※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

武内製薬株式会社は、健康と美容を軸に多彩な商品を展開する企業だ。主力商品のプロテインブランド「THE PROTEIN(ザプロ)」を筆頭に、OEM事業や卸売業にも力を入れ、多角的な事業展開で成長を続けている。

2023年に代表取締役社長に就任した小倉由渡氏は、「長く続く健康的な会社」を目指し、利益の安定と従業員が長く働ける環境づくりに取り組んでいる。教師の家系に生まれながらもビジネスの世界で頭角を現した小倉社長に、その経営哲学と将来のビジョンについてうかがった。

教師の家系から飛び出し、ビジネスの世界へ

ーー新卒時、なぜ楽天に入社しようと思ったのですか?

小倉由渡:
私の実家は8代続く教師の家系で、寺子屋の時代から続く由緒正しい家柄と聞いています。周りは先生ばかりで、ビジネスのことは、まったく知りませんでした。そんな中、大学時代に1年間休学し、アメリカでインターンする機会があり、自分が知らない世界を目の当たりにしたのです。

そこで、世の中を知るために教師の家系を飛び出し、ビジネスパーソンを目指すことに。就職活動中に、楽天なら多くの業界の知識や、経営層の方々の経験について学べると思ったのです。加えて、挑戦的で上昇志向が強い性格だったため、急成長を遂げている楽天を選びました。

ーー楽天ではどのような仕事をしていたのですか?

小倉由渡:
ECコンサルタントとして、楽天での売上を最大化するため、企業の皆さまにアドバイスをする立場でした。何事にも積極的に取り組み、「頼られる人になりたい」と励み続けた結果、同期の中でも最速での昇進を果たすことができたのです。

ただ、それぞれの企業の話をうかがううち、抱えている課題は多様であるにもかかわらず、立場上、楽天を通した売上を最大化するご提案しかできないことに、もどかしさを感じるようになりました。「お客さまに、もっと踏み込んだアドバイスをしたい」と思うようになり、転職を決意しました。

フリーランス・外資系コンサルを経た、社長への道筋

ーー貴社との出合いは、どのようなものだったのですか?

小倉由渡:
フリーランスのコンサルタントとして働き始めた際に、ご縁があり武内製薬が最初のクライアントとなりました。EC事業の成長戦略立案や新規ブランドの立ち上げ、社内全体の研修など様々なプロジェクトを実施しました。

今、一番、売上が伸びている「THE PROTEIN(ザプロ)」というプロテインブランドもその一つ。当時、私が外部コンサルタントとして最初の事業計画を作成しました。

ーーその後、武内製薬の取締役、そして社長就任に至ったのですね。

小倉由渡:
「早くうちの会社に来てくれないか」と約4年ほど誘われ続けていました。「頼られる人になる」と思い始めたコンサルタント業を学びつくした後でなければ、転職は出来ない」と感じていたので、この誘いを断り続けていましたね。それでも金光は、武内製薬がM&Aでオーイズミグループに加わるにあたり、親会社の資本なども活用して、さらに大きな取り組みができると、今度は取締役として誘ってもらいました。

「新たな挑戦ができそうだ」と感じ、誘われ続けていたこともうれしかったので、入社を決意しました。取締役として入社し、半年が過ぎたころに前社長の金光の退任が決まり、社長就任の依頼を受けました。このフェーズの武内製薬の社長になることは自分の今まで培ってきた強みを活かせる・会社を更なる成長に導けると思い、お引き受けし、社長に就任したのです。

健康的に長く続く会社にしながら、社員の自主性と責任感を育てていく

ーー社長就任後、どのような取り組みをしましたか?

