※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

初代は高度経済成長の波に乗って自動車部品を製造し、2代目はハイテク機器への設備投資を行って精密板金加工を発展させた。その時代に合わせる経営に努めてきた株式会社タシロ。今回は、3代目である代表取締役社長の田城功揮氏に、経歴から代表として大切にしている考え、今後の展望まで、幅広くうかがった。

ビジネスチャンスを見極める洞察力と確実な手腕で、急速に変化する時代の流れに対応

ーーはじめに、田城社長のご経歴をお聞かせください。

田城功揮:
大学卒業後、大手人材紹介会社に入社し、業務に従事しながら、国際ボランティア事業を運営するNGOの理事も務めていました。2019年に弊社に入社、採用強化や新規事業の推進に尽力し、2023年に3代目代表取締役社長に就任しました。

ーー採用強化・新規事業の推進について詳しく教えてください。

田城功揮:
前職が人材業界だったため、入社後にまず与えられた使命(ミッション)が「採用強化」でした。ものづくりが好きな人材を集めるため、社員の協力を得ながら「自社製品の開発」と「自分のアイデアで商品化できる風土づくり」を進めてきました。

地道にブランディングと採用活動を続ける中、2022年に開催された第93回東京インターナショナル・ギフト・ショー「LIFE×DESIGNアワード」でのグランプリ受賞は非常に大きな転機となりました。

ーー田城社長が大切にしていることは何ですか?

田城功揮:
普段から社員に伝えていることは、「挑戦」「向上心」「誠実さ」です。挑戦しなければ現状維持もできませんし、強い目的意識と向上心がなければ身に付くものも身に付きません。

そして、誠実さが一番の根幹だと思っているのですが、嘘をつかないこと、誤魔化さないということですね。技術力だけ向上したところで、人間性がしっかりしていなければ誰からも信用は得られませんし、信用が得られないと仕事にならないということを常に伝えています。

創業から59年。築き上げてきた技術力と多能工化、そして業界を超えたコラボレーション

ーー貴社の事業内容を教えてください。

田城功揮:
精密板金加工と精密切削加工を中心とした機械部品の製造に加え、近年では、新規事業として自社製品の製造販売にも力を入れています。2024年2月には、ステンレス製のカプセルトイマシンを発表しました。初めて外部のデザイナーにご協力いただき、従来のイメージを覆す仕様に加え、板金加工の技術力の高さをアピールできる製品になったと思っています。

今後、弊社のテーマである「共創」を促進するために、さまざまな業界・ジャンルとのコラボレーションを予定しています。

ーー貴社の強みや他社との違いは何ですか。

田城功揮:
弊社の最大の強みは「超短納期」です。他社様と比べて5分の1程度の納期で対応でき、依頼の半分以上が注文から納品まで、1週間程度で完了します。短納期を実現できる理由は、①多品種少量生産、②多能工化、③情報共有の徹底にあります。1人で複数の加工ができる多能工を基本とし、依頼内容や進捗状況に応じて、臨機応変に対応できる生産体制が整っています。

複数の技術を身に付け、加工の幅を広げたいと考えている方には、弊社の業態や体制が働く環境として魅力的だと思います。社員の8割以上が20代というエネルギッシュな雰囲気と、自分のアイデアを商品化できる風土も大きな特徴です。

既存の町工場のイメージを変え、日本のものづくり産業をリードする存在へ

ーー中長期的な展望について、詳しくお聞かせください。

田城功揮:
「自社製品の海外への販路拡大」と、「地域社会との共創」を進めていきたいと考えています。これまで金属加工とは無縁だった異業種や異素材とのコラボレーションを積極的に行うことは、お互いの現場にとってインパクトがあり、ものづくりの可能性を広げる試みだと思っています。

また、地域にひらかれたクリエイティブな新しい社屋として、「OPEN INNOVATIVE FACTORY」を計画しています。気軽に訪れていただくことで、町工場を「先進的でカッコイイ」というイメージに転換し、タシロの魅力を発信しつつ、地域のものづくり産業の発展に貢献していきたいですね。

ーー最後に、田城社長の夢を教えてください。

田城功揮:
僕と同じように、異業種を経験して、20代・30代で事業承継し、家業と向き合いながら一生懸命に頑張っている仲間がたくさんいます。そんな仲間たちと一緒に、日本の製造業を盛り上げていきたいですね。普段から「仕事もプライベートも充実させてほしい」と社員に伝えていますが、そのためには僕自身が人生を楽しまないといけないと思っているので、これからも夢に向かって挑戦していこうと思います。

編集後記

創業以来、積み重ねてきた確かな技術力に加え、「共創」をテーマに自社製品の開発やコラボレーションを推進する田城社長。社員の8割が20代という若さと勢いを武器に、精密板金加工から新社屋の構想まで、次々と新たな領域に挑戦し続けている株式会社タシロ。同社は田城社長のリーダーシップにより、日本の町工場のイメージを一新し、業界の最前線を走る存在へと成長している。タシロの今後の挑戦と、さらなる飛躍に期待したい。

田城功揮/新卒で株式会社パソナに入社し、同時期にNGOのNICE(ナイス)の理事を務める。2019年、株式会社タシロに入社。新規事業として自社製品の開発を開始。「3WAYピザ窯」でクラウドファンディングに挑戦し目標金額の300%を達成。同商品は日本最大規模の展示会である第93回東京インターナショナル・ギフト・ショー「LIFE×DESIGNアワード」のグランプリを受賞。2023年、代表取締役に就任。