※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

多様なニーズに対応した事業展開を行う企業が増える中、九州・福岡に本社を置く力丸グループは、1962年に有限会社力丸運輸として設立された。その後、運送業だけでなく倉庫事業や梱包事業も展開し、それぞれの分野で会社を設立してきた。創業から62年を経た同社がどのようにして事業を拡大し、成功を収めてきたのか、その秘訣、また、運送業界が抱える2024年および2030年問題などについて代表取締役社長の古場裕典氏に話をうかがった。

多くの事業展開を行うに至った興味深い経緯とは

ーー社長に就任されるまでの経歴を教えていただけますか。

古場裕典:
私のキャリアは、父の縁で入社した福三商工株式会社でスタートしました。同社に21年間在籍する中で、九州電力向け資材を納める営業部門で10年以上、続いて九州電力向け資材を製造するメーカーの担当を経た後、最後の4、5年は総務や経理部門を任されるなど、幅広い業務に携わってきました。

2001年に、先代社長からの誘いを受け妻の実家が経営していた力丸グループに入社し、最終的に2代目社長としての重責を担うことになりました。

ーー貴社の事業拡大の経緯と、組織づくりについてお聞かせください。

古場裕典:
弊社は、1962年に有限会社力丸運輸として創業し、その後、倉庫業、梱包事業にも進出しました。運送業を始めた当初、福岡県古賀の工業団地が近くにあり、そこで多くの工場関係のお得意様を得ることができたのですが、お客様から「納期まで商品を預かってほしい」という依頼を受けたことを機に、倉庫を新設して運輸部門に倉庫事業部を立ち上げたのです。

さらに「商品を仕分けする作業もお願いできないか」との要望に応える形で、仕分け業務を担当する会社を設立して梱包事業も始めました。このようにして、物流の一連の流れに柔軟に適応しながら、着実に事業を拡大してきたのです。

事業の拡大に際し、組織づくりは非常に重要です。弊社は、オープンかつ風通しの良い環境を何より大切にしてきました。社員が働きやすい職場を目指し、組織の強化に注力しています。また、運送、倉庫、梱包といった多岐にわたる事業を展開しているため、将来的には事業ごとに社長を任命する構想も検討しています。社員にとって、社長になるチャンスがあることは大きなモチベーションとなり、会社全体の成長にもつながると確信しているからです。

業界の課題に対応するための取り組み

ーー人材不足による物流・運送業界の2024年・2030年問題について、どのようにお考えですか。

古場裕典:
物流業界全体における人手不足は深刻です。トラックはあるのにドライバーが不足している現状が続き、ここ数年でその問題が一層顕著になっています。さらに、2024年問題としてドライバーの労働時間が制限され、2030年には全体の約30%ものドライバーが不足すると予想されています。この事態は業界全体にとって重大な課題であることは間違いありません。

そこで対策の一つとして、荷物の引き渡し方法について、これまで一般的だった目的地に到着後に荷物をお届け先まで持ち込む方法を見直し、今後は荷物を車上で引き渡す「車上渡し」を原則とすることを検討しています。持ち込みサービスには別料金を設定し、さらに荷下ろしや荷積み、待機時間にかかる費用を含めた運賃体系の見直しも必要と考えています。

また、弊社では運送の効率化を図るため、社内での荷物の「合い積み」を実施しています。倉庫の利点を活かし、同じ方向へ向かう荷物を合い積みする形で運送するのです。さらに、今後は他社との共同配送も模索していく必要があるでしょう。一方で、一部のお客様からは「力丸の便でないと困る」というご要望をいただいており、弊社の品質に対して信頼を寄せていただいていることは、大変ありがたいと感じています。

ニーズに応じた事業展開と人間関係の大切さ

ーー貴社の運送の品質の強みはどこにあるのでしょう。

古場裕典:
弊社の強みは、長年の豊富な経験に基づく「物」を知り尽くした積載方法の工夫にあります。積み込み作業では、手順書を一件ごとに作成し、「緩衝材はここに当てる」といった具体的なことまで指示を徹底しています。また、積み込んだ状態を撮影し、お客様に報告することで信頼を築いています。

弊社の本社は福岡県古賀市にあり、倉庫も古賀市内に複数あるため、九州全域はもちろんですが、本州では関西方面まで運送しています。滋賀県までの運送は一泊での運行となりますが、滋賀のお客様は、弊社のトラックでの運送を指定いただくこともあり、弊社のロゴや社名を掲げたトラックで運送する必要があるのです。

ーー今後の事業展開について、どのような計画をお持ちですか。

古場裕典:
今後は、新しい取引先の開拓に加え、取引先のニーズに合わせてトラックの形状を変更するなど、柔軟な対応で既存取引先との関係を一層深め、長期的な関係を築いていくつもりです。たとえば、力丸梱包株式会社ではピッキング業務の他に、別の事業として食品の製造や販売も行っており、今後は社名変更も視野に入れています。また、新規営業の取り組みを強化し、九州における事業拡大を図り、さらなる成長を目指しています。

幹部育成と後継者育成にも力を入れていきます。幹部育成においては、若手社員の早い段階から教育や実践的な経験を積ませることを重視しています。これにより、将来社長を任せられるような次世代のリーダーを育成し、確固たるリーダーシップを確立していく考えです。

意欲的な社員には、将来的に社長を任せるつもりです。それぞれの能力に応じた適材適所で社長の役割を分担するのが理想だと考えています。これから九州に新しい工業団地ができるため、地元での営業活動がさらに重要になるでしょう。人間関係を大切にしつつ、まずは配車業務を学びながらお客様との関係を築くことが最優先だと考えています。

編集後記

多岐にわたる事業を展開しながら、古場社長は常に取引先のニーズに迅速かつ的確に応えてきた。その柔軟な対応力と果断な経営判断により、力丸グループは物流企業の枠を越え、自社で倉庫を保有し、製造業務にまで踏み込むことで、業界内で独自の地位を築いている。また、人材育成や組織内の人間関係を重視し、堅実で革新的な経営を実現している点も見逃せない。今後も業界の常識を打ち破るような発展が期待される力丸グループ。その動向には、大いに注目する価値がある。

古場裕典/1957年熊本県生まれ。熊本商科大学卒業後、福三商工株式会社に入社。2001年に力丸グループに入社し、2005年に同社代表取締役に就任。