことに気づいたからです。
また、昨年からフェムケアブランド「ルメールビューティー」も手がけており、女性のデリケートな悩みに寄り添うプロダクトを発売しています。
これは、ホルモンバランスの崩れなど女性の悩みによって起こる生きづらさを少なくして、女性が自分らしく輝ける商品をつくりたいという思いで始めました。
ブランドを大切に育てながら新商品開発や海外展開にも挑戦していきたい
ーー今後の注力テーマを聞かせてください。
尾﨑美紀:
今までたくさんの時間と費用をかけてきたブランドをこれからも大切に育てながら、次の商品の開発にも注力しているところです。実際に昨年、商品開発のチームをつくり、商品をスケジュール通りに出せるようなロードマップも作成して取り組んでいます。
また、海外展開は成分の問題で一度撤退してしまったので、戦略も新たにして再度進めていきたいですね。
そのほか、現状はECでの購入が多いのですが、幅広い年齢層のファンを獲得するために、新たな販売チャネルを開拓するのも進めていきたいです。
私が目指したい世界をメンバーに伝え続けて、ブランドを大切に育てながらスピード感を持って会社を大きくしていくこと。これが、私が一番力を入れて進めていきたいことです。
編集後記
今となっては多くの女性からの支持を受けているDINETTEだが、起業当初はまつ毛美容液について投資家の理解を得られず、悔しい思いをしたとのこと。
DINETTEのまつ毛美容液が人気を集めているのは、商品としての価値が高いのはもちろん、常に前を見て進み続ける尾﨑社長のパワフルな人柄もあるのだろうと取材を通して感じた。
尾﨑美紀/1993年生まれ、愛知県名古屋市出身。2017年、大学卒業と同時にDINETTE株式会社を設立。美容メディア「DINETTE」とコスメブランド「PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティーアップ)」など、複数のブランドを運営。「Forbes 30 under 30 Asia(Retail & Ecommerce 2020)」部門に選出。