※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

建築現場や土木工事現場などで使われる製品の開発・提供を手がける、アラオ株式会社の代表取締役社長の荒尾幸生氏。まちづくりのサポーターとして点字パネルや安全ポールといった人々の暮らしを守る一役を担っている。

会社が安定して成長するためには、現場のニーズに応え、スピード感にこだわりを持ち、常に新しい「人」を入れ、新しい「商品」を提供することが大切だと語る荒尾社長。そんな同氏に会社として大切にしている考えや取り組みなどをうかがった。

5代目社長として父の意思を継ぎ、逆境に立ち向かった営業時代

ーー荒尾社長の経歴をお聞かせください。

荒尾幸生:
私が弊社に入社したのは1992年のことです。高校卒業後に2年間、陸上自衛隊に所属したのち、父から呼び戻されました。高校卒業後に大学か、専門学校か、自衛隊かという選択肢を与えられ、自衛隊の道を選びました。

自衛隊への道を提示したのは、父なりの息子の鍛え方だったのだと思います。社会人として、人間として成長できる厳しい環境をあえて与えようとしたのではないでしょうか。

入社後は東京で10年間、次に大阪で7年、福岡で3年と、営業一本のキャリアを積んできました。私が社長に就任したのは2020年のことです。4代目社長だった、いとこの後を継いで5代目社長に就任し、現在に至ります。

ーー営業時代に、気付きが得られた体験を教えてください。

荒尾幸生:
ある営業所の所長が、突然退職したことをきっかけに、内勤の社員が立て続けに退職してしまったときが大変でした。

そのままにはできないので、私が営業所長を引き継ぐことにしたのですが、残った社員たちは営業ばかりで、伝票1枚つくるだけでも大変苦労しました。なんとか見よう見まねで取り組み、昼間は営業に出かけて、夜に事務仕事をする生活が3、4カ月は続いたと思います。その間、支えてくれた社員たちは、今でもかけがえのない戦友です。

このときに実感したのが、マニュアルの整備と仕事のシステム化の大切さです。人が代わっても仕事を順調に進められる環境の整備は、人材がますます貴重になるこれからの時代、重要度が上がるでしょう。

この経験を活かして、業務のシステム化やデジタル管理などに注力しています。直近では2024年に、社員たちからの不満や改善点を取り入れながら、業務管理システムを刷新しました。

現場のニーズをベースにした製品を提供し続ける

ーー貴社の事業内容を教えてください。

荒尾幸生:
建築現場や土木工事現場、工場などを対象に、現場のニーズをベースにした製品の開発や提供を行っています。

主に取り扱っているのは、建築・土木・工業用ゴム・プラスチック製品で、品目でいうと、建築機材用部品や建築防水材、建築仮設機材用部品、土木機材用部品、安全保安用品、車輛関連部品、電気関連部品の7種類です。

現場から出たニーズに応えて、「便利」で「安全」で「効率のよい」製品を開発しているのが特徴です。さらに、企画から販売まで新商品開発のスピードにこだわることで、顧客の利便性を追求しています。

ーー貴社独自の強みは何でしょうか?

荒尾幸生:
弊社の強みは、毎年「新卒採用」と「新商品開発」をすることで、新しい風を入れ続けていることです。この2つを重視するのは、先代、先々代社長から受け継いできた考え方です。

弊社はこれらを両輪として組織を育ててきました。どちらか片方が一年でも途切れてしまったら、会社が勢いを失って下降線をたどるのではないかと思っています。

最近は特に、新商品開発に力を入れており、前期は過去最高の33品目もの新商品開発に成功しました。今後も生き生きした会社であるために、この2点は途切れることなく続けていきます。

顧客と市場を開拓し、歩みを止めないことが一番のリスクヘッジ

ーー今後、特に注力したいテーマは何ですか?

荒尾幸生:
まず新規取引先の開拓は絶え間なく続けていきます。弊社の取引先は既存と新規が7:3の割合で推移しています。多くの顧客数を確保し、契約消失のリスクを小さくしていますが、それでも社会的な経済リスクが発生すれば、多くの取引先を失う可能性があります。常に取引先を開拓し続けることで、いつ何が起こっても対応できるよう、企業としての体力と俊敏さを養う必要があるのです。

また、海外の企業との付き合い方を転換しようとも考えています。弊社は数十年間、海外から材料の仕入れをしていますが、販売には取り組んできませんでした。しかし、国内マーケットが縮小するリスクを見越して、今年からは海外向けの販売にも取り組む予定です。

また、国内においては、営業先の業種を建築から物流へシフトして拡大することにも取り組んでいます。これは今、弊社で芽が出始めてきた新事業で、物流業界の市場の大きさを実感しているところです。倉庫内のリスクヘッジや従業員の労働環境改善など、物流業界ならではのニーズに、弊社の強みである新商品開発力で対応していきたいと思います。

仕事に“満足と幸せ”を求めてこそチームとしての幸せを追求できる

ーー採用についての考えをお聞かせください。

荒尾幸生:
採用で一番重視しているのは「フィーリング」です。いくら能力が高い方でも、フィーリングが合わないと楽しく仕事ができませんし、チームワークを必要とする環境では十分な能力を発揮できません。多少能力が控えめな方でも、フィーリングさえ合えばチームが楽しく成長していけると思っています。

また、弊社はファブレスメーカー(工場を持たないメーカー)のため、営業担当は既存顧客管理と新規開拓、新商品開発という3つの業務をこなす必要があります。特に新商品開発は大事で、営業成績を出すことと新商品を企画することの両方ができる人材が理想です。とはいえ、難易度が高いのも確かなので、可能ならという程度に受けとってくれればと思います。

弊社は「私たちは満足と幸せを求めることを誇りにします」という一文を経営理念に掲げています。どれだけ社員が満足と幸せを感じてくれるのかが自分の夢であり、皆さんにもその夢を担う一員になってほしいと願っています。

満足と幸せにゴールはありませんし、会社がそれを与えることもできません。しかし、一緒になって全力で取り組むことはできます。自分の生き方を大事にしたいと思っている方は、ぜひ私たちと一緒に仕事で幸せを追求していきましょう。

編集後記

インタビュー中に社長が語った「“新卒採用”と“新商品開発”のどちらかが一年でも途切れたら下降線をたどる」という言葉は、水面下で絶え間ない努力を続けるからこそ実現するのだと実感させられる。成長を求めるなら継続的な努力が必要だ。だからこそ、アラオのように仲間と手をとり合って成長できる環境が必要なのだと思われる。変化の荒波を超えていくために必要なものがそろっている同社の成長に期待している。

荒尾幸生/1971年、大阪府生まれ。2年間の自衛隊勤務を経て、1992年アラオ株式会社に入社。2020年、5代目代表取締役社長に就任。