※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

自動車や電力関連、医療機器など、あらゆる場面で使われるゴム製品。独自の配合技術と高度な製造技術で、良質なゴム製品を提供しているのが、株式会社大和ケミカルだ。

幅広い領域で製品を提供している同社の特徴や強み、経営理念に込められた思いなどを、代表取締役社長の中村英寛氏にうかがった。

家業に入るまでの経歴と健康経営への取り組みについて

ーーまずは中村社長の経歴をお聞かせください。

中村英寛:
私は計画的なタイプではなかったため、大学の進路についてはかなり迷いましたが、当時、日系企業が次々と中国に進出していたことから、将来の役に立つと思い、中国の言語や文化が学べる大学を選択しました。

大学卒業後は自分が好きな車の魅力を伝えたいという思いから、自動車メーカーの販売店で営業の仕事に就きました。それから3年ほど経った頃、大和ケミカルの社長を務めていた父が膝を悪くして、営業活動が困難になってしまったのです。

そこで私は、自動車販売の仕事を一巡できたことから、家業に入ることにしました。自動車の部品をつくる仕事に惹かれたこともその理由の一つです。最初は営業として入社し、4年ほどで専務取締役に就任しました。父は商工会議所などの対外活動に力を入れていたため、この頃から実務面はほぼ任されていましたね。

2013年に代表取締役社長に就任し、現在に至ります。

ーー社長就任後の取り組みについて教えていただけますか。

中村英寛:
最近は特に健康経営に力を入れていますね。定年が延長される中、できるだけ作業時の身体への負担を軽くし、高齢の従業員も安心して働ける環境づくりを整備しています。

また、食事改善のセミナーや、保健師による健康面談なども実施して健康管理を個人任せにするのではなく、会社として積極的にサポートしています。こうした取り組みが評価され、「健康経営優良法人2024 中小規模法人部門 ブライト500」に認定されました。これからも従業員のメンタル・体力向上には引き続き取り組んでいきたいですね。

自動車・エネルギー・医療と事業領域を広げ、リスクを分散

ーー改めて貴社の事業内容について教えてください。

中村英寛:
ヘッドランプなど、自動車の電装部品や、エネルギー事業向けの配電用の端子部品、医療機器用の部品など、ゴム部品の製造を広く手がけています。弊社の特徴は、ゴム材料の配合から自社で行っている点です。お客様の用途に合わせて材料を提案し、臨機応変に対応しています。

売上の約60%が自動車関連部品で、Tier1、Tier2(※)のお客様との取引が中心です。現在は海外向けの取引が増えており、北米やヨーロッパ、ASEAN諸国に出荷しています。

自動車業界への依存度を減らすために、他の分野にも注力しています。たとえば、電力・通信インフラ向けや、建築、医療向けの部品の他、プリンターなどのOA機器用の部品の製造も行っています。

特に医療分野においては、国内においてはクリーンルーム仕様になっていますが、タイも国内同様にクリーンルーム仕様にできるよう、積極的に投資しています。

※Tier1、Tier2:Tier1はメーカーと直接取引している企業、Tier2はTier1と直接取引している企業のこと

ーー販路開拓で意識しているポイントを教えていただけますか。

中村英寛:
事業からの撤退や、他社への乗り換えのリスクを踏まえ、複数の取引先を確保するようにしています。そのため特定の業種にこだわらず、3年を目安に新たな取引先を開拓しているのです。

会社の規模はこだわりませんが、メーカーさんとの直接取引が多いですね。なお、現在は収入の柱をつくり経営の新たな基盤を固めるため、国内企業の開拓に力を入れているところです。

品質の高さと提案力が強み。社内風土を醸成する経営理念に込められた思い

ーー貴社ならではの強みを教えていただけますか。

中村英寛:
製品の品質において定評があります。高い安全性と機能性が求められる医療用部品でも高評価をいただいていますね。さらに、価格交渉だけでなく、製品の改善提案にも注力することで、お客様から信頼を得ています。

また、タイとベトナムに生産拠点があり、ASEANから北米、欧州など、幅広い地域へ製品を供給できる点も強みです。スピード感を持って対応できる点が、グローバル展開しているお客様から支持されています。

ーー組織体制について教えてください。

中村英寛:
従業員数は海外の工場も含め、グループ全体で約650名です。コロナ前は750名ほどでしたが、自動化による省人化を進め、以前と同様の作業量をこなせるようにしました。

新規営業については、営業の3名と私を含め役員3名で行っています。担当者の人数が限られているため、DXツールやBtoBサイトを活用し、効率的な営業活動を心がけています。既存のお客様からもグループ会社をご紹介いただくなどして、販路開拓につなげています。

ーー組織づくりではどのようなことを意識されていますか。

中村英寛:
弊社の企業理念にある通り、明朗で活発な社風の中で、改革意欲を持ち、団結力のある会社を目指しています。これはもう1人の創業者である故・内山重雄が、24歳のときにつくった理念です。私はずっと父が1人で会社を立ち上げたのだと思っており、この事実を知ったのは役員に就任した後でした。

会社の歴史を知ってから、従業員たちの生活を豊かにし、社会に貢献する企業にしたいという内山の強い思いを感じました。そこで、企業理念をもとに教育を行った結果、会社の雰囲気は明るくなり、従業員の自主性を高めることができました。

創業者の思いを次の世代へ

ーー最後に今後の経営方針についてお聞かせください。

中村英寛:
世界的なインフレで購買意欲の低下が懸念されていましたが、今後は徐々に回復すると見込んでいます。実際に売上は上がってきているため、既存顧客への供給を以前のレベルに戻すことに努めていきます。

また、高速道路などで使われている鋼製の防護柵や支柱の腐食を予防する「ラミネートプロテクター」の海外展開を検討しています。さらに技術開発の専門チームを立ち上げ、手頃な価格で提供できる新製品の開発を進めているところです。

会社運営に関しては、企業理念にある理想の企業像を実現するため、次の世代にしっかりバトンを渡していきたいですね。弊社は創業から50年を迎えましたが、100年企業を目指し、これからも成長し続けます。

編集後記

取締役に就任後、父親とともに会社の成長のため身を粉にして働いた共同創業者がいたことを知ったという中村社長。インタビューの中で理想の企業を目指し、先人が懸命に守った会社を後世に残すことへの強い意志が感じられた。株式会社大和ケミカルは、顧客のニーズを汲み取る提案力を武器に、ゴム成形のエキスパートとして、今後もあらゆる業界を支え、活躍し続けることだろう。

中村英寛/1975年、神奈川県生まれ。帝京大学卒業後、神奈川三菱自動車販売株式会社(現:東日本三菱自動車販売株式会社)に入社。3年の修業期間を経て、2002年に株式会社大和ケミカルに入社。2013年、代表取締役社長に就任。