※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

建設コンサルタント事業を筆頭に、ファッションブランドや不動産投資など幅広い事業を展開している株式会社トライアイズ。同社を率いる代表取締役社長の東郷薫氏は、2023年に外部から参画した、いわば新しい視点を持つ経営者。内部管理体制の再構築など、組織改革に果敢に取り組んでいる。同社の描く経営戦略についてうかがった。

内部管理体制の強化で企業力を磨く

ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。

東郷薫:
弊社では、建設コンサルタントに加えて、ファッションブランド・不動産という主に3つの分野で事業を展開しています。建設コンサルタントでは、主に官公庁から河川やダムを中心に新規建設や修繕を請け負っており、ファッションブランド事業では2つのブランドで鞄等の製造・販売をしています。

不動産事業は新しい事業であり、沖縄の不動産開発をすでに始めました。今後はこの3つの事業に加えて、4つ目、5つ目の事業も考えているところです。

ーー異なる事業を展開されていくうえで、意識していることは何ですか?

東郷薫:
確かに事業内容が建設コンサルタントや不動産、ファッションブランドという場合、それぞれが全く関連していないような印象を与えているかもしれません。ですが、さまざまな事業を手掛けるからこその強みがあります。異なる事業間で、今後はシナジー効果を生み出すために、事業ポートフォリオを再構築しながら、よりシナジーが効く方向に舵を取れるよう意識しています。

ーー貴社の強みとなる部分は、他にどんなところがあるのでしょうか?

東郷薫:
事業別に見ると、建設コンサルタントでは長年築いた経験とノウハウがあります。加えて、ファッションブランド事業では140年以上の歴史を持つ皇室ご愛用のブランドも抱えています。これは、他社にはなかなか真似できない部分ではないでしょうか。

また、理念も大きな強みです。弊社は企業理念として、3つの「I(アイ)」を掲げています。3つのIとは、Insight(洞察力)・Integrity(誠実)・Innovation(革新)の頭文字。とくに、Integrity(誠実)という言葉の通り、「愚直なくらい誠実に仕事をしていくこと」を大切にしている企業文化は、自慢です。

ーー企業文化は簡単に築けるものではないからこそ、大きな資産となりますね。

東郷薫:
その通りです。昨年から内部管理体制を強化するために、人材研修として企業理念を伝える場を多く設けました。一度の研修では理念や考え方を定着させることはできないので、3カ月ごとに企業理念に関する研修を設け、繰り返し伝えているんです。地道に、従業員全員に周知できるよう努めています。

ーー内部管理体制でも力を入れていることがあるとうかがっています。

東郷薫:
規程や仕組みを根本から変えていく取り組みを進めています。私が常務として弊社に参画したときから内部管理体制の改革に着手しています。就業規則の大幅改訂や、出張規程のような頻繁に使われる規程の見直しを図っています。組織をつくり直し、適切なルールを設けることで、将来的に離職率の低下やロイヤリティの向上を目指しています。

会社が大切にしているのは、社員です。「Pay For Performance」の精神にのっとって、頑張った人にはしっかりと還元できるように目標管理制度をつくり、企業のコアとなる部分をしっかりと固めているところです。

既存の枠組みにとらわれない柔軟な姿勢が企業を成長させる

ーー今後はどのような事業に挑戦してしていくご予定でしょうか?

東郷薫:
実際に今取り組んでいるのが、不動産投資事業の拡大です。2023年夏から、沖縄のある企業と共同で、宿泊免許つきのコンドミニアムや、ヴィラを手がけていて、現在建設が進んでいます。今回は、開発からスタートしていますが、今後は不動産物件の買取や販売、賃貸も手掛けていく予定です。また、沖縄のみならず他のエリアでの開発も視野に入れています。

今、日本は円安で海外旅行へのハードルが高まっていますよね。だからこそ、沖縄は国内の観光需要として成長が見込めるエリア。まずは沖縄からスタートし培ったノウハウをもとに会社として事業を強化していくつもりです。

ーーファッションブランド事業も「HAMANO」をSNSで見かける機会が増えるなど新たな風を感じています。

東郷薫:
「HAMANO」は、時代の変化に合わせてブランド戦略を試行錯誤しているところです。弊社のブランド「HAMANO」は、もともとフォーマルバッグが主流のブランド。高価格帯ではありますが、手縫いで生産されるため細部が美しく、また耐久性が高く、親から子の世代へと受け継ぐことができる点を支持されてきました。

ただ、時代の変化とともにこうした高品質なバッグであることだけでなく、新たな価値観やアプローチが必要になってきています。フォーマル路線を踏襲しつつ、適度にトレンドを取り入れたスタイルにマイナーチェンジを図ろうとしているところです。百貨店でのポップアップ出店で、若年層をターゲットにした知名度アップを目指すなど挑戦を続けています。

ーー貴社のこれからの注力テーマについてお聞かせください。

東郷薫:
企業価値を高めることに尽きます。たとえば、弊社が運営するリゾートで使うホテルアメニティを開発したり、ホテル内に「HAMANO」の店舗を出店したりするなど、私たちだからこそできるさまざまなシナジーを生み出してくこともその一つ。既存の価値観にとらわれず幅広い事業を展開している弊社だからできることを着実に、愚直に一つひとつ取り組みながら業績につなげていきたいですね。

また、引き続き第三者から見ても「素晴らしい会社だ!」と言われる企業を目指して、内部管理体制の強化や事業ポートフォリオの改善も続けます。自分たちにしかできない挑戦を未来につなげていきたいですね。

編集後記

東郷社長の柔らかな物腰と語り口で繰り出される言葉の端々からは、着実に必要なことを進めていく決断力と強い信念が伝わってきた。既存の枠組みに捉われることなく、誠実にチャレンジを続ける東郷社長がつくりあげる組織の未来に注目したい。

東郷薫/1958年東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。1983年に山一證券株式会社に入社し、国内・海外営業、人事部などを経て1998年にアフラックに入社。主に内部監査部門に従事した後、2023年に株式会社トライアイズに入社。同年3月に同社常務取締役、10月に代表取締役社長に就任。公認内部監査人(CIA)、1級FP技能士(CFP)の知識を活用して内部管理体制の強化、および営業部門全体を指揮している。