※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

1916年に紙問屋として創業した廣川ホールディングスは、包装資材の販売や卸、生産だけでなく、販促事業にも進出した老舗企業だ。

同社で販促事業への展開を力強く推進したのが、代表取締役社長の廣川信也氏。「規模の拡大を追い求めるのではなく、エクセレント・ミッドサイズ・カンパニーを目指したい」と語る廣川社長の頭の中には、一体どのような理想が描かれているのか、話をうかがった。

パッケージの卸や生産から販促分野へ進出

ーーご経歴についてお聞かせください。

廣川信也:
私は神戸大学を卒業してから、弊社に入社するまでに2つの会社で働きました。1社目はアメリカのシリコンバレーに本社を構える産業用半導体メーカーの日本法人で、日本の窓口として、BtoBのマーケティングに携わりました。

BtoBのマーケティングの仕事はとても面白かったのですが、もともと私はBtoCのマーケティングをしたいと思っていたので、セールスプロモーションを生業とする企業に転職し、数年間勤務してから、廣川株式会社に入社しました。

ーー入社後に事業部を立ち上げていますが、どのような経緯ですか?

廣川信也:
私が廣川株式会社に入社したころは、完全に紙や包装資材をメーカーポジションとして持つ会社でした。紙の卸売業と紙器や梱包資材を扱う仕事、さらにスーパーマーケットの食品売り場に並ぶ食品容器を生産・販売する仕事の3部門で成り立っていました。

先代からは入社したときに「販促関連の仕事をしていたのであれば、ビジネスモデルや考え方を活かして挑戦してみないか」という言葉をもらい、1989年にプロテック事業部を設立しました。

「パッケージメーカー×販促代理店」という視点で顧客への価値提供を最大化

ーー販促事業に挑戦した背景と戦略をお聞かせください。

廣川信也:
プロテック事業部を立ち上げたばかりの頃は、初めての取り組みだったので、難しい部分もありました。しかし、前職で総合的な販促計画やブランディングを考えることは得意だったので、勝算はありました。

当時の包装資材メーカーは、パッケージとしてサイズや形状などの機能を満たしたものはつくれても、パッケージは売場における販促ツールであるという観点から提案ができる会社は稀有でした。

弊社の強みは、説得性や高揚性といったプロモーション的な視点を持ったパッケージ提案ができることです。つまりパッケージまでメーカー視点で提案ができる販促代理店であり、同時にプロモーション的な視点を持ったパッケージメーカーであるという点で、他社との差別化が図れていると感じています。

ーー販促企画というクリエイティブ性のある営業ができる部分も、差別化ポイントとして大きいのではないでしょうか?

廣川信也:
クリエイティブであるというよりは、顧客の方々から弊社にご相談いただく課題に対して最適な答えを導き出すことが、弊社にとって大切なことだと思います。

弊社はモノ売りだけの会社ではありません。我々の仕事は提供する側(生産者)と享受する側(消費者)がともに満足できるような相互関係を築けるように、仲介することが仕事です。つまり、モノからコトへと変換することが重要なのです。

たとえば、「プラスチックの容器が売りたい」「華やかなパッケージやノベルティを売りたい」という目先の目的だけに囚われてしまってはいけません。場合によってはパッケージではない提案があってもいいと思っているくらいです。

ーーセールスプロモーション分野の勝算はどのようなところにあったのでしょうか?

廣川信也:
私がやっていた販促事業の大きなメリットは、リスクが極めて低い点にあります。具体的にお話しすると、「代金回収のリスク」「在庫を積むリスク」「系列や制約に縛られる不自由さというリスク」の3つです。

消費者向けの販促が必要な企業はある程度の規模感を有しており、当時販促分野で全く無名の弊社に問い合わせが入ることは皆無で、こちらから相手を選んでアプローチをするので、与信の心配が少ないのです。安心して取引できる会社に出向けばいいのです。

また、販促の仕事は紙とペンさえあれば提案書がつくれます。パッケージやノベルティなどの製品は、提案して受注してから手配すれば良いので、先行的に在庫を積む必要がありません。これが2つ目のリスクがないといわれる理由です。

さらには、これは販促だけではなく、包装資材にも通じることなのですが、弊社はメーカーと商社の両方の機能を有しており、また特定の系列や資本に縛られない完全にニュートラルな立場なので、「素材×加工方法」を国内外から自在に調達できるなど、顧客から見た場合の選択肢が極めて広いというメリットがあります。

弊社はこうした制約に縛られずにお客様のご要望に柔軟にお応えできます。つまり、提案の幅やビジネスの自由度が高いというメリットとなっているのです。

目指すのはエクセレント・ミッドサイズ・カンパニー

ーー今後の展望についてお聞かせください。

廣川信也:
弊社が目指しているのは、「エクセレント・ミッドサイズ・カンパニー(卓越した中規模の会社)」です。規模の拡大ばかりを狙わなくても、中規模でもしっかりとしたビジネスを展開し、外から見たときに「あの企業と付き合っていれば間違いがない」と言っていただける会社でありたいと思っています。

スタートアップ企業が持つ意思決定の早さと、グローバルな企業の視野の広さの両面を持ち合わせた、ちょうどいい塩梅の会社であり続けるように努力を続けています。

さらに弊社には「全天候型経営」という理念があり、これは社会がどのような情勢になったとしても社員を路頭に迷わせない安定した財務基盤を有し続けるということです。

同時に今年の元旦を襲った能登半島地震のような大規模災害時に、人間にとってまず「飢えと渇き」からの解放のための食料・飲料、その次に「健康と清潔」を保つための薬粧品、そしてその後に必要となる「笑顔と安らぎ」づくりのための嗜好品。これらをいかなる天候下でも確実に消費者に送り届けるための包装資材を提供し続けるという企業の姿勢の表れでもあります。

編集後記

エネルギッシュさと冷静さとロジカルさを持ち合わせた、廣川ホールディングス株式会社の廣川信也社長。規模の拡大を追い求めるのではなく「エクセレント・ミッドサイズ・カンパニー」を目指す戦略は、現代の変化のスピードを捉えているからこその対応力だ。消費者ニーズや顧客の抱える課題に向き合い続けてきた廣川社長の姿勢が、まさに経営にも生きていると感じるインタビューだった。

廣川信也/兵庫県生まれ、神戸大学卒業。廣川株式会社入社後、プロテック事業部の部長を経て、2010年1月に同社代表取締役社長に就任。2017年12月、(旧)廣川株式会社の適格分社型分割に伴う分割継承法人として、(新)廣川株式会社を設立し(旧)廣川株式会社は社名を廣川ホールディングス株式会社に変更。