※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

インフラから工業機械、エクステリアまで、私たちの生活の随所に樹脂製品が使われている。普段意識することは少ないかもしれないが、いまや樹脂は私たちの生活に必要不可欠なものになっている。

そんな樹脂製品を世の中のあらゆる分野に届けているのが、代表取締役社長の石川明一氏率いる株式会社カツロンだ。

カツロンは1949年の創業以来、ひたすら社会の課題に向き合い、樹脂製品によって解決に取り組んできた。老舗企業が目指す姿とは何か。カツロンの今までとこれからを石川社長にうかがった。

歴史を引き継ぐ3代目社長の事業推進

ーー石川社長の経歴をお聞かせください。

石川明一:
弊社は創業者である私の祖父から父、そして私へと3代にわたって引き継がれてきました。幼いころから会社が身近にあり、当然会社を継がないといけないと思っていました。

ただ、最初から弊社に勤めていたわけではありません。大学卒業後は当時の三菱油化株式会社に就職し、産業資材の営業として7年間勤めました。

三菱油化での経験は自分の社会人としてのベースであり、大企業だからこそ学べた組織性・合理性・論理性は、今も経営の考え方の支えになっています。また、業務を通じて学んだ外注先や既存顧客との信頼関係の大切さは今も深く心に刻まれています。

ーー社長に就任するにあたって取り組んだことは何ですか?

石川明一:
組織の運営体制を「部分最適」から「全体最適」へと切り替えたことです。会社の成長という大きな目標を達成するには、共通目標に対して各部門が役割を果たす、いわば「ワンチーム」の体制が求められます。

しかし、私が入社した2001年当時は全体がバラバラに動いている状態で、部署間の連携が不足していました。

そこで私は、人材教育を通じて全体最適の大切さを浸透させていきました。時間こそかかりましたが、理解が進むにつれて会社全体のレベルが上がり、業績も向上しました。

その結果、近年は創業から75年の歴史の中でトップクラスの売上と利益を記録しています。

75年間追求し続けた「技術力」と「対応力」が会社を支える

ーー貴社の事業内容を教えてください。

石川明一:
弊社の事業内容は、樹脂を用いて主にプラスチック異形押出製品を設計・製造することです。PVC(ポリ塩化ビニル)やTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)、PA(ナイロン系エラストマー)、ABS樹脂などさまざまな素材を用いて、あらゆる分野の顧客にプラスチック製品を届けています。

プラスチック異形押出製品とは、溶けた樹脂を金型に通して作られる、さまざまな断面形状のプラスチック製品のことです。

たとえばパイプやチューブ、シート、機械部品などがあり、具体的な用途を挙げると電動歯ブラシの部材からエスカレーターのパーツ、緑地帯を兼ねた駐車場に用いられるシートまで、大小さまざまな場所で使われています。

ーー貴社ならではの強みは何ですか?

石川明一:
弊社の特筆すべき強みは、75年の歴史で培った極めて高い技術力です。弊社でなければ作れない難しい成形品も多く、技術力による業界内のポジショニングができていると自負しています。また、大量生産ができない小ロット品の製造にも対応できる、きめ細やかな対応力も強みです。

高い技術力と対応力。この2つを兼ね備えていることが、弊社があらゆるジャンルの顧客から支持される理由なのだと思います。

2つの既存技術の長所を兼ね備えた「三次元ハイブリッド製法」とは

ーー「三次元ハイブリッド製法」という画期的な技術を開発したとうかがいました。

石川明一:
三次元ハイブリッド製法というのは、平面的な形を長く製造できる「押出成形」と、長さは限られるものの立体構造物を製造できる「射出成型」を組み合わせた「立体物を長く製造する」製法です。

射出成型を用いた立体構造物の製造は、たい焼きを焼くときのように閉じた金型の中に素材を流し込み、冷やし固めてから金型を開くという手順を踏みます。つまり、製品を1つずつつくるわけです。

しかし、三次元ハイブリッド製法を用いれば、立体構造物を金太郎飴のようにエンドレスに製造できます。これにより製造効率が上がるのはもちろん、製品1つあたりの長さも自由に設定できるようになりました。

今後もたゆまぬ努力を続け、社会の課題に寄り添い続ける

ーー今後、特に注力したいテーマを教えてください。

石川明一:
特に注力したいのは、新商品開発と新技術開発、そして既存技術の新用途開発です。今までの積み上げをさらに磨き上げ、名実ともに業界のトップレベルを目指します。

今の弊社があるのは、創業からずっと社会や顧客のニーズに対して誠意をもって寄り添ってきた、信頼の積み重ねがあるからです。ニーズがあるものを高いクオリティで出せば、きちんと売れますし、顧客の課題を解決できれば信頼や喜びが生まれます。

弊社の喜びは、高い技術力であらゆる課題を解決し、そこに喜びを生むことです。これからも顧客のニーズに徹底的に寄り添い、喜びを提供できる会社であり続けたいと思います。

ーー採用で重視している条件は何ですか?

石川明一:
採用で重視することは、弊社の事業に対する興味の有無です。専門知識や業界の経験があるに越したことはありませんが、基本的な姿勢として、仕事を楽しめるようなマインドがあることが望ましいですね。

弊社は、仕事を楽しみ喜びを分かち合う「楽業偕悦」という経営理念を掲げています。顧客や社員、そして自分自身も、仕事に関わる人全員が喜べる仕事をするには、その土壌となる姿勢が大事です。

近年、売上が好調に伸びていることもあり、採用は積極的に進めていきたいと考えています。採用区分は新卒中心ではありますが、規模拡大を見越して中途採用にも取り組んでいます。

仕事で本当に必要なことは「意欲」や「マインド」

ーー最後に、事業に対する思いや次の世代へのメッセージをお願いします。

石川明一:
私の望みは、仕事に対する責任感と喜びが両立する環境を実現させ、皆さんに「カツロンに入社して良かった」と思ってもらうことです。そして、それには次の世代を担う皆さんの力が不可欠です。

製造業は多くの専門知識が必要というイメージを持つかもしれません。しかし、弊社は現場でものづくりの基礎をキッチリ学ぶところからスタートするので、学ぶ意欲さえあれば、誰でも成長するチャンスがあります。

弊社には、プラスチック異形押出製品を通じて社会のあらゆる分野をサポートできる強みがあります。「社会の課題を解決したい」「会社とともに成長したい」という方なら、きっと働く喜びを実感してもらえると思います。

編集後記

ものづくりとは物をつくる仕事だが、本当の価値は「その物」自体ではないのかもしれない。小さな製品一つひとつには、社会の課題を解決する大きな可能性がある。石川社長の真摯な姿勢は、きっとこれからもその可能性を示し続けるだろう。

石川明一/1970年、大阪府生まれ。1994年、同志社大学卒業後、三菱油化株式会社(現三菱ケミカル株式会社)に入社し7年間、管理および営業部門に携わる。2001年に株式会社カツロンに入社。2008年、同社代表取締役社長に就任。