※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

化粧品業界において、化粧品のODM(※1)・OEM(※2)製造で70年以上の実績を持つ株式会社 宮内。同社は「世界に通用する低価格で最高品質の化粧品をつくる」という理念を掲げ、化粧品の処方開発から容器製造、充填機を始めとした設備の開発まで、すべての工程を自社で完結できる体制を確立してきた。

特に容器の自社製造は業界でも珍しく、業界をリードする強みにもなっている。今回は同社の代表取締役である平健一氏に、同社の強みと成長戦略について話をうかがった。

(※1)ODM(Original Design Manufacturing):委託者のブランドで製品を生産するだけでなく、設計やデザインも請け負うこと。

(※2)OEM(Original Equipment Manufacturing):委託者のブランドで製品を生産すること、またはそれを生産するメーカーのこと。

父からの誘いで決意した事業承継

ーー貴社に入社する前はどのようなお仕事をされていたのでしょうか?

平健一:
健康分野に興味があり、父からの勧めもあったため、生命工学を学べる大学に進学し、その後大学院へと進みました。大学院修了後は製薬会社のノボ ノルディスク ファーマ株式会社に入社します。ノボ ノルディスク ファーマは世界でも有数の企業であり、社内の研修制度も充実し、そのままキャリアを積んでいくことを視野に入れていました。

ーー貴社へ入社した経緯をお聞かせください。

平健一:
30歳前後のときに届いた、「会社を継いでほしい」という父からのメールがきっかけです。弊社は私の祖父が創業した会社ですが、メールをもらうまでは後を継ぐといった話は一切なく、むしろ自由な選択を認めてくれていました。しかし、当時社長であった父が経営者としての楽しさややりがいを熱く語ってくれたことで、私も挑戦してみたいと考えるようになり、2015年に弊社へ入社したのです。

入社後は開発職からスタートし、生産管理や品質管理、人事総務など幅広い業務を経験しました。各分野で父を超えることを目標に、本やセミナーで学んだり、父に質問を投げかけたりしましたね。その後、2020年に父が病に倒れ、急遽社長へ就任することとなりましたが、それまでに多くの学びと経験を積めたことに感謝しています。

三位一体の生産体制で実現する高品質なものづくり

ーー貴社の事業内容と強みについて教えてください。

平健一:
弊社は化粧品のODM・OEMメーカーとして事業を展開しています。弊社の強みは主に3つあり、1つ目は化粧品の処方開発力です。アイシャドウやファンデーションなど、さまざまな製品における原料の配合や製造方法を社内で確立しています。2つ目は容器の自社製造です。これは化粧品業界では珍しい特徴で、他社との差別化にもつながっています。

そして3つ目が、充填機や自動機(※3)などの整備も自社でつくっていることです。たとえば、同じ人数で生産する場合でも弊社で改良した機械を使用することで、一般的な生産ラインの2倍のスピードを実現できます。こうした体制により、品質を維持しながら、お客様の要望に柔軟かつスピーディーに対応することが可能になっています。人手不足の昨今、特に自動機に関して興味を持たれるお客様が多いと感じています。

(※3)自動機:人が行っていた作業を機械で行う設備や装置

ーー社長就任後はどのようなことに取り組みましたか?

平健一:
特に力を入れたのが品質改善です。2020年の社長就任時はインバウンド需要の急増で売上が伸びていましたが、その後のコロナ禍によって急激に環境が変わるという難しい局面でした。需要が増えたことによる納期優先の姿勢に対して、品質面での課題を指摘されることもあり、経営理念でもある「世界に通用する低価格で最高品質の化粧品をつくる」という原点に立ち返る必要性を感じたのです。

そこで、人材教育に力を入れる必要性を感じ、製造責任者とのコミュニケーションを重視し、現場の声を活かした改善を推進してきました。現場と足並みをそろえながら品質改善に取り組んだ結果、お客さまから「安心して任せられる」という評価をいただけるようになり、売上も右肩上がりで推移しています。

アメーバ経営の導入で個の力を育て、さらなる成長を目指す

ーーこれからの会社の方向性についてお聞かせください。

平健一:
組織をより強くしていくために、京セラ創業者の稲盛和夫氏が考案された「アメーバ経営」の導入を目指しています。各部署の責任者が経営者のような意識を持ち、自律的に採算を考えて行動することで、社員の成長につながり、ひいては業績の向上にもつながっていくと考えています。

また、現在はアイシャドウやファンデーションをメインに手がけていますが、今後はアイライナーやスティックアイシャドウなどの取り扱いも増やしていきたいです。特に、機密性の高い容器が必要な製品の容器は製造難度が高いので、そういった場面でこそ弊社の技術力が発揮できると考えています。

ーー貴社への入社を検討している方々へメッセージをお願いします。

平健一:
謙虚で努力家であることはもちろんですが、時代を先取りできる新たな発想を持った人材を求めています。私にない視点を持った方と一緒に働きたいですね。ときには奇抜に思えるアイデアでも、弊社の強みである機械設計や容器開発の技術と組み合わせることで、新しい価値を生み出せるかもしれません。

現在は処方設計や容器設計、システムエンジニアの分野で人材を募集しています。特に処方設計についてはAIやDXを活用した開発プロセスの効率化を検討しており、システム開発の面で大きな可能性を感じています。世界に通用する化粧品づくりという創業以来の理念のもと、ともに新しい価値を創造していける仲間にお会いできたら嬉しいです。

編集後記

平社長の「品質第一」という揺るぎない信念が印象的だった。コロナ禍という厳しい経営環境の中でも、現場とのコミュニケーションを重視し、品質改善に取り組む姿勢からはものづくりへの真摯な思いが伝わってくる。70年以上の歴史を重ねながら、なお進化を続ける企業の強さを実感することができた。

平健一/1981年神奈川県生まれ。東京農工大学大学院修了後、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社に入社。2015年に株式会社 宮内へ入社、2020年に代表取締役に就任。