※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

株式会社ヒロカワ製靴は、1964年に台東区で創業した革靴の製造販売会社だ。オリジナルブランド「スコッチグレイン」を展開し、銀座本店を始めとする9つの実店舗とECサイトで販売している。「スコッチグレイン」の魅力やブランド立ち上げの背景について、同社の2代目代表取締役の廣川雅一氏にうかがった。

工場で育ち、自然と靴づくりの道へ

ーーお父さまが創業者とのことですが、どのような経緯で入社されたのですか?

廣川雅一:
父が弊社を創業したのは、1964年のことです。木造2階建ての工場の一部が住居部分とつながっていて、私は子どもの頃からよく工場に遊びに行っていました。靴屋の仕事を見るのが生活の一部になっていましたし、夜遅くまで働く父や職人さんたちの姿を見て何か手伝えればと思い、高校卒業後は自然な流れで弊社に入社したのです。

ーー入社から社長就任までに印象に残った出来事を教えてください。

廣川雅一:
私が入社したばかりの頃は、アパレルブランドがアメリカン・トラディショナル・ファッションを日本の男性に提案していた時期でした。そんな中で、とあるアパレルブランドで靴を担当している方が弊社に声をかけてくださったのです。

当時、私以外は年齢を重ねた職人さんばかりだったので、私がその仕事を担当することになりました。その靴は、月に2千足から3千足と非常によく売れましたね。それがきっかけで、他のアパレル会社からもお声がけいただくようになりました。

父の思いが反映された自社ブランド「スコッチグレイン」

ーー「スコッチグレイン」を立ち上げるまでの経緯をお聞かせください。

廣川雅一:
前述のアメリカン・トラディショナル・ファッションのアパレルブランドが成功したのち、アパレル業界ではさまざまなブランドが出てきました。選択肢が増えた結果、お客さまが分散してしまい、取引先のアパレル企業からの受注も減ってしまったのです。そこで、父が「私たちがつくりたい靴をつくってみよう」と1978年に立ち上げたのが、「スコッチグレイン」です。

ーー「スコッチグレイン」の特徴を教えてください。

廣川雅一:
「スコッチグレイン」の靴は、グッドイヤーウェルト製法と呼ばれる複雑な縫い合わせをする技術でつくられています。この製法でつくられた靴は履き心地が良く、履き方や、ヒールやソールなどを交換して修理することで、5〜10年と長くご愛用いただけるところが特徴で、中には20年、30年と更に長く愛用いただいているお客様もいらっしゃいます。

また、靴底にはイタリア製の高品質なタンニンなめし革を使用するなど、材料にもこだわっています。実物を手で持つと、革の厚みや重みがおわかりいただけると思います。それでいて、実際に履いて馴染んでくると履きやすく、重さは感じないはずです。

「スコッチグレイン」には、父の思想が生かされています。父は「儲けすぎてはいけない」ということをよく言っていました。これは、「材料を無駄にせず、自分たちで工夫して、適正価格で商品を提供することで、お客さまに長く愛される企業でありたい」という意味です。父は2年前に亡くなりましたが、この思いは私が受け継ぎ、「スコッチグレイン」というブランドに反映させ続けています。

ーーブランドの立ち上げから現在まで、どのようなことがありましたか?

廣川雅一:
立ち上げたばかりの時期に、大手広告代理店の方が飛び込みで営業にこられました。その広告代理店の協力を得て、横浜球場の看板や雑誌「MEN'S CLUB」に広告を出したところ、多くのお客さまの反響を呼び、百貨店で「スコッチグレイン」が販売されるようになったのです。

この時期には「スコッチグレイン」と並行して、アパレルからの仕事やOEMも手がけていたのですが、国内の景気が後退するにつれて返品や在庫が多くなってきました。この返品や在庫をどう処分するか悩んでいたところ、御殿場にアウトレットモールがオープンし、弊社も店舗を出店することになりました。2000年の出店からわずか1年で、すべての在庫を現金化することに成功したのです。

その後、関西でも店舗数を伸ばしたほか、2009年にはオフィシャルオンラインストアを開設し、2021年には楽天市場店を開設するなど、ECサイトでの販売にも力を入れています。

ECサイトに注力して新規顧客の開拓を狙う

ーー今後はどのようなところに注力したいとお考えですか?

廣川雅一:
今は景気がいい時期とは言えず、弊社の実店舗の売上も最盛期の3分の2ほどになっています。今後はECサイトやふるさと納税などに力を入れて、国内全体を視野に新規のお客さまを取り込んでいきたいです。それが上手くいけば、5年後、10年後の経営状況が今よりよくなっていると思います。

ーー最後に、この記事の読者に向けてメッセージをお願いします。

廣川雅一:
弊社の店舗スタッフは、お客さまに弊社製品のよさを伝えるためのロールプレイングを日々行っています。その甲斐があって、弊社製品を愛用してくださるお客さまは、「もっと早くスコッチグレインと出会いたかった」とおっしゃいます。

この記事の読者の方も、「スコッチグレイン」の見た目の高級感と履き心地のよさを、ぜひとも体験してください。そして、「スコッチグレイン」のよさを伝える仲間になっていただけたら嬉しいです。

編集後記

ヒロカワ製靴では高級な素材にこだわるだけでなく、コストを抑えるためにイタリアの会社と直接取引をしたり、プロのデザイナーを採用せず現場や社員の意見をデザインに反映したりしているそうだ。素材と製法にこだわり、社内一丸となって真摯で堅実なコスト削減への取り組みを続ける同社のブランドは、今後も高い品質を保ち、多くの人に愛されることだろう。

廣川雅一/1956年東京都生まれ。株式会社ヒロカワ製靴の創業者の長男で、小学生の頃から工場を手伝いながら育つ。高校を卒業後、1975年に同社に入社。下ごしらえや仕上げなど靴づくりの各現場で修業を積む。営業を経験後、1987年に専務、2006年に社長に就任。現場を飛び回り、「スコッチグレイン」の品質管理とともに、情報発信にも情熱を注ぐ。