※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

ファミリーレストランの「トマト&オニオン」と焼き肉レストラン「じゅうじゅうカルビ」を運営する株式会社トマトアンドアソシエイツ。同社は飲食業界大手のすかいらーくホールディングスが運営する企業で、顧客から愛される店づくりに日々取り組んでいる。

日本各地にファンがいる同社だが、代表取締役社長の小林大二氏は、現在に至るまでさまざまな苦難があったと話す。O157感染症やコロナ禍など、多くのピンチを乗り越えてきた小林社長に、今までの道のりを聞いた。

「大切なのはマネジメント力」と気づいた現場時代

ーートマトアンドアソシエイツに入社する前のエピソードを聞かせてください。

小林大二:
私は1990年に、バーミヤン(現すかいらーくグループ傘下)に入社し、店長や営業部長を経験しました。入社して最初に、大切なことはマネジメント力だと気づきました。

そういった中で社員に求められているのは、作業が遅れているポジションをフォローして品質の高い料理を時間通りに提供すること。時間通りに提供するためにどう動くべきかを考えることが、最も大切なのだと気づきました。

ーー現場時代はどういったことにやりがいを感じていましたか。

小林大二:
アルバイトの中には、勤務してまだ1週間の人もいれば、5年以上経っている人もいます。そのため、ピーク時には勤務歴が浅い人のフォローに入るなど、臨機応変に状況を見て動いたり指示を出したりしなければいけません。私にとってはそれが難しくもあり、心地よくもありましたね。

すかいらーくグループでは、たとえば15分以内にディナーの商品を提供しなければいけないなど時間が決められており、その達成率も分かるようになっています。この目標を達成することにも、手応えややりがいを感じていました。

アルバイトの採用や教育の裁量を任された店長時代は特に楽しい時期でした。たとえば過去に、学校を休んでアルバイトをしていた高校生にアドバイスをしたことがあります。するとある日、その高校生の母親から「店長さんが『学校に行きな』と娘に真剣に話してくれたおかげで、また学校に通うようになりました」と感謝されたのです。店長は本当にやりがいがある仕事だと感じたエピソードです。

人との付き合い方を学んだり、人を見る目を養ったり、店長時代はいろいろと勉強になった時期でしたね。

「利益優先から顧客優先へ」考え方を変えたことで黒字に

ーートマトアンドアソシエイツの社長になってからはどのようなことに苦労しましたか。

小林大二:
1年目はいろいろな本を読んだり、人の話を聞いたりしてとにかく結果を出したいと思っていました。全国展開する焼肉チェーン「じゅうじゅうカルビ」の売り上げが伸び悩んでいる時期に社長になり、試行錯誤するものの上手くいかず停滞。そんな折に発生したのが、腸管出血性大腸菌O157感染症です。これにより、客足は激減しました。

それから徹底的に衛生管理体制を見直すとともに、メニューを変えるなどの努力を重ねて、ようやく客足が上向いてきた頃に起こったのがコロナ禍です。店舗数が減って売り上げも低下し、仲間たちがほかの企業へ移ってしまうといった状況が3年ほど続きました。

こうした状況の中で、まずは私自身の考え方を変えなければいけないなと感じました。売り上げのためではなく、お客様に笑顔で弊社のお店を利用してもらうためにはどうすれば良いのかを考えるようにしました。

そして、利益を出すことよりも顧客満足を考え続けた結果、1年ほど前からお客様が増え、ようやく黒字に転換してきたのです。

ーー貴社のネットプロモータースコア(商品やサービスへの顧客の信頼や愛着を測る指標)の数値が飲食業の中でも非常に高い理由についてどのように考えていますか。

小林大二:
利益ではなく、お客様に寄り添うことを優先するように方針を変えたのが大きいと思います。たとえば、利益を追求すると原価を無理に下げる必要があり、美味しくない商品ができあがってしまいます。

粗利率で考えずに粗利高で商品開発をするようにしました。原価は30%と決めてしまうと1,000円の売価では300円しか原価がかけられませんがもっと良い食材を使い500円原価をかけて1200円で販売しても粗利高は同じです。売価が200円上がっても価値がそれ以上アップすればお客様は喜んでいただけます。

弊社では、お客様に「食べてもらいたい」と自信を持てる料理を提供し、販売数が少ない商品はどんどん見直しを図ります。たとえば弊社の自信作に「弾丸ハンバーグ」がありますが、この商品にさらにカットステーキやエビフライをつけるなど、バリエーションを増やしていくことを意識しています。

地に足のついた商売で地域に根ざした店舗づくりを

ーー今後の展望を聞かせてください。

小林大二:
「じゅうじゅうカルビ」はフランチャイズ店舗を増やし、「トマト&オニオン」は直営店を増やしたいと考えています。直営店とフランチャイズの割合を4:6くらいにしたいですね。

また、「トマト&オニオン」が出店していない地域のお客様から、「うちの地域にも出店してほしい」という声をよくいただきます。出店地域を増やすためは、オープン直後だけ盛り上がるのではなく、継続性のある地に足のついた商売をしなければいけません。

今後も、お客様が継続的に来ていただけるような店舗をつくり、地域に根ざした店づくりに従業員と一緒に取り組んでいきたいと思います。

編集後記

インタビューを通して、多くの顧客に愛される店舗づくりが実現できているのは、紆余曲折ありながらも前を向き続けた小林社長と社員たちの努力があるからなのだと感じた。たとえまた大きなピンチが訪れたとしても、利益ではなく顧客を第一に考える同社ならば、顧客の求める商品を変わらず提供し届けて、必ずや再起を果たしてくれることだろう。

小林大二/1964年、東京生まれ。1987年、栄養士の資格を取得。1990年、株式会社バーミヤンに入社。店長、エリアマネージャー営業部長などを経験し、2000年ごろに同社はすかいらーくグループの傘下に収まる。2005年にSバーミヤン責任者、2008年にガスト営業推進リーダー、2010年にSガスト営業部長、2015年にSKR営業政策ディレクターを歴任。2018年、株式会社トマトアンドアソシエイツ代表取締役社長に就任。