少子高齢化が進み、人口減少が叫ばれる現代の日本では、人手不足が深刻な問題となっており、企業の採用活動にも影響を及ぼしている。そんな中、2007年の創業以降、主に高校や専門学校の学生たちから選ばれ続けているのが、ファッション業界専門の人材サービス会社、株式会社ファインズ東京だ。
今回は、代表取締役社長兼CEOである原田智也氏に、起業した経緯、クライアントと学生の両方から選ばれ続ける理由、今後のビジョンについてうかがった。
8年間の経験を活かしファッション業界専門の人材サービスを開始
ーーまず、会社を立ち上げた経緯について教えていただけますか?最初にどのようなきっかけがあったのでしょうか?
原田智也:
27歳の時に人材サービス会社のクリスタルグループ(現テクノプロ・ホールディングス株式会社)に入社し、入社3年後に子会社の社長を任されましたが、当時は失敗も多かったですね。その後、瞬間最大で子会社の社長を10社ほど兼任し、8年間人材ビジネスについて学びました。
雇われ社長とはいえ、経営を経験したことで、本当の経営者になりたいという気持ちが芽生えてきました。経営者の知人に独立することを話すと「うちのグループ内で立ち上げてはどうか」と声をかけていただきました。それが起業のきっかけです。
ーーファインズ東京を設立するまでの道のりを教えてください。どのようにして現在の形に至ったのでしょうか。
原田智也:
弊社の国内関連会社スキルハウス・スタッフィング・ソリューションズの代表である、マーク・スミス氏が出資元であるイギリスの上場ファンド会社エンプレサリアグループの日本におけるM&Aエージェント的な役割を担っていて、出資の話を持ち掛けられたことがきっかけです。
当時、1社目のスタートアップで4期目が終わろうとしており、急拡大も果たしていたので迷いましたが、「出資するからゼロからやってみたらどうか」と提案され、より自分の思い描いた事業展開ができると決断し、2007年に株式会社ファインズ東京を創業しました。
ーーファッション業界に特化した人材サービス業を始めた背景にはどんな思いがあったのでしょうか?
原田智也:
8年間人材ビジネスを学び、さまざまな業界を経験しましたが、独立するなら好きな業界に向けた人材サービスで勝負したいと思っていました。自分がずっと好きで大事にしてきたものは何かと考えたところ、ファッションだと気づき、ファッション業界に特化した人材サービス業を始めることにしたのです。
新卒採用と独自のビジネスモデルで業界をリードする理由
ーーファインズ東京の事業内容や特徴について教えてください。
原田智也:
ファッション業界に特化した、人材紹介と人材派遣を手がけています。弊社が正社員として雇用した人材を、ファッションブランドに販売員として派遣するのです。今は人手不足で人を集めるのが本当に難しく、これまでのやり方では立ち行かなくなると思い、2012年から新卒採用に舵を切りました。現在では毎年100名ほど採用しており、派遣する販売員は100%新卒採用です。
ーー新卒採用にはどのように取り組んでいるのでしょうか?
原田智也:
メディアは使わず、高校や専門学校に直接アプローチしています。毎年入社してくれる学校とは関係性ができているので、進路の先生と情報交換をすることもあります。弊社と大手ファストファッションの新卒採用人数が同じくらいだった時期もあります。進路の先生は採用人数で、企業規模を判断しているので、弊社を大手企業だと思っているかもしれません。
ーークライアントと学生の両方から選ばれる理由について教えてください。どのような点が評価されているのでしょうか?
原田智也:
現代の日本はどこの業界も人手不足です。ファッション業界も同様なので、クライアントからのニーズの開拓は苦と感じていません。経験者を主に雇用していたクライアントからは、新卒の販売員を派遣することに心配の声もありましたが、実際に活用してみて問題ないと分かると、どんどん広がっていきました。
学生から選ばれる理由は、正社員として安定した雇用を維持したまま、いろいろなブランドに携われる点にあると思います。違うブランドで働きたくなった時に、弊社なら転職せずとも、配置換えという形で複数のブランドを経験できます。また、派遣先から正式に社員として迎えたいというオファーがあれば「卒業」という形で送り出しており、毎年20名ほどが卒業しています。
希望のブランドの入社試験に落ちて弊社に入社した社員をそのブランドに配属したら、ブランド側から社員登用のオファーが来たこともあります。反対に、憧れのブランドに配属し、実際に働いてみたらイメージと違い、別のブランドに配置転換した社員もいました。こういった働き方ができるところも、支持される理由だと思います。
長年の採用ノウハウを活かした新たな事業展開のビジョン
ーー5年後、10年後のビジョンをどのように描いていますか?
原田智也:
ファッション業界で働きたい学生の第1の選択肢になっていたいと思います。これまでの13年間で、ファッション業界に興味があるものの、どのブランドを選択するべきか悩んでいる人や、興味があるブランドの求人が出ていない人に、働く機会を提供するパイプをつくってきました。
現在は高卒の販売員がほとんどですが、今後は専門卒や大卒の販売員も増やし、この働き方を浸透させていきたいと思います。また、私は今56歳なので、次の世代へバトンタッチするための本社社員の教育にも力を入れていきたいですね。
ーー今後挑戦したい事業についても教えてください。どのような新しい取り組みを計画していますか?
原田智也:
弊社でこれまで培ってきた採用ノウハウを、ファッション業界以外の業界に水平展開するコンサルティングを行いたいと考えています。100名近い規模で新卒採用を行っている会社は少ないので、自社の採用ノウハウを活かして他の業界にも広めていけたらと思います。
編集後記
人材サービス業に新しい働き方を提案する原田社長。長年ファッション業界を支えてきた実績を感じさせる力強い言葉から、新しい働き方が当たり前になる日は近いと感じた。今後のビジョンでは、次の世代へバトンタッチする必要性を話しながら、培ったノウハウを活かした採用コンサルティングへの挑戦について熱い思いを語っていただいた。きっと多くの業界に新しい風を吹き込んでくれることだろう。
原田智也/1967年生まれ、大阪府出身。大手総合人材サービス会社で子会社代表を数社経験し、2007年に株式会社ファインズ東京を創業、代表取締役社長兼CEOに就任。一般社団法人国際メンタルイノベーション協会の設立者で、専務理事。学校法人国際ビジネス学院専門学校金沢美専の顧問。