お気に入りの店や思い出の店、馴染みの店など、あなたにも好きな飲食店が一つはあるだろう。飲食店での楽しい体験とは、いつまでたっても色褪せないものだ。
株式会社ロットの代表取締役社長である山﨑将志氏は、飲食店が人々にとって幸せもたらす場であることを第一に、出店する店舗の種類から社員のケアまでを考えているという。今回は山﨑社長の考える幸せな飲食店の形とは何か。事業における取り組みや今後のビジョンについてうかがった。
大学時代のアルバイト先で社員になり、社長まで上り詰める
ーー山﨑社長の経歴をお聞かせください。
山﨑将志:
私は大学生のころ、弊社のアルバイトとして働いていました。大学卒業後も約2年間フリーターとして働き続け、正社員への登用を受けて正式に入社しました。入社後、約半年後には店長に昇格し、キャリアは順調かのように思いました。しかし、ここで私は大きな失敗をしてしまいます。
当時の私は「遅刻魔」と呼べるほど遅刻が多く、そこに大きなミスが重なって、店長から降格してしまったのです。当時はアルバイトの方に叱られるほどだったので、今思えば当然だったかもしれません。
この失敗から意識を入れ替えた私は、改めて努力し、無事店長に戻ることができました。それからは複数の店舗を受け持つようになり、最終的には立ち上げも含め7店舗での店長を経験しました。
社長職の話が出たのは2016年のことです。創業社長の退任をキッカケに次期社長が募集され、これに立候補しました。社長の選定には自店舗に加えて他店舗の売上まで上げることを求める、厳しい課題が出されました。複数の社員が立候補しましたが、実直に努力を重ねた結果、私が社長に選ばれました。
ーー社長に立候補をした理由を教えてください。
山﨑将志:
社長に立候補した理由は2つあります。一つは自分のキャリア形成を考え直すタイミングだったこと。もう一つは飲食業におけるキャリア形成の現状に疑問を持ったことです。
次期社長の話が出たころ、ちょうど自分の進退についても考えていました。今後もこの会社に勤め続けて、幸せな人生が描けるのかを不安に思っていたのです。
しかし社長職となれば話は別です。組織のトップであれば視点が大きく変わりますし、できることもかなり増えます。当時、私と同じ悩みを持っている社員が多かったこともあり、社長になって自分と彼らの悩みに向き合おうと思ったのです。
こうして自分を含めた社員たちの人生を幸せにするために、社長に立候補する決意を固めました。
地域の方に喜んでもらうことを第一に、ローカルドミナント戦略で成長
ーー貴社の事業内容を教えてください。
山﨑将志:
埼玉県南部の主に小規模な駅の周辺で、レストランやベーカリーなどを運営しています。
弊社の特徴は「ローカルドミナント戦略」をとり、特定エリアに出店を集中させることです。一つのエリアにニーズが重複しないように異なる業種の店舗を出店し、地域の方との信頼関係を構築しながら、出店数を増やしていきます。
現在は居酒屋を中心に、パン屋や洋食屋も出店しています。以前はラーメン店や焼肉店なども運営していました。
ーー貴社独自の強みは何ですか?
山﨑将志:
出店からサービスまで、すべてにおいてお客様を第一に考えていることです。
弊社は出店する業種を決めるとき、まず地域にある業種を調べ、地域の方が喜んでくれそうなものを選びます。ローカルドミナント戦略に取り組んでいる以上、地域の方と良い関係を築くことは何よりも大切です。
この価値観は事業の基礎にもなっており、サービスの内容を決める場合も、お客様にできるかぎり多くの幸せや感動を提供できる方法を模索しています。
また、良いサービスは社員たちが良い精神状態にあることが大事だと考え、必要であれば店舗を休みにしてでも、社員の精神状態を優先させることにしています。
「良い店」をつくるのはあらゆる人に幸せを届けるため
ーー今後、特に注力したいことを教えてください。
山﨑将志:
弊社のミッションである「Good restaurants make all happy.」を推進していきます。
この言葉は「良い店をつくれば結果的に多くの人を幸せにできる」という考えです。良い店はお客様を幸せにするのはもちろん、取引先、そして働く社員たちも幸せにできるものです。
また、社員たちが飲食業界で働き続けられるよう、キャリア形成にも力を入れたいです。現在の飲食業界は、ある程度の年齢になると起業や独立をするか、または別の業界へ行くかといった、取捨選択を迫られるケースが多いです。
しかし、飲食業界で働き続けたい方にとっては難しい選択です。シンプルに飲食業界で年をとるまで働き続けて、しっかり幸せに暮らせる。そんな状態を実現したいですね。
そこで必要になるのが、社員たちがキャリアを築ける場所です。どうしても店舗数が必要になってくるので、別の地方都市への挑戦も視野に入れる必要があるでしょう。
地方都市には愛されながらも閉店する店が多くあります。弊社が店舗を事業承継して、地域の方の幸せを引き継ぐ方法も選択肢として考えています。
満点の笑顔と愛嬌で飲食業界の楽しさを伝え続けたい
ーーこの記事の読者にメッセージをお願いします。
山﨑将志:
飲食店という業界全体で見れば、弊社はまだまだ小さな存在です。しかし、笑顔と愛嬌だけは絶対に負けない会社でありたいと思っています。
お客様を第一に考える姿勢と社員の徹底的なケア、そしてこれらのノウハウ化により、いつまでも笑顔の絶えない会社であり続けること。この3点を満たせれば、小さくても地域に笑顔を届けられる存在であり続けられるはずです。そのためにも、私は「飲食は楽しい!」と言い続けたいですし、共感できる人と一緒に働きたいと思っています。
弊社にはメンバーの若さからか、固定観念にとらわれない社風があります。自由な価値観で働けますし、いろいろなことに挑戦できる環境もあります。店長の段階から決定権が大きいのも特徴で、挑戦を求める方には楽しめる会社だと思います。
飲食業を通じてワクワクできる体験がしたい方は、ぜひ参加していただければと思います。アルバイトの社員登用に力を入れているので、アルバイトからのスタートも歓迎です。
編集後記
飲食店での良い思い出を振り返れば、そこには自分や家族、友人、ほかの客や店員たちまで、たくさんの笑顔に満ちていたことに気付くはずだ。山﨑社長のような志を持った人が飲食業界に増えていけば、日本の飲食店はさらに大切な場所へと変わっていくことだろう。
山﨑将志/1982年愛知県生まれ。大学在学中に株式会社ロットが経営する店舗でアルバイトとして勤務。卒業後、2006年に同社に入社。合計7店舗の店長と5店舗の立ち上げを経験し、2017年1月取締役社長に就任。2019年に代表取締役社長に就任する。