※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

サクラテック株式会社は、亜鉛めっき鉄線(針金)をはじめとする線材製品の製造・販売を手がけて2019年に創業80年を迎えた。日本で初めて「極厚亜鉛めっき鉄線」の開発に成功した実績があり、現在までさまざまな製品を生み出し続けている。

「針金を、おもろい未来の引き金に。」をミッションとして業界変革に挑戦しているサクラテック株式会社の代表取締役社長である大橋翔太氏に、経営の方針や今後の展望についてうかがった。

周りから慕われていた祖父の他界を機に、家業を継ぐ決意を固める

ーー社長の経歴をお聞かせください。

大橋翔太:
弊社の創業者は、私の曾祖父です。私は社会人になってからすぐに弊社で働いたのではなく、最初は伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社に勤務しました。当時は、「商社マンとして世界を舞台に活躍して成長し、サクラテックに戻って還元したい」という思いがあり、就職しました。

ーー会社を継ぐことを初めて意識したきっかけは何でしたか?

大橋翔太:
20歳のころに祖父が亡くなったことをきっかけに意識が変わりました。大阪のホテルで祖父のお別れ会を開いたときのことです。当時、私は大学生でしたが、当時の従業員や取引先の方など、多くの方々が参列してくださいました。

参列した方々は、孫である私にも積極的に話しかけてくださり、生前、祖父が、温かな従業員や取引先の方々に恵まれていたことを実感し、尊敬の念を抱いたのです。

父からは「お前が亡くなったときには、今回の倍以上の人たちが葬式に来てくれるように頑張れ」と言葉をかけられました。まだ社会にも出ていなかった私ですが、これを機に会社を継ぐことを決心しました。

その後、アメリカでの語学留学、伊藤忠丸紅鉄鋼での勤務を経て、弊社で働くことになりました。入社後は、製造部や営業部、専務取締役などを経て、2022年に代表取締役社長に就任しました。

従業員のやりがいや仲間意識など「エンゲージメント向上」に重きを置く

ーー会社経営において苦労したことは何ですか。

大橋翔太:
どこの企業でもよくある問題ですが、以前は社内の評価制度が年功序列重視の仕組みになっており、一生懸命仕事をして成果を上げている人が正当に評価されていないように感じていました。また、多くの従業員がイキイキと働けていないように感じることも多く、そんな社内環境をどうにか変えていきたいと思っていました。正当に評価されていない環境で働き続けていると、やはり従業員のエンゲージメントは下がっていく一方です。とはいえ、急に評価制度を変えると従業員は混乱しますし、長く働いていただいていることも一定は評価されるべきとも思います。

そこで、まずはエンゲージメント経営を打ち出し、社内環境を良くすることに専念しました。たとえば、従業員とコミュニケーションをとって困っていることはないか聞いてみたり、一緒に飲みに行ったりしました。従業員とのコミュニケーションを通じて、従業員の不満や要望などが見えてきたので、彼らの考えも入れつつ、戦略上取り入れられないことがあれば理由を説明しつつ、現在評価制度をブラッシュアップし続けています。今後も年功序列は大切な文化として一定は残しつつも、やるべきことをやり、成果を上げている人が正当に評価されて、従業員がイキイキ働ける企業でありたいと願っています。

新しい挑戦をしつつ、事業継続をしていきたい

ーー今後の事業展開で注力したいことをお聞かせください。

大橋翔太:
日本を代表する針金メーカーとして事業規模の拡大を追求していきたいと思っています。日本を代表して、世界で活躍する企業になるためには、最低限の規模という要素は追求せざるを得ません。もちろん、小さくてもきらりと光る中小企業も素晴らしいと思いますが、せっかくなら突き詰めて事業展開をしていきたいと考えています。

ですが、一番大切なのは事業継続です。ただ事業を続けるのではなく、質の良い製品を手がけ、多くのお客様に提供することを継続しながら成長していくことで、社会の役に立ち続けたいですね。

またビジョンは変わらずとも、環境変化に合わせて戦略を立てることも大切だと思っています。高度経済成長期のつくれば売れる時代のように、少子化で需要減のこの時代に同じものを大量生産しても、昔のように利益を出せません。時代の変化によってニーズも変わり、既存の事業だけで収益を得るのは難しいので、製品開発をはじめ、既存製品を新たなマーケットに提案したり、新たなビジネスモデルを構築したりしています。

新規事業の一つとして、廃材を活用したサスティナブルな針金アートやインテリアなど消費者向け製品の開発・製造などにも注力していく方針です。

ワイヤーブランドHARIOMO(ハリオモ)公式HP

ありがたいことに弊社の製品を購入してくださるお客様は、たくさんいらっしゃるので、新たな挑戦をするための収益基盤をつくりつつ、”最高の仲間と共に”、日本を代表するWIRE COMPANYになるために、適切な戦略をしっかり立てていきたいですね。

編集後記

「未来の生活を豊かにする」という経営理念を掲げ、亜鉛めっき鉄線をはじめ、さまざまな製品を生み出してきたサクラテック株式会社。創業者の思いを受け継ぎつつ、労働環境の改革や、従業員の思いに耳を傾ける意識、さらには新たな製品を生み出すための努力など、さまざまな取り組みが行われている。

企業を今まで以上に成長させるべく、日々まい進する大橋社長の挑戦の先に新たな未来が見える。

大橋翔太/1987年大阪生まれ。2010年近畿大学経営学部卒業。グロービス経営大学院(MBA)修了。伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社を経て、2014年、サクラテック株式会社に入社。2022年に代表取締役社長に就任。