※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

多くの経営者が頭を悩ませる会社の売上と社員の待遇を両立させるという課題に真っ向から向き合い、それを実現したのが株式会社テルミックの代表取締役、田中秀範氏だ。

田中社長は創業35年を迎えた同社の創業社長であり、会社が良いときも悪いときも社員を第一に考え続け、社員が楽しくしっかり稼げる環境を作り上げた。社長が実現した環境とはどのようなものなのか。年間2,000社が視察にくるという会社の内側についてうかがった。

21歳の若さで旋盤一つで事業をスタート

ーー田中社長の経歴をお聞かせください。

田中秀範:
私は工業高校の出身で、21歳の時に金属加工業を起業。旋盤一つで必死に仕事をして、気付けば創業から35年経ち、約170人の社員を抱えるまでになりました。

起業の道を選んだのは「とにかく自分でできることに取り組もう」と思ったからです。やるべきことを黙々と続けることで、その先に続く道を切り拓きました。

ーー貴社の事業内容を教えてください。

田中秀範:
主な事業は治具工具、金属部品加工業です。研究施設で使う精密機械から工場で使う製造機械まで、幅広い分野に対応しています。多品種、単品小ロットに特化しており、直近決算は、約52億円と、過去最高売上を達成しました。

弊社は「ものづくりのエンターテイナー」として、製造業に携わる人たちすべてを楽しく、ワクワクさせる会社を目指しており、お客様がカスタマーサクセスを得る架け橋となり、ものづくり業界から日本全体を盛り上げていきたいです。

何よりも社員を大切に思い続ける

ーー田中社長が仕事をするうえで大切にしている価値観は何ですか?

田中秀範:
どうしたら社員を守っていけるのか。これは永遠のテーマだと思います。

たとえばリーマンショックのような不景気のとき、働きたくても家庭と仕事を両立できない状況に陥ったとき、社員の離脱に繋がるリスクはあらゆるところに存在しています。

私はこの点の対策に全力を費やしています。業務を特定の人物に依存しない「仕組み化」に取り組み、スキルや性別、使える時間の差などの影響をなるべく減らし、誰でも稼げる環境を構築、長く勤められる会社として成長させています。

弊社の社員は大半が20代後半から30代前半の女性社員です。これは女性に特化して採用しているわけではなく「誰もが働きやすい、活躍できる会社」ということで女性が集まってきてくれた結果です。

ーー仕事の「仕組み化」でどのような成果が得られましたか?

田中秀範:
業務の仕組み化において、肝となっているのが内勤営業(インサイドセールス)です。昔から継続的に取り組み続け、今では1人あたりの月間売上が1000万円を超えることも珍しくありません。

ーー社員を第一に考えた環境整備をしているそうですが、詳しく教えてください。

田中秀範:
会社を好きになってもらえるような制度をたくさん用意しています。

たとえば、最長3カ月の長期休暇「サバティカル制度」、従業員同士の交流を深める目的で定時就業後に会社の施設を利用して食事をすると、1人1500円支給される制度「Eat in Telmic 」や、退職された方が再就職できる「カムバック制度」などです。また、髪型やネイルなども自由にしています。

また、風通しの良さやスピード感にも気を配っています。迅速な情報共有や業務改善に取り組めれば、利益効率はより高まります。

従業員は私にとって家族のようなものですから、しっかり利益を還元してどんなときでも守れるように、制度や職場環境を整えています。

Webを活用し、すべての製造業との取引を目指す

ーー今後、注力したいテーマをお聞かせください。

田中秀範:
特に注力したいのが取引先の開拓です。現在、約5,000社と取引させていただいておりますが、全国の製造業すべてと取引できるよう、精力的なアプローチに取り組んでいきたいです。

そのためにもWebの活用が不可欠です。内勤営業(インサイドセールス)は今や弊社の強力な武器となっており、今後も伸ばすべき点だと考えています。さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)と組み合わせれば成長の可能性は大きく広がるでしょう。

製造業にもAI(人工知能)やDXを活用できる時代がやってきました。もはや、製造の部門でも属人性から脱却して、誰でも精度が出せる未来がすぐそこにあるのです。

現状に満足せずどんどん開拓していくこと。これが、人口減少下において社員の利益を確保していくために必要な最たることなのです。

ーーこの記事の読者にメッセージをお願いします。

田中秀範:
製造業には専門知識が必要だと思われがちですが、弊社には徹底的な仕組み化によって文系出身者でも問題無く働ける環境が整っています。知識はあるに越したことはないですが、それよりも製造業に携わりたい気持ちがあると嬉しいです。

また、明るい方やアピール力がある方は歓迎です。弊社の営業は内勤営業(インサイドセールス)がメインなので、電話越し、画面越しでも誠実さやポジティブさを伝えられることは大きな武器になります。

アピールといえば、製造業の「一般の方との接点が少ない」という課題を解決するために「てるみちゃん」という公式キャラクターをつくり、てるみちゃんをつかいPR活動にも力を入れています。有名なゆるキャラのように、『てるみちゃんといえばテルミック』『テルミックといえば刈谷市と常滑市』と連想してもらえるように頑張りたいです。ちなみに公式Youtubeチャンネルにもよく登場します。

製造業には人を、地域を、そして日本を元気にする力があります。全国へ活力を届けるために、皆さんの力をぜひ貸してください。

編集後記

課題を乗り越えられずに妥協してしまうことはあるだろう。しかし、田中社長を見ていると、そんな自分に「喝」を入れたくなる。「本当に無理なのか」「できることはやったか」「妥協していいのか」。きっと社長が通ってきた道は、これらの言葉を乗り越えてきた人生だったはずだ。田中社長はまさに社長の鑑。愛情でつながるネットワークの中心にいる人物だ。

田中秀範/1968年生まれ。愛知県三河地方の工業高校を卒業後、旋盤一つ、一人で金属加工業を開始。1997年に有限会社として同事業を法人化。2001年に株式会社へ商号変更し、現在に至る。社長歴35年目の創業者。