※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

働き方改革やコロナ禍の影響で、オフィスをはじめ空間の快適性や機能性、安全性が一段と重視されるようになった。リモートワーク専用空間、VRやARを活用したメタバース空間など、スタイルも多様化している。

株式会社オリバーは1967年に家具製造販売会社として創業。以降、業界に先駆けてデジタル技術を駆使し、ホテル、レストラン、商業・医療施設などのホスピタリティ空間においてインテリア・空間に関するあらゆるソリューションサービスをワンストップで提供している。同社の代表取締役社長、大川和昌氏に革新的な事業戦略と展望を聞いた。

現在の事業基盤を構築するに至った予期せぬ海外赴任

ーー大学卒業後から貴社に入社するまでの経緯をお聞かせください。

大川和昌:
元々自動車に興味があり、地元工業大学を出たのち豊田通商に就職。アメリカ駐在となり、現地ではトヨタグループのプラントサプライチェーンシステムの構築業務を担当していました。

帰国後、結婚を機にオリバーに入社。海外経験を買われ、オリバーのアメリカ拠点のマネジメントを任されました。

日本だけでなく、世界の企業がオフショア戦略を進める頃だったので、時流に乗ってイタリアやベトナム、中国に仕入れや製造の提携先を開拓。また、アメリカでは、ホテルチェーンのインテリアデザインを展開する事務所とのビジネスや、日本に欧米のインテリアを輸入するといった事業を10年以上行ってきました。

現在ではそれらが弊社のサプライチェーンとなり、新たに事業を展開するベースになっています。

インテリア・内装に関するあらゆるソリューションサービスを提供

ーー貴社の事業内容を教えてください。

大川和昌:
大枠ではインテリアの設計・製造・施工会社です。家具メーカーでもあり、設計デザイン事務所でもあり、内装業者でもあります。オンリーワンを目指し、オフィス、ホテル、医療福祉施設、商業施設、飲食店舗など、さまざまな空間づくりをワンストップで提供する「インテリアソリューションプロバイダー」と称しています。

家具製造がルーツなので、現在も家具職人が手作りするソファやチェアなどを販売していますが、いち早くデジタルテクノロジーを取り入れたことが弊社の強みですね。

そのひとつがオフィス家具とITを融合させたスマートファニチャー「スマファ®」シリーズです。スマートフォンの遠隔操作でレイアウトを変更させたり、人の動きに合わせてデスクやモニターの高さを昇降したり、吸音性能・LED照明・Bluetoothスピーカーの3役を兼ね備えた天井アクセサリーでシーンに合わせた空間演出をしたりといった、新しいインテリアを開発しています。

また、設計プランニングではCAD図面やCG制作はもちろん、ヘッドセットを装着して空間の仕上がりを仮想体験いただけるVR提案を早くから実施しています。また、メタバース上でインテリア提案を行うBtoB向けバーチャルシミュレーションサービス「Oliverse®(オリバース)」も好評です。

ーー事業を多角化・進化させるきっかけは何だったのでしょう。

大川和昌:
私のアメリカでの経験が影響しています。アメリカで携わったオフィスやプラントは、建物や設備のデザイン性はもちろん、働く人の快適性も重視していました。一方、日本のオフィスでは、事務所には机と椅子、プラントには機械を設置できればいいという考えが続いているのではないかと感じています。

縁あって空間をデザインする会社に入社したので、デザイン性、機能性、快適性などさまざまな要素を備えた空間をつくり上げていくことにシフトチェンジしました。

AIを活用し空間も社会もイノベーション

ーー今後もデジタルテクノロジーが貴社のコアになっていくのでしょうか。

大川和昌:
高いレベルでお客さまのニーズに応え、課題解決を図ることに加え、全社的な生産性と提案精度向上のために、どこの企業でも既にITは欠かせない存在になっていますよね。私たちもクラウドERPの導入を初めとして、デザインの現場にもVRや生成AIを積極的に取り入れています。

ただ、オリバーが目指すのはこういった一つひとつのデジタル化だけではなく、それぞれのパートを繋ぎ合わせること、そして究極の目標はワンクリックで人々が望むインテリアが完成する世界の実現です。

ーー採用志望者にはデジタルスキルが求められますね。

大川和昌:
もちろん、既にデジタルスキルを身に着けている人にとっても面白い企業だと思いますが、まだそういったスキルのない人もこれからどんどん勉強して身に着けていけるという点で魅力もあるのではないかと思っています。

インテリアが好きであること、人々に豊かな空間体験を提供したいという思いのある人、そのために最新の手法を使ってみたい人、そういった方に仲間になっていただきたいですね。

弊社はVR、メタバースと親和性が高いことから、AIはもちろん、デジタルの知見を習得する社員教育が充実しています。一例として、在籍するデザイナーの半数近くが弊社独自の社内資格、「VR技術者検定」の試験に合格しているのです。

また、全社員がお客さま、そして次代のニーズに応えるため、自らのスキルセットを向上させる努力を積んでいます。こういった意識の高い社員や、これから出会う人たちと共に、インテリアソリューションにかつてない価値を生み出すリーディングカンパニーになることが私の目標です。

編集後記

自称・コンピューターオタクで、アメリカ赴任中には一人で自社の木工プラントのシステムをプログラミングし、実装した大川社長。デジタル技術を強化する一方で、マニュファクチャーなものづくりに心を寄せ、真摯に対応するサービスも大切にしていることが印象的だった。次はどんなインテリアや空間づくりで私たちを驚かせてくれるのだろうか。

大川和昌/1962年愛知県生まれ。名古屋工業大学卒業後、豊田通商株式会社に入社。アメリカでトヨタグループのプラント設計などに携わる。1989年株式会社オリバーに入社し、同社のノースカロライナ工場やオリバーアメリカ・インターナショナル社の責任者を担当。2018年代表取締役社長就任。