※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

昭和西川株式会社は1942年に当時の西川甚五郎商店の製造部門として設立。西川の寝具の製造や卸売を担っていたが、近年では自社ブランドの枕や寝具の直営事業にも注力している。

旧Futonto株式会社の社長だった齊藤淨一氏は2024年に昭和西川の社長に就任、その後両社は合併した。実は齊藤社長は京都西川販売店の出身であり、合併に伴い再び“西川”に戻った形となる。会社や商品である寝具に込める思いと昭和西川の今後について齊藤社長にうかがった。

450年の歴史に魅入られて西川へ。寝具販売に魅力を感じ独立。

ーー齊藤社長のご経歴についてお聞かせください。

齊藤淨一:
私はいろいろな仕事を経験してきましたが、25歳のときに西川という400年以上続いているメーカーがあるということを知って、ビビッと来たんです。それだけの歴史があるメーカーはなかなかなく、私もその歴史を担いたいと思って社員になりました。

12年くらい働かせていただきました。寝具の販売の仕事は好きだったのですが、布団となると、価格面含めてなかなか販売するのは難しいものです。枕なら良いものでも布団よりも売りやすいのではという思いから、2011年に独立してオーダーメイドの枕を提供する「まくらぼ」を設立しました。

ーー独立当初の思い出はありますか?

齊藤淨一:
いろいろなメーカーの枕を買い、実際に使ってみたり、分解してみたりして研究をしましたね。そこから自分でオーダーメイドの枕をつくりました。実は、「まくらぼ」の会員ナンバー1番は私の母親です。身近な家族が満足してくれる商品を作ろうと思ったからこそ、枕づくりに真剣に向き合い、いいものができ上がったのだと思います。

また、2021年の9月1日に「まくらぼ」が10周年を迎えたのですが、そのときに母親が枕をメンテナンスに持ってきてくれたのです。そこで、「まくらぼ」の枕は10年もつということが証明されました。

ーー2011年というと今ほど睡眠の重要性が重視されていなかった時代だったと思いますが、実際に開業されて手応えは感じられましたか?

齊藤淨一:
確かにそのあたりから睡眠の質が徐々に見直されてきましたね。一般の方が寝具店に足を運ぶ機会は、せいぜい引っ越しのタイミングぐらいです。

私たちはオーダーメイド枕の無料メンテナンスというサービスを実施していたため、そのおかげでお客さまが半年に1回来ていただけるようになったのです。もちろん、そうなればお客様との接点が増え、商品を購入してもらいやすくなりますが、それ以上にメンテナンスを機会に皆さまの睡眠の質の向上に貢献できるという点がうれしかったですね。

「世界を朝から元気にする」という思いを胸に再び“西川”へ合流。

ーー現在の事業内容について教えてください。

齊藤淨一:
もともと昭和西川は、西川の製造部門として設立されましたが、現在では自社商品の直営店事業にシフトしてきています。現在全国のショッピングモールなどを中心に67店舗を運営し、ECでの販売にも力を入れています。また、日本最大級のムートンメーカーとも合併をし、寝具やアパレルに使われるムートンの製造も展開中です。

ーー社長としては”西川”と再び合流した形になりますが、改めて貴社にはどのような強みがあるとお考えですか?

齊藤淨一:
やはり自社で高品質なものづくりができるという点ですね。売るだけではなく、長く使っていただくことができる寝具を提供できることです。実際に、昭和西川の長年のファンでいてくださっているお客さまから「昔から使っています」というお声をよくいただきます。

かつては布団を布団屋に持ち込んでメンテナンスをしながら使っていたというのが当たり前でしたが。50年、100年と長持ちする製品をつくって、昔の布団屋のような文化を復活させたいですね。

ーー昭和西川の社会的役割はどこにあると思いますか?

齊藤淨一:
やはり人々の睡眠の質を高めることに尽きます。いい睡眠をとれば基礎体温が上がる。基礎体温が上がると免疫が上がる。そうすれば病気にかかりにくくなり、日本人全員の睡眠の質が高まれば医療費も削減できるはずです。

「世界を朝から元気にする」というパーパスをもとに、皆さまに睡眠についてもっと考えていただける活動をしたいと思っています。

現在、店舗では枕の適切な高さを測定するというサービスを実施しており、毎月1万人以上の方にご利用いただいています。もちろん枕を買っていただけるのが一番なのですが、それよりも1万人の方に睡眠について、ひいてはご自分の健康について考える機会を持っていただけたというのが成果だと思っています。

基礎体温だけでなく心の体温も上げられる会社でありたい

ーー今後の貴社の展望についてお聞かせください。

齊藤淨一:
とくにリアル店舗は大切にしていきたいですね。お客さまと直に接してお声を聞けるのはやはり実店舗しかできないことです。ですから、睡眠について気軽に相談できる場所を増やすためにも、今後200店舗、全国各地に出店していきたいです。また、接客についても力を入れていきたいと考えています。

弊社にはサービス精神にあふれ、人間力が高いスタッフがそろっています。たとえば、誕生日が近いお客さまにバラの花束を買ってお渡しするといったサプライズを自分で考え実践してくれたスタッフもいますね。お店が人間力を高め、心から仕事を楽しみ、お客さまはもちろんのこと、スタッフにとっても心の体温を高められる場でありたいと考えています。

ーー心の体温を上げるために、社長が心がけていることはありますか?

齊藤淨一:
コミュニケーションをとることですね。私も店舗の責任者として、営業会議や商品会議、研修などに顔を出しています。そこではいろいろな話をしています。たとえば、「宇宙船内でも基礎体温と免疫力を上げるためにはどうすればいいか?」といった話も大真面目にしているんですよ。

会社経営はRPGのようなものと思っています。仲間と一緒に目的に向かって進むのはとても楽しいと感じます。私はもとからの仲間だったFutontoの社員も、昭和西川の社員も、皆大好きです。彼らと一緒に、これからも夢に向かって歩み続けたいです。

編集後記

社員と寝具に熱い思いを持つ齊藤社長。インタビューを通じてオーダーメイド枕のパイオニアとしての思いと、”西川”に脈々と受け継がれてきた近江商人魂を感じた。日本人の睡眠を変え、世界を朝から元気にするために、齊藤社長がどのような店舗・商品展開をされていくのか注目したい。

齊藤淨一/1973年神奈川県生まれ、神奈川県立高校卒業。大手寝具メーカー販売員の営業経験を経て、2011年Futonto株式会社を創業。代表取締役社長として、オーダーメイド枕の店「まくらぼ」を全国38店舗展開。オーダーメイド枕や寝具だけに留まらず、睡眠の質向上を目的とした活動の輪を広げるため、2023年2月一般社団法人睡眠改善アカデミーを設立、代表理事を務める。2024年5月、昭和西川株式会社の代表取締役社長に就任。