建設需要の変化や働き手の減少など、建設業界を取り巻く環境は厳しさを増している。こうした状況下で、神戸市を拠点に公共工事や民間工事を手がける総合建設業の神東建設株式会社は、100年企業を見据えた取り組みを始めている。
新卒採用の強化や業務プロセスの改善など、次世代への技術継承と働きやすい環境づくりに挑戦する同社。今回は、創業70周年を目前に控え、新たな挑戦を続ける同社の代表取締役社長、鳥家章氏に話をうかがった。
夜間学校と現場経験、建設のイロハを学ぶ日々
ーー神東建設に入社したきっかけを教えてください。
鳥家章:
社長であった父から営業の人間が必要だから入ってくれないかと声をかけられました。
その頃、私は介護福祉の仕事をしており、ちょうど介護保険制度が始まったばかりで、業界が盛り上がりそうだと思っていました。しかし、私もその時点で30歳を過ぎており、家族も増えていたので、もう少し収入を増やしたいという思いも抱えていたのです。そんなときに父から声がかかったので、翌年、あまり深く考えずに入社を決めました。
ーー入社後はどのようなことに取り組みましたか?
鳥家章:
入社して2年間は現場で働きながら、夜間の建築専門学校に通っていました。朝から夕方まで現場で働き、そのあと学校に行くので、帰宅するのは毎日22時過ぎでした。とても目まぐるしい日々で、軽い気持ちで入社したことを後悔すると同時に、知らないことばかりで、「建物はこういう風にできるんだ」とか「これはこういう意味だったのか」など、毎日新しい発見がありました。とても大変でしたが、同時にとても楽しかったです。
夜間学校には幅広い世代の生徒がいて、高校を出たばかりの方から私より年上の方まで、さまざまでした。私は年齢が高い方だと思っていましたが、そんなことは関係なく、皆さんと仲良くなれました。今でも付き合いがある方もいるので、とてもいい経験になりましたね。
小学校からマンションまで手がける、Aランク企業の誇り
ーー貴社の主な事業内容について教えてください。
鳥家章:
弊社の事業は大きく分けて「公共工事」と「民間工事」の二本柱です。公共工事は年度にもよりますが全体の30%ほどを占めています。神戸市の企業評価制度では、最高ランクである「Aランク」の評価をいただいており難しい工事でも入札に参加することができます。この評価は、会社の歴史の中で、先人たちが積み重ねてきた努力の賜物ですね。
公共工事では兵庫県や神戸市の案件を中心に請け負っています。学校の新築工事や改修工事など、地元のシンボルとなるような建物をつくることも多いので、そういった仕事に携われることに誇りを感じています。他には、神戸市建築協力会の役員も務めており、神戸市長や職員の方々と意見交換をしながら、市内の建設会社が盛り上がっていけるよう取り組んでいます。
ーー民間工事ではどのような案件が多いのでしょうか。
鳥家章:
民間工事では、マンション建設を得意としており、分譲マンションやワンルームマンションなど、さまざまなタイプの案件を手がけています。他にも鉄骨の工場や商業施設、オフィスビルなどを手がけることもありますね。
また、お客さまとの長いお付き合いの中で、「ドアが壊れた」といった小規模な修繕工事から、2年から3年かけて取り組む大型の新築工事や改修工事まで、幅広く対応しています。大規模な工事から小さな修繕工事まで、地域のお客さまとの関係を大切にするため、どんな仕事でも丁寧に対応しています。
100年企業を見据えた人材育成と基盤づくり
ーー人材採用や育成について、どのような方針をお持ちですか。
鳥家章:
中途採用は随時、新卒採用は今後毎年行っていく予定です。今年から採用サイトを使った新卒採用を始めました。求める人物像は、向上心を持った元気のある人材ですね。向上心があると、日々の仕事を良くしていったり、自分自身を成長させたりすることができると思っています。
将来現場所長になって思い通りに陣頭指揮を執ってみたい方や、知識と技術を身に付けて何でもこなせるようになりたいという気持ちを持った人に来てほしいですね。
ーー今後の展望について教えてください。
鳥家章:
弊社は1957年に創業し、あと3年で70周年、そして33年後には創業100周年を迎えるので、今からその基盤づくりを進めていく必要があると考えています。これから10年、20年の間に100年企業、またその先を目指して体制を整えていきたいと思います。
その一環として、建設ディレクターという役割を新たに設けました。これは現場所長や係員の負担を軽減するため、書類や図面作成などの業務を本社で行う役割です。従来の建設現場では、現場員が最初から最後まで全てを担当するスタイルが一般的でしたが、これからはチームで仕事を進める体制に移行していく予定です。このように現場の負担を減らし、社員を大切にすることが、100年企業への道に続いていくと信じています。
編集後記
鳥家社長の語る言葉の一つひとつに、建設業への深い愛情と誇りが感じられた。100年企業を目指す姿勢は、単なる数字の目標ではなく、社会への貢献を続けたいという強い意志の表れだろう。人材育成や業務改善に真摯に取り組む姿に、この業界の未来を見た気がした。建設という「モノ」をつくる仕事が、いかに「人」を大切にしているかを知り、胸が熱くなった。
鳥家章/1971年、兵庫県神戸市生まれ、神戸学院大学卒業。会社員、スポーツジムインストラクター、介護職員を経て2006年に神東建設株式会社へ入社。2年間、夜間建設専門学校に通いながら現場職を経験。その後、営業として活動し、2017年、取締役就任。2023年に代表取締役社長に就任。