クラウド型コンタクトセンター・ソリューションを中心に事業を展開するジェネシスクラウドサービス株式会社。米国に本社をかまえる同社は、海外発のAIを活用したNo.1のエクスペリエンス・オーケストレーション・プラットフォーム「Genesys Cloud」を日本でも提供しています。
そんなジェネシスクラウドサービス株式会社の代表取締役社長を務めるポール・伊藤・リッチー氏に、会社のあり方や今後の展望などをうかがった。
コンタクトセンター業界で幅広いマーケットに影響を与えたい
ーー入社するまでの経歴と、入社後に取り組んだことを教えてください。
ポール・伊藤・リッチー:
さまざまな業界があるなかで、私が最も興味を持ったのがコンタクトセンター業界だったので、そこでキャリアに関連する業務を中心に取り組んでいました。
業務に従事する中で、「より幅広いマーケットに影響を与えたい」と思うようになり、インタラクティブ・インテリジェンスという会社に転職しました。その後、インタラクティブ・インテリジェンスの買収に伴い、2017年にジェネシスに入社しました。
ーー貴社では現在、どのようなことに取り組まれていますか。
ポール・伊藤・リッチー:
弊社では、常に製品サービスの強化に力を入れており、ここ数年は特にAI活用のサービスに注力しています。企業における顧客体験の質を向上し、世の中がより活発になるよう、弊社の力でサポートしていきたいという思いが強くあります。
そのために、Genesys Cloudをより多くの日本のお客様に受け入れてもらえるように、国内のニーズを本社に伝え、サービスに反映してもらうようにしています。例えば、2023年に大阪に2つ目の拠点を開設したのですが、これもサービスの安定稼働を望むお客様からの要望を汲み取ったものです。こうした日本市場にマッチしたサービスを常に意識してきたことが、国内で300社以上の導入実績につながりました。
日本の特性を知り、クラウドサービスに移行して得たマーケットチャンス
ーー貴社は外資系企業ですが、日本と海外の違いを実感した経験を教えてください。
ポール・伊藤・リッチー:
日本人は製品のインターフェースを日本語で読みたいと考える傾向があり、簡単な英語で表記されていても、母国語である日本語の表記を希望する方が多いですね。あと、日本では製品もサービスの質も重視される方が多いため、障害があった際のサポートについても、海外より厳しい目で見られます。
日本では、おもてなしのサービスが浸透しているため、非常に細やかな機能を求められることも多いです。これは他国の方が気づかない視点や機能を盛り込むうえで、またGenesys Cloudを進化させるうえでも、非常に重要なことだと思っています。
ーー違いを認識したうえで取り組んだことは何でしょうか。
ポール・伊藤・リッチー:
弊社はGenesys Cloudを国内でリリースしてから、クラウドサービスにシフトしました。もともと弊社のクライアントは日本の大手企業が多く、クラウドサービスに変更することで、大手以外にも対象となるマーケットが広がるのではと考えたからです。クラウド事業を開始してからは、企業に実際に使っていただき、企業の課題を解決することができる機会が広がっていると実感しています。
時代の波に乗りながら多様なニーズに応え、新製品を生み出し進化し続ける
ーー企業の方向性や課題についてお聞かせください。
ポール・伊藤・リッチー:
顧客情報のセキュリティ対策には必ず力を入れなくてはなりません。コンタクトセンター向けのサービスを扱ううえで、セキュリティの安定性を保つのは大きなミッションです。万が一トラブルが起こった際に備え、バックアップできる体制を整えています。
また、顧客の年齢層にも変化が生じています。今の若年層はコンタクトセンターを利用せず、ネットやアプリなどを活用します。だからこそ、コンタクトセンター以外の方法で問い合わせができるチャンネルも確保する必要があります。年齢層の変化にも合わせつつ、製品を展開するつもりです。
多くのエンタープライズ企業でCXに携わる人の中では、ジェネシスは比較的浸透していますが、今後はエンタープライズ以外の企業にも弊社を知っていただき、規模問わず一緒に日本のマーケットコミュニティを築いていきたいです。
Genesys Cloudは日々進化し続けており、毎週のように新しい機能が生み出されています。その機能をお客さまに活用していただけるよう、常に機能をアップデートし続けたいですね。製品が進化し続けていくワクワクを味わっていただけるよう、品質向上にはより一層力を入れていきます。
また、お客さまの声も積極的に取り入れていきます。お客さまが求めている機能を把握するための投票サイトも用意しています。メーカーひとりよがりではなく、お客様のご要望を正確に把握したうえで、機能をアップデートしていきます。
そのために、私は社長というよりも、ひとつのチームのキャプテンをしていると思っています。仲間とともに競技をするように、従業員と力を合わせて業務に取り組むことが速いスピードで進化するクラウドサービスでは重要だからです。
ーー今後の展望について教えてください。
ポール・伊藤・リッチー:
日本企業は日本のマーケットニーズに合った機能を生み出せるのが強みです。一方、海外企業は開発スピードが速く、新しいことにも積極的にチャレンジします。弊社はその両方を活かし、海外のスピード感や日本のマーケットのニーズも取り入れ、日本の文化にも良い影響を与えられるでしょう。
また、外資系企業としてさまざまなサービスを展開していくなかで、日本の文化に見合ったソリューションを展開できるよう本社と交渉する必要があります。そのためには、お客様のビジネスをより深く理解する必要があります。Genesys Cloudを導入いただくだけでなく、使いこなしてもらうためにも、カスタマーサクセスの体制をさらに強化していきたいと考えています。
編集後記
日本企業のニーズに合わせつつ、海外企業の良さも取り入れて、より高品質なサービスの提供を目指すポール・伊藤・リッチー社長。ユーザーの声を反映させるべく、日本のお客様とじっくり会話するなど、積極的な姿勢を見せている。日本のおもてなしがクラウドサービスに反映されれば、日本だけでなく世界のCXが進化していくだろう。
ポール・伊藤・リッチー/2017年にジェネシスに入社。クラウド型CXソリューションGenesysCloudの日本におけるローンチを主導し、2020年より代表取締役社長に就任。クラウドビジネスの成長を牽引し、日本において300社以上の導入実績を達成した。CX/コンタクトセンター業界のセールスリーダーとして、20年以上の豊富な実績を持つ。