※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

株式会社ソルテラホールディングスは、排水の汚泥から有効微生物を抽出し、農業用バイオ製剤の製造事業も行っている会社だ。高濃度の汚泥を無害化でき、栄養素をダイレクトに添加することで土壌の改善にもなるという。

世界で人口が爆発的に増加し、異常気象による作物の生育不良が進行する中、食糧不足の解消の一助になると期待されている。

ホールディングス化を始めたきっかけや独自の教育プログラム、環境・食糧問題の課題解決にかける思いなど、代表取締役の石田太平氏にうかがった。

「連邦多角化経営」で社員の可能性を広げる

ーーまず貴社の強みについて教えてください。

石田太平:
弊社グループの事業は資源エネルギー循環・環境メンテナンス・建設事業と多方面に分かれており、これらが互いに相乗効果を生み出せることがメリットです。また、ビジネスも循環させることで持続可能な仕組みを構築しています。

東京圏の排水汚泥を処理し、バクテリアでつくった微生物製剤で無農薬野菜を育てる。その野菜をレストランに提供し、レストランから出た排水を回収して微生物製剤にリサイクルする。このように川上から川下まで一貫して携わりつなげることで、循環型のビジネスを生み出しています。

ーーホールディングス化のきっかけは何でしょうか。

石田太平:
あるセミナーで、複数の事業を展開する「連邦多角化経営」という考え方に出会ったことがきっかけです。この経営手法をコンセプトとし、現在では10のグループ会社でおよそ20事業を展開しています。

連邦多角化経営のメリットは、「ヒト・モノ・カネ・情報」など経営資源の共有化や事業連携による相乗効果、ピンチの時のリカバリーなど沢山あります。また複数の事業を展開することで人材の多様性にも繋がり、ポジションやキャリアの選択肢も増やすことができます。

さらに複数の商品やサービスを私たちがワンストップで提供することで、お客様は時間やコストの削減につながります。

ーー経営者として大切にしている考えをお聞かせください。

石田太平:
弊社グループでは「環境」をテーマとし、微生物製剤の開発や廃油再生など、あらゆる事業を展開しています。グループ内で最も歴史の古い株式会社太陽油化は創業から60年以上経っていますが、スタートアップ企業のマインドで常に新しい企画を構想しています。

廃棄物はゴミではなく貴重な資源、家業のイメージが変わったリサイクルの浸透

ーーご経歴についても聞かせていただけますか。

石田太平:
2歳の頃からスキーに打ち込んでおり、国際ライセンスを取得するため22歳のときにアメリカへ渡りました。しかし、世界中から集まった大企業の後継者たちと交流する中で、彼らの志の高さに圧倒されたのです。

ただ親の会社を継ぐのではなく、貪欲に知識を得る姿を目の当たりにし、自分もビジネスについて学ぼうと決意しました。それから4年半かけてビジネスや起業、マネジメントなどについて本格的に勉強しました。その後帰国し、産業廃棄物処理を手がける父の会社に入社しました。

ーー家業を継ごうと思ったきっかけは何でしたか。

石田太平:
正直に言うと、廃棄物処理業の仕事は3K(きつい、汚い、危険)のイメージが強く、あまり良い印象を持っていませんでした。しかし、世の中に資源を再利用する動きが広まり、廃棄物は貴重な資源と捉えられるようになりました。

こうした時代の変化を受け、廃棄物処理業界の可能性を感じ、家業を継ごうと決心しました。

環境ISO取得に向けた経営改革の実践で経営者としての自覚が強まる

ーー経営ノウハウを習得した方法を教えてください。

石田太平:
父は感覚派の人だったので、彼の経営手法を教わるのは難しいと感じていました。そこで知識で補おうとさまざまなビジネスセミナーに通い詰めました。

また、父と知り合いの同業者の方々から、社長としての立ち居振る舞いや心構えなどを学びました。父との昔のよしみで、普通なら教えてもらえないビジネスの秘訣まで教えてもらい、とても勉強になりました。

ーー経営者になることを意識し始めたのはいつ頃でしたか。

石田太平:
大きな転機となったのは、国際標準化機構(ISO)が定めた国際認証規格である環境ISO14001の取得です。この基準をクリアするため、経営基盤やリスク管理など経営の一切を一から見直すことができました。

当時、中小企業にとってはハードルの高い取り組みでしたが、これを機に会社の仕組みが学べ、自社の事情をよく理解することができました。また、自分の手で経営改革を行ったことで、自分が今後経営しやすい環境に整えることができた事が大きなメリットだったと思います。

社員の自主性を育む教育法、経営力を高めて実現したいこと

ーー採用や人材育成についてはどのような考えをお持ちでしょうか。

石田太平:
これから会社の中核を担う若い世代の採用を強化し、組織の若返りを図っています。人材育成に関しては、「フレッシャーズキャンプ」というプログラムを実施しています。このプログラムでは人間力や概念化能力などを養うことを目的としており、入社2〜4年目の若手社員が講師を務めているのが特徴です。

また、会社運営を担う委員会制度というのがありまして、全社員どこかしらの委員会に所属してもらっています。委員長や副委員長を決めて組織運営をすることで、組織運営やマネージメントのトレーニングにもなっているのです。

その他にも、イベントの出展やソルテラGマガジン制作のプロジェクトチームをローテーションで、企画から業者選び、予算取り、稟議まで一連のプロセスを社員に任せています。全社員が広報活動に携わることで、企画立案や情報発信のトレーニングになっています。

ーー今後の展望についてお聞かせください。

石田太平:
現在25ヶ国に提供している「TOKYO8」(※1)を多くの国へ広め、農業を支援し、世界が抱える食糧問題や貧困問題解決に大きく貢献していきたいと考えています。また、未来に美しい世界を残せるように、資源やエネルギーを循環させて環境破壊を食い止め、さらに壊された環境の再生にも貢献していく構えです。

(※1)植物活性用バクテリア製剤「TOKYO8」

また、「TOKYO8」が持つ地中に炭素を固定化する特性を大学などと共同研究し、これをカーボンクレジット(※2)などビジネスとして実用化する事で、地球温暖化防止にも貢献して行きたいです。

(※2)カーボンクレジット:温室効果ガス排出量の見通しと実際の排出量の差をクレジットとして認証して取引できるようにしたもの

編集後記

廃棄物はただのゴミではなく、資源の一部と認識するようになり、家業の見え方が変わったという石田社長。今回の話を聞き、限りある資源を上手く活用し、環境の再生につなげることを、私たち一人ひとりが意識すべきだと改めて思った。環境を軸に新たな事業を展開していく株式会社ソルテラホールディングスは、地球にやさしい社会の実現に向けて尽力していく。

石田太平/1973年、東京都生まれ。Colorado Community College of Denver卒業。2008年に株式会社太陽油化の代表取締役に就任。2015年に株式会社ソルテラホールディングスの代表取締役に就任。