※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

私たちの身近にある電子機器に必要不可欠な部品である半導体。長くフラッシュメモリ技術の発展に尽くしたエンジニアたちが14年前に立ち上げたのが、株式会社フローディアだ。技術革新が進む台湾に拠点を置き、同社の英知の結晶ともいえる半導体IP(特定の半導体を製造するための製造方法や設計図などの知的財産)を通して、世界にその知名度が広がりつつある。

フローディアの半導体IPによってつくられた半導体は、ウェアラブル端末などのデジタル機器や電化製品、自動車にも使われている。製品の機能1つを動かすために最低1つの半導体が使われているため、一度採用が決まれば生産数の何倍もの金額がロイヤリティとして返ってくる仕組みだ。今回は創業社長でもある奥山氏に、フローディアの柱である半導体IP事業とそのビジネスについて話を聞いた。

全てのデバイスに、フローディア製メモリを

ーー貴社の事業について詳しくお聞かせください。

奥山幸祐:
株式会社フローディアは、20年以上フラッシュメモリの開発に携わってきた経験豊富なメンバー7人で、2011年に設立しました。現在ではメモリが中心ではありますが半導体チップの製造ではなく、正確には半導体IPの提供が主な事業です。

社名から花を連想されることが多いですが、この社名には「Flash on all media」――全ての電子機器に、私たちの不揮発性メモリ(Flash)IPが採用されるようにという思いを込めています。まだまだ売上としては小規模ですが、これから大きな飛躍を見込んでいます。

ーー半導体IP事業とはどのようなビジネスモデルですか?

奥山幸祐:
お客様が製造する半導体のチップに組み込まれる不揮発性メモリIPについて、設計図や使い方を知的財産として提供することでロイヤリティを受けとる仕組みです。国内・海外の大手ファウンドリ(半導体デバイスを生産する工場)で採用いただいており、今は世界の半導体の約60%を製造している台湾積体電路製造(以下、TSMC)での開発に携わっています。

今後さらに拡大したいのが、メモリを活用したAI事業です。機械学習などのソフト面ではなくハード面において、人間の脳の中にあるシナプスをメモリで再現します。弊社の技術を活用することで、演算効率の向上、消費電力の大幅な削減、低コスト化を見込んでおり、2026年の製品化に向けて開発を進めているところです。

TSMCの品質認定を大幅にクリアする、熱に強く設計コストを下げる不揮発性メモリ

ーー半導体IP、知的財産を利用したビジネスモデルで重要なことは何でしょうか。

奥山幸祐:
技術力、独自性の高さですね。弊社独自の技術を知的財産として守っていくために、223件の特許を申請しており、うち179件が認可されています。技術は常に更新されていきますので、お客様に求められるIPを常に4種類は維持・提供していきたいと考えています。

もう一つは資金調達かもしれませんね。IPが採用されてからロイヤリティが入るまでには、どうしてもタイムラグがあります。昨年3月にはTSMCから130BCD Plusプロセスにおいて、弊社のIPの一つ「G1」の品質認定をいただきましたが、この成果がロイヤリティに反映されるのはまだ先になる見込みです。

ーーTSMCから評価されたのは、どのような点でしたか?

奥山幸祐:
TSMCとのやりとりで感じたのは、コスト面を意識されているという点です。認定試験ではプログラムと消去動作を1万回繰り返し行い、125℃・200℃それぞれの環境で10年間データを保持できる品質基準に合格しました。熱に強い弊社のメモリであれば、組込みの工程で行われる熱処理による影響を受けにくいため、工程の短縮、設計の負担軽減につながります。それが、結果的にコストダウンにつながるのです。

認定試験は130BCDで行われましたが、現在はより広範に使用されている90BCD、180BCDの開発を順次進めているところです。早いものだと2025年には生産を予定しています。TSMCでの開発状況を⾒て、他のファウンドリからのオファーも来ていますので、ますます忙しくなりそうですね。

台湾と国内の分業体制、新たな力でAI事業を発展させたい

ーー今後の貴社の発展に向けて、どのように採用活動を進めていますか?

奥山幸祐:
半導体IPは国内にも提供していますが、設計及び販売の拠点は台湾にもあり、アメリカ、ヨーロッパへの提供にも窓口がある状態ですね。今後も半導体先進国である台湾で、現地の人を採用して開発を進めていく予定です。

日本ではこれからAI事業を進めていきたいので、マネージメント、資金調達ができる人材の重要性が上がっています。他にもメモリに特化した私たちだけでは分からない部分、たとえばコンピューティングの分かるソフト会社や製造会社の技術や経験を持った人と、手を組んで開発を進められればありがたいですね。

編集後記

フローディアの技術力は、世界で高いシェアを誇るTSMCにも認められる確かなものだ。長い経験に裏打ちされた高度な知識と技術を生かし、AI技術をハード面で大幅に向上させる新事業も計画されている。フローディアの技術がもたらす更なる発展に、注目したい。

奥山幸祐/1954年山形県生まれ。山形工業高校を卒業後、日立製作所に入社。その後のルネサスエレクトロニクスを含め、半導体事業で38年間の経験を積み、2011年に株式会社フローディアを設立、代表取締役社長を務めている。