※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

エレベーター・エスカレーターのリーディングカンパニー、オーチス。世界中で業界最多となる約230万台のエレベーターとエスカレーターをメンテナンスし、毎日約23億人がオーチスの製品を利用する。世界からの支持を得ているグローバル企業だ。その日本法人が、日本オーチス・エレベータ株式会社である。加速するIoTの流れの中で、スマートビルディングの広がりに伴い、「移動」の新時代を牽引する。

ティボー・ルフェビュール氏は、同社の中国市場構築と欧州エリアなどのDXに携わり、2020年、日本オーチス・エレベータの社長に就任した。多様性への理解とデジタルの知識を併せ持ち、新製品「Gen3™エレベーター」で日本市場に攻勢をかける日本オーチス・エレベータ株式会社代表取締役社長、ティボー・ルフェビュール氏に、話をうかがった。

偏見を排除し、現場での議論を繰り返す

ーーティボー社長のご経歴と、仕事で大切にしている考えについて、お聞かせください。

ティボー・ルフェビュール:
オーチス入社後、パリ地区のマンションのお客さまに向けたサービス事業を担当し、中国でのサービス事業の基盤構築や、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域でのDX担当を経て、2020年、日本オーチス・エレベータの社長に就任しました。日本オーチス・エレベータは世界のオーチスの中でも存在感を発揮している会社なので、これは貴重な経験になると感じました。

普段の仕事では「自文化中心主義」という偏見を持たず、多様性を受け入れ、十分な対話や議論をしたうえでの意思決定を心がけていますね。誤った判断をくださぬように、さまざまな角度からフィードバックをもらうのです。また、チームワークを重んじ、変化を前向きに捉えることを信条としています。

デジタル接続機能を内蔵した「Gen3™エレベーター」の魅力

ーーオーチス社について教えてください。

ティボー・ルフェビュール:
より高く、より速く、よりスマートな世界で、人々がつながり、豊かになる自由を提供する。これがオーチスの掲げるビジョンです。高層化の進む社会で、より速くより安全に、エレベーターなどの製品を通して、人々をつなげ、人々の自由に貢献することが私たちの仕事です。

エレベーターの本質的な価値は、人と人とをつなぐことにあると考えています。エレベーターは日常生活や社会生活とも深く関わり合っていますので、企業としての社会的責任を胸に、地域社会や学校などに貢献する取り組みも行っています。

ーーオーチスの新製品「Gen3™エレベーター」についてお聞かせください。

ティボー・ルフェビュール:
オーチスの新製品「Gen3™エレベーター」は、デジタル接続機能を内蔵し、エレベーターを24時間365日、リアルタイムで監視しながら情報を収集・分析することで、地震発生直後などでも地図上で、そのエレベーターがどのような状況にあるかを確認できます。

その優れたコネクティビティ(接続性)により、クラウド経由でロボットと簡単に連携でき、大分県庁では2024年4月に、この連携によってロボットが自律的に目的階へ行き、郵便物を配達することが可能になりました。

また、エレベーター内部では「インフォテインメント」、すなわちインフォメーション(情報)とエンタテインメント(娯楽)が融合し、普段はディスプレイを用いてさまざまなコンテンツを提供しつつ、トラブル時にはその画面がコールセンターとつながることによって、適切なサポートを行うことができます。

ーーカーボンニュートラルにも積極的に取り組んでいるそうですね。

ティボー・ルフェビュール:
昨年は工場の駐車場に大型太陽光パネルを設置しました。工場の電力の47%がカーボンニュートラルな電源から供給されています。ほかには、車両をハイブリッド車や軽自動車に切り替えたり、照明をLEDにしたり、オフィスを統廃合するなどして温室効果ガスを削減していますね。

チームワークこそが、未来へつながる魅力的なブランドをつくっていく

ーー最後に、未来に向けた社内での取り組みについてお聞かせください。

ティボー・ルフェビュール:
魅力的なブランドとなるためには、まず社員にとって魅力的な会社でなければなりません。人材こそが最大の資産です。社員のエンゲージメントを大切にしながら、職場環境の整備、充実した福利厚生のほか、それぞれのキャリア構築に向けたプログラムや奨学金制度などもそろえています。

多様性のある会社だからこそ、人と人をつなぐ、社員同士をつなぐことを重視していますね。毎年、チームワークの向上をめざして「ネイチャー・オーチス」というアウトドアでのオリエンテーリングイベントを開催しているのですが、こうした取り組みも社員の一体感を高め、ブランドを築く力を生み出します。

もう一つ、前向きな変化も大切ですね。変化するということは、それだけで活気や興奮をもたらしてくれます。自らが変化することによって、周りも社会も変化していく。ときには恐れを感じることもありますが、周りと手を取り合い、常にチャレンジすることが未来につながっていくのだと思います。

編集後記

ルフェビュール社長はオーチスに入社する前に、自転車で1年をかけ、中南米を横断したという。各地の学校を訪れ、学生たちに叶えたい夢を尋ね、環境の違う者たちの夢が重なり合っていることに心惹かれた。

今、日本の若者たちに社長は語る。「チャレンジすること、物事の明るい面を見ることが肝要だ。私はそうやって進んできた」と。多文化を横断してきたティボー社長の挑戦が、この国のエレベーター業界に新たな時代をつくろうとしている。

ティボー・ルフェビュール/フランスのEMリヨン経営学大学院でMBAを取得。2003年、オーチスに入社。中国でのサービス・セールス&マーケティング部門のマネージャーや、フランスのパリ地区のサービス・オペレーションのディレクターを経て、2018年に欧州・中東・アフリカ地域のサービス・マーケティング&トランスフォーメーションのエグゼクティブ・ディレクターに就任。2020年、日本オーチス・エレベータ代表取締役社長に就任。