※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

2021年10月、地球温暖化対策計画が閣議決定された。これは地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画であり、2030年度には温室効果ガスを2013年度と比較して46%削減することが明記されたのだ。その具体的な内容には「住宅や建築物の省エネ基準への適合義務付け拡大」が含まれている。

100年以上にわたって電設資材販売業を営んできた深田電機株式会社では、長年の経験や知見を活かし、政府や自治体と一丸となってこの問題に取り組んでいる。今回は、代表取締役社長の深田理恵氏に環境ソリューション企業としての取り組みや今後の展望についてうかがった。

社長就任までの軌跡と「社員のしあわせのための三本の矢」

ーーこの会社を引き継ぐまでの道のりについて教えていただけますか?

深田理恵:
小学生の頃から兄に「家業を継ぐように」と言われていたので、漠然と深田電機は私が継ぐものだと考えていました。そのため、大学の数理学科を卒業後、1979年に深田電機に入社。請求書発行などの経理を担当した後、システム開発室の室長として1人で社内の基幹システムを開発しました。

入社した当時は、手書きだった伝票や、受注書から納品書までの書類も、すべてシステムで管理するように変更しました。そうすることで、業務の効率化や見える化につながり、現在でも当時開発したシステムを利用しています。

そして、2005年に社長に就任しました。社長業は初めてなので、いろいろな方からお話をうかがい、「会社での私の役割は、社員の給料を上げること」だと気づき、そこに注力しています。

ーー社員の給料を上げるために具体的にどのような施策を行いましたか?

深田理恵:
「社員のしあせのための三本の矢」を掲げました。

1本目の矢は「超一流企業なみのボーナス」です。夏と冬に年2回ボーナスが出るのが一般的ですが、弊社では年度末にも利益を決算賞与として社員に配当しています。これにより、大手自動車メーカーよりも高い水準の賞与を支給しています。

2本目の矢は「国家公務員なみの給料」です。社員の給料を上げることを目的とし、給与体系を見直し、文字通り給料水準を「国家公務員なみ」にしました。さらに営業の社員を中心に、成績を上げた分は毎月「賞金」として還元しています。

最後の矢は「社員ひとりひとりのライフスタイルに合った働き方」です。2015年に「あいち国際女性映画祭」にて、男女共同参画社会の実現に向けたショートムービーをつくることになりました。当時、弊社には妊娠中や育児中の女性がいませんでしたが、育児中の男性が複数名いたため、これを機に「イクメン休暇制度」を導入しました。

これは、小学校低学年までの子どもがいる男性が月に一度、育児や家族サービスに努めるための休暇を取得するもので、社内外から大変高い評価をもらいました。

「ZEBプランニング事業」で地球環境にも貢献

ーー具体的な事業内容についてお聞かせください。

深田理恵:
弊社は電設資材総合商社です。取引先のメーカー様は約1000社あり、電気工事業の大手から中小企業、個人営業の工事店まで、電気設備の資材を卸しています。

さらに最近では、環境ソリューション企業として、ZEB(※1)のプランニングや補助金提案事業や省エネルギー計算など、省エネコンサルティング業務やカーボンニュートラル(※2)に向けた設備提案なども行っています。さまざまなメーカー様の商品を扱っている私たちだからこそできる事業です。

(※1)ZEB:Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。

(※2)カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、その排出量を実質ゼロにすること。

ーー採用活動ではどのような人材を望んでいますか。

深田理恵:
最近では、新しい事業であるZEBプランニング・補助金提案事業に携わってくれる人材の獲得と育成に力を入れています。2012年に「三本の矢」を公表しましたが、3年くらいは思うように採用につながりませんでした。しかし、「三本の矢」を5年くらい言い続けた結果、高学歴の方が入社してくれるようになり、それが同事業部の実現につながりました。今後も定期的に採用していきたいと考えています。

環境ソリューション企業としての未来に向けた思い

ーー大切にしている価値観や考え方について教えてください。

深田理恵:
すべての人に公平に接することを心がけています。そのため、会社では役職で呼ばずに新入社員から取締役まで、「さん」づけで呼んでいます。役職や先輩後輩を考えてしまうと、上下関係を意識せずにはいられなくなりますが、仕事をする上でもっと他のことに頭を使えたらと思います。人間は感情の生き物です。認めてくれる人のためなら上下関係など関係なく、相手のために自発的に行動しようと思うのではないでしょうか。

ーー今後の展望についてお聞かせいただけますか?

深田理恵:
2000年に「for your life, for our globe」という言葉を使い始めました。世のため、人のため、地球のために存在意義のある会社でありたいと思います。そのために、弊社が進めていくべきことが環境ソリューションです。

2010年から、環境ソリューション企業としてのブランドづくりを進めており、その一環として2014年3月、企業のシンボルとするため、名古屋市東区赤塚町に新社屋を竣工しました。

深田電機本社「赤塚の森」

また、環境に関わる政府からの認定もすでにいくつか受けています。これからは社員の資格取得も促進しながら、全社一丸となって地球の未来のため、CO2削減に取り組んでいきます。

編集後記

「電設資材をただ納品するだけではない。地球のために、企業としてできることをするのだ」という深田氏の力強いメッセージを受け取るインタビューだった。地球温暖化に対し、個人としてできることは限られているかもしれないが、企業が率先して提案することで社会全体の「省エネ」の推進力は高まるはずだ。その未来を示し、地球規模の課題解決のために全力で取り組んでいる中小企業は心強い存在だ。

深田理恵/愛知県立旭丘高校を経て、東京女子大学文理学部数理学科を卒業。1979年、深田電機株式会社に入社。経理を経て、1980年にシステム開発室室長に就任し、社内の基幹システムを開発。1991年に取締役に就任し、その後、常務取締役を経て、2005年に代表取締役社長に就任。