「温故知新」を企業理念に掲げている建部工業株式会社は、本社の兵庫県加古川市を中心に県内全域で上下水道工事、土木工事、設備工事、社会基盤整備などの事業に携わる老舗企業だ。先人の功績をベースにしながら、ICTといった最新の技術を積極的に導入し、職場環境の改善にも尽力している。
DXによる業務の効率化を進めながら、100年企業を目指す同社の代表取締役社長である建部徹氏に話をうかがった。
多忙をきわめても乗り越える心意気で経験を積む
ーー早い時期から会社を継ぐことは考えていましたか?
建部徹:
当初は、会社を継ごうとは思っていませんでした。サラリーマンとして働いていたときに、事業継承の話があり、30歳になった2017年に建部工業に入社しました。
2023年に社長になりました。グループ30名の社員と、52社の協力会社に携わる方たちの生活がかかっていることを考えると、プレッシャーを感じますが、仕事をしていて楽しいと思える瞬間もあります。
ーー貴社の事業について教えてください。
建部徹:
弊社の基幹事業は、上下水道施設の更新工事や改修工事です。たとえば、道路の下に埋設されてる大口径管路の改修や、飲料水を送るための配水場などの施設で土木工事をしています。
現場に出ることは私の楽しみのひとつです。業務時間の4割くらいは現場に出るようにしています。現場にいるとひとつのものが徐々にでき上っていく様子を間近で見られるので、完成したときの達成感は格別ですね。
また、会社の利益が良いときに、社員にどれだけの給料や福利厚生を提供することができるかと考えることも、私にとって大きな喜びです。
ーー貴社に入社後、苦労したことを聞かせてください。
建部徹:
弊社に入社した直後は、1人で現場に出ていました。通勤に2時間かかるため朝4時半に家を出て、現場を把握しきれていない状態で、1年半ほどさまざまな案件に対応した経験があります。人より少し早いペースで学ばなければいけないと意識していたので、振り返るとあのときが一番大変でした。
いち早くDXを取り入れ、働きやすい職場づくりに注力
ーーDXを積極的に導入していると聞きました。実際に取り組んでいることは何ですか?
建部徹:
役員になったときにDXの導入を進めてきました。基本的に弊社の社員は各現場へ直行直帰する為、勤怠管理はクラウドソフトを活用しています。現場に到着し業務を開始するときにスマホまたはパソコンで出勤の打刻を行い、業務が終了し現場を離れるときに退勤の打刻をします。労働時間の計算はこの打刻をもとにして行うので、始業前に現場に到着したときはその時間から残業時間の計算を行います。
DX導入等で労働時間の減少に取り組むとまだまだ人件費の削減が目的と思われることが多いですが、弊社は残業の有無に関わらず毎月30時間分の残業代を固定残業手当として支給していますので、給与が大きく減ることはありません。
労働時間が減少すれば趣味や家族と過ごす時間が増え、プライベートも充実し、仕事への活力となるのではないでしょうか。実際、平日の仕事終わりにゴルフの打ちっ放しに通っている社員や子供を保育園に送り迎えしている社員もいます。
社員にはiPhoneを配布し、工事の詳細を記すための「電子小黒板」アプリを活用して現場で工事写真を撮り、クラウドソフトで写真を整理するように促しています。最近は技術もどんどん進化してきており、便利なツールが増えているので、いろいろと積極的に使っていきたいですね。
ーーDXに関して、とくに貴社が重点的に取り組んでいることを教えてください。
建部徹:
業務の効率化です。ITに置き換えられるものは全て導入し、社員の労働時間を削減できるように意識しています。
若い人に自社の古いやり方を教えても興味を持つ人は少ないのではないでしょうか。そこで、建設のようにDXの導入が遅れがちな業界で、スマートフォンを取り入れるなどの対策をすれば、若い人の興味を引くと思い、先駆けて取り入れるようにしているのです。
地道に努力する心を忘れずDXを駆使して地域のインフラを全力で支えたい
ーー貴社が求める人物像について教えてください。
建部徹:
物事にコツコツと取り組める人に入社してもらいたいですね。短期集中で取り組むということは、おそらくみなさんできることですが、弊社は長期的に取り組む案件も多くありますので、地道に努力できるタイプがふさわしいと思っています。たとえばひとつの現場に2年間携わるとしたら、その2年の間に毎日コツコツと学びながらも新しいことも吸収できるような人が望ましいですね。
新しさは魅力的だと思いますが、古くてもいいものはたくさんあるため平成生まれや令和生まれの人に受け入れられるような現場監督の業務について私も学びながら日々模索しているところです。
ーー地域のために貴社で取り組んでいることはありますか?
建部徹:
加古川市でナンバーワンを目指し、地域の皆さまのお役に立てる仕事をしたいと思っています。
また、弊社は加古川市の防災や生活インフラにも力を入れており、断水になった際に地域の皆さんに水を配れるように貯水槽を用意しています。さらに、倉庫を増築して災害時に備えて発電機を設けました。
今後も、防災だけでなく、さまざまな形で地域に貢献していきたいと思います。
編集後記
地域に密着し生活インフラに関する事業でナンバーワンを目指すという建部工業株式会社。曽祖父から家業を引き継いだ建部社長は、積極的にDXを導入し業務の効率化や社員の負担軽減などを実現させてきた。
地域住民の生活をさまざまな角度から守り、行政と連携して有事に備える活動にも積極的な姿勢が印象的だった。自らの仕事を愛し、楽しみながら社員や地域のために尽力する建部社長は、加古川市のヒーローのように感じられた。
建部徹/1987年生まれ。株式会社フソウに入社し、7年間勤める。2017年、建部工業株式会社に入社。2023年に代表取締役社長に就任。