小倉由渡:
当時は、ベンチャー企業として売上も一気に拡大していたフェーズでした。ただ、就任して最初に感じたのは、「健康的に長く続く会社」にしたいということでした。市場の変化や物価高騰などの外的要因がある中で、財務状況を冷静に分析することが必要でした。利益を安定的に出し続けることと、従業員が長く働き続けられることの2つを大きなテーマとして設定したのです。

まず取り組んだのが、在庫管理の見直しです。適正在庫の考え方も大幅に見直し、在庫量をしっかりコントロールすることで銀行からの評価も上がり、キャッシュフローも改善させることができました。ようやく財務的にも安定してきており、今後更なる挑戦をしつつも長く続いていく会社としての土台が整い、また、私が取締役として入社した後に、各部門に部長と室長を配置したのですが、彼らへの権限委譲を進めた結果、より迅速に意思決定できるようになりました。福利厚生の充実にも力を入れ、有給休暇の取得推進や家賃補助の拡大などを行い、「健康的に長く続く会社」を目指しています。

ーー貴社の現在の事業内容を教えてください。

小倉由渡:
大きく分けて、3つの事業があります。1つ目は、自分たちのブランドの商品をつくり、それを販売するD2C事業。EC化率が高い脱毛ワックスからスタートし、スキンケア商品から健康分野まで扱うようになり、プロテイン販売へと事業を拡大してきました。その後、D2C事業で培った技術でOEM事業を展開し、そしてまだまだ日本ではEC化率が低い現状を踏まえ、卸事業も立ち上げて売上を伸ばしているところです。

ーー従業員のマネジメントについては、どのようにお考えですか?

小倉由渡:
私は各セクションに裁量権を与えて、一人ひとりに考えさせるというマネジメントスタイルを採用しています。社員の自主性を重んじながら仕事を任せることによって、「権限と責任」を感じてもらうのです。細かい確認はせず、報告が上がってきたときに、積極的に相談に乗るようにしていますね。社員一人ひとりが自主的に考え、行動できる環境づくりが、会社の持続的な成長につながると信じています。

フレーバーで差別化するというブランド戦略と、無限の挑戦を目指すスタンス

ーー貴社の主力商品を教えていただけますか?

小倉由渡:
弊社の主力商品の一つが、プロテインブランドである「THE PROTEIN(ザプロ)」です。最近では、夏に向けてみずみずしい味わいのスイカ味を発売しました。プロテインは毎日飲むものですから、「フレーバー数で楽しませる」という差別化戦略で、バラエティに富んだ味を提供しています。

他には、「mamacharm(ママチャーム)」というマタニティ・ベビー用品のブランドも伸びています。このブランドにおいては、ECサイトと卸、SNSの3つのチャネルをうまく活用できており、SNSのフォロワー数は10万人を突破しました。これを活かして、新しい事業展開も考えていきたいですね。

さらに、最近、力を入れているのが、韓国コスメブランドの展開です。現在、いくつかの韓国ブランドと独占契約を結んでいるので、それらを日本の代理店として広めていく役割を担っています。

ーー今後の貴社の目標を聞かせてください。

小倉由渡:
挑戦が好きなので、挑戦を止めたくないですね。会社のみんなが無限に挑戦できたら、その分、会社ももっと大きくなるでしょう。今はそのための環境づくりに取り組んでいます。

「もっと自分を好きになる体験を世界に届ける」というミッションを掲げているので、誰もが挑戦できる環境を整え、社員のミッションの達成をサポートします。その結果として、社会に影響を与えられる範囲を最大化することを目指していきたいですね。

編集後記

教師の家系から飛び出し、ビジネスの世界で頭角を現した小倉社長。彼の活動の詳細を知れば、健康と美容を軸にした多角的な事業展開に目を見張ることとなる。「無限に挑戦できる会社」を目指す小倉社長の眼差しに、限りない可能性を感じずにはいられない。

小倉由渡/徳島県出身。江戸時代の寺子屋から続く、教師一家に生まれる。横浜国立大学に進学。在学中に1年間休学し、アメリカでのインターンを経て、教師になる道を進むのでなく、一般企業への就職を決意。新卒で楽天株式会社(現・楽天グループ株式会社)に入社。当時、同期の中でも最速での昇進を果たし、退職。フリーランスとしてECコンサルティング事業を開業後、アバナード株式会社で戦略・経営コンサルティング業務に従事。その後、武内製薬株式会社に参画。2023年、同社の代表取締役社長に就任。