※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

2016年に設立したファンズ株式会社。個人投資家が、企業に間接的に資金を貸し出すことで配当を得られる資産運用サービスを手がけている。金融商品として取り扱うファンドは、金融の専門家による一定の審査を通ったものに限られる。起業のきっかけやサービスの特徴について、代表取締役CEOの藤田雄一郎氏に話をうかがった。

急成長する会社をつくりたい――「個人向け資産運用」の領域へ

ーー貴社を立ち上げた経緯をお聞かせください。

藤田雄一郎:
新卒で入社したIT系の企業に勤めたのちに、友人と1回目の起業をしました。初めて立ち上げた会社はレッドオーシャンの領域で、なかなか思うように成長できず、2012年に上場企業へ売却し、「次はこれから成長する市場で起業したい」と考えました。研究を進める中で着目したのが、日本ではまだ黎明期だったクラウドファンディングです。海外ではインターネット上で個人から資金を集めて、企業に投資することができるプラットフォームサービスが急速に成長していました。

当時の日本ではハイリスク・ハイリターンのファンドを提供するクラウドファンディング事業者が多く、そのような商品も魅力的なのですが、私はもっと利回りが低くても、安定して運用できるプラットフォームの必要性を感じました。その後、共同創業者の柴田と出会い、2016年に創業したのが株式会社クラウドポート(現・ファンズ)です。

「1口あたり1円」から投資できる気軽さと安心感でユーザーを獲得

ーー事業内容やサービスの特徴を教えてください。

藤田雄一郎:
弊社が運営する「Funds(ファンズ)」は、個人が企業に間接的にお金を貸して利回りを得ることで資産運用ができるサービスです。予定利回りと運用期間が最初から決まっている固定利回り型※なので、投資初心者や仕事・家事が忙しい方でも取り組みやすくなっています。「1円から投資できる」「円建て」というメリットもあります。

※「固定利回り」とは、貸付ファンドの予定利回りが募集時にあらかじめ定められていることを意味しており、利回りを確約するものではありません。

資金調達をする企業側からみた場合、社債を発行することに比べて、上場企業にとって利便性が高いことも「Funds」の魅力です。上場企業であっても社債を発行するために必要な格付けを取得するハードルは高く、また、投資適格とされる格付けを取れる企業も多くはありません。日本の上場企業は4000社ほどありますが、そのうち社債が発行できる企業は400社程度と非常に限られているのです。

Fundsで借手企業となるのは、弊社の一定の審査を通過した上場企業が中心です。過去20年のデータを見ると上場企業の倒産率は0.3%以下と非常に低く、また財務状況も開示されています。上場企業を中心にすることで、投資家にとって安心感のある商品が提供できると考えました。

ーーユーザー層についてもうかがえますか?

藤田雄一郎:
SNSやYouTubeを活用したマーケティングを行い、ユーザー数は10万人を超えました。30〜40代の会社員や主婦・主夫の方を中心に、最近は50代以上の投資家様も増えています。運用中の値動きが無い商品を提供することで、資産運用に対する「難しそう」といったイメージも払拭できていると思います。投資のプロフェッショナルと初心者が同時にFundsの利用を開始しても、運用中のパフォーマンスは変わりません。

ーー投資に興味を持つ方へメッセージをお願いします。

藤田雄一郎:
「Funds」は個人投資家の方にも財務状況を確認いただけるような上場企業を中心としたプラットフォームです。創業から現在に至るまで約740億円以上が集まり、これまで1件も元本毀損(元本割れ)や分配遅延が起きていません。※銀行の普通預金の金利が期待できない時代に、利回り1~3%のリターンがあり、すべての利用者が資産をプラスにしています。

※2024年9月12日現在。将来の成果を保証するものではありません。

利回りを得ながら、ファンドによっては優待でお得に生活を楽しめるのも特徴です。株主優待をもじって「Funds優待」と呼んでいますが、投資した企業の商品・サービスをはじめ、グルメやホテル宿泊といった特典がファンドごとに設定されています。今後も投資家の方に楽しんでいただけるよう「自分たちが商品のプロデューサーである」という感覚を社内で共有しつつ、多くの人が投資したくなるファンドや優待を増やしていきます。

未上場企業の伸びしろに着目した新規事業をスタート

ーー新規事業など、今後の展望についてもうかがえますか。

藤田雄一郎:
2023年末に未上場企業向けのベンチャーデットファンドを設立しました。地域金融機関からお金を集めた資金を原資にミドル・レイターステージのスタートアップにデット性のファイナンスを行うファンドです。ベンチャーデットで未上場企業をサポートし、上場後は引き続きFundsでファイナンスのサポートができる点が強みになると確信しています。また、SNSを活用した不動産販売事業も成長しています。
今後は「Funds」の信頼性を一層高めていくためにも証券会社や金融機関との連携をさらに強化していく予定です。セミナーやライブ配信といった、リアルタイムで商品の魅力を伝える取り組みにも挑戦しようと思います。

ーー貴社で活躍できるのはどのような人材ですか?

藤田雄一郎:
専門性の高い人材を必要とする事業なので、幅広い業界から経験者を採用しています。弊社で活躍しているのは「超・自分事」という企業バリューに沿って行動できる人です。「超」は「super」と「beyond」のダブル・ミーニングで、自分の専門領域を超えて会社の課題も「自分事」として捉えていこうという意味を込めています。

日本の企業を元気にしたい――テーマは「国内企業と投資家のパイプ役」

ーー今後の展望をお聞かせください。

藤田雄一郎:
SNSのように皆さんが日常的に使うサービスを目指し、「国民的な資産運用サービスをつくる」というビジョンを掲げています。日本国内には約1000兆円の現預金という個人金融資産が滞留しています。銀行で眠っているお金を投資に回せば日本の企業が元気になり、国全体の景気向上にもつながるでしょう。今後の日本を支える成長企業と、投資家の方々のパイプ役になることが弊社のテーマだと考えています。

編集後記

ITバブル真っ只中の日本で学生時代を過ごし、「ベンチャー企業」という生き方に興味を持った藤田CEO。「起業」を憧れで終わらせず、なおかつ会社を急成長させることに重きを置いてきた。その野心の大きさは現代の日本において非常に頼もしく、「応援しないわけにはいかない」と思わせる求心力があった。

藤田雄一郎/早稲田大学商学部卒業。株式会社サイバーエージェントに入社。2007年にWEB構築・マーケティング支援事業を行う企業を創業し、2012年に上場企業へ売却。2013年に大手融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)サービスを立ち上げたのち、2016年に株式会社クラウドポート(現・ファンズ株式会社)を創業。