株式会社リンクバルは、街コンのイベント情報を掲載するポータルサイト「machicon JAPAN(街コンジャパン)」やマッチングアプリ「CoupLink(カップリンク)」の運営、1対1で出会えるカフェラウンジ「1on1 for Singles」など、出会いに関する多彩なサービスを提供する企業だ。“街コン”という言葉を世間に浸透させた、街コン業界のパイオニアでもある。
この「出会いをつくるプロ集団」を率いるのが、代表取締役社長の吉弘和正氏だ。彼は人々のニーズに応えるサービスを生み出し続け、会社を前進させてきた。今回、吉弘氏に同社の強さの理由や戦略、今後の展望などを聞いた。
男女の出会いのイベントを「街コン」と定義し、人々に浸透させる
ーー「出会い」に関する事業で会社を立ち上げた理由を教えてください。
吉弘和正:
オックスフォード大学でMBAの取得を目指し、起業家クラスを受講していたときのことです。このクラスは、自分たちで事業のアイデアを出して、そのアイデアが良いものであれば、大学側が事業立ち上げをサポートするというものです。
そのときに、初めてポータルサイトというものに出会いました。ポータルサイトという存在を知り「もしかしたらポータルサイトは、パーティーや街コンに特化させてグロース(持続的な成長)をさせられるのではないか」と思ったのが、現在の事業を始めたきっかけです。
当時もイベント自体は開催されていましたが、「街コン」を定義したのは弊社だと言って良いでしょう。男女が集まるイベントを街コンと定義し、誰もが街コンをイメージできるようなものをつくろうという意識で事業を進めてきました。
ーーコロナ禍など、対面のイベントが難しい時期もありましたが、その点はどうでしたか。
吉弘和正:
事業を始めて自分たちでイベントを増やす中、2011年にテレビ局が弊社のことを取り上げてくれました。これをきっかけにユーザー数が一気に増え、企業とのコラボも増えるようになりました。
コロナ禍は対面でのイベントが難しく、売上が落ち込み、オンラインでの開催を試みる時期もありましたが、現在はコロナ禍も落ち着き、徐々に売上が戻ってきている状態です。
既存の会員を他のサービスに送り込む、効果的な集客戦略
ーー事業について詳しく教えてください。
吉弘和正:
日本全国で開催される多数の街コンイベント情報を掲載するポータルサイト「machicon JAPAN」やマッチングアプリ「CoupLink」、1対1で出会えるカフェラウンジ「1on1 for Singles」など、複数のサービスを手がけています。
弊社のサービスに登録したユーザーには「リンクバルID」が割り振られ、弊社の各サービスを使うことができます。そのため、たとえば「CoupLink」内で街コンなどのリアルイベントが検索できたりするなど、各サービスを連携させることで満足度の向上につなげています。
ーー他社との差別化や強みのポイントは何であるとお考えでしょうか。
吉弘和正:
広告を使って集客するのはもちろんですが、先ほどお伝えした通り、各サービスの連携による集客を特に意識しています。たとえば「1on1 for Singles」のような店舗型のマッチングサイトを利用したユーザーを、弊社のオンラインマッチングサービス「CoupLink」に送客するといった方法です。
あるサービスのユーザーを別のサービスに誘導できる仕組みを持っていることが、弊社が他社と最も差別化できている点です。
また、今後、現在の主流とは違う方法で婚活をする層が目立つようになれば、弊社もその新しい婚活方法に対応した別のサービスをつくり、そちらに加入してもらうように誘導することも考えています。
1つの方向性だけでなく、婚活業界を全方位で戦い抜いているのが弊社の強みですね。
今後はAI技術を活用したパーソナライズで顧客のニーズに応えていく
ーー今後の展望を聞かせてください。
吉弘和正:
「1on1 for Singles」のような店舗型の事業は、海外でも通用するのではないかと思っています。そのため、海外進出にも、今後は力を入れていきたいですね。
また、「出会いを作るプロ集団」という側面は残しつつ、AIを事業の中核におく会社として変革していきたいと考えています。各サービスに、パーソナライズ化やマッチング率を上げるためにAI技術を活用することを想定しています。たとえば「machicon JAPAN」に関しては、それぞれのユーザーに合ったイベントをAIで分析して、レコメンドするといった方法です。ユーザーに合うイベントを紹介することで、ニーズを満たしています。
「CoupLink」では、機械学習による、お互いの好みが合致したお相手を推薦する独自AIにより、380%のマッチ数増加を実現。加えて、マッチングアプリ詐欺を予防する取り組みを合わせて行っています。
編集後記
吉弘社長は今後の目標について、「リンクバルをグローバル企業にすること」と語った。現在は日本でしか展開していないが、今回、吉弘社長にサービスの概要や戦略を聞いて、同社の画期的なサービスは海外市場でも通用すると感じた。
日本に「街コン」という言葉を浸透させた同社が、今後はどのような新しいカルチャーを世の中に広めるのか。今後のグローバル展開が楽しみだ。
吉弘和正/1970年生まれ。オックスフォード大学(英国)でMBA(経営学修士)を取得。プライベートエクイティを専門とする投資顧問会社であるハミルトン・レーン(本社:米国)の東京オフィスの設立など日本での事業の立ち上げに従事。退社後も、社外コンサルタントとして活動。2011年6月にイベントECサイト「machicon JAPAN」を立ち上げ、同年12月に株式会社リンクバルを設立。