※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

美容業界に新風を吹き込む株式会社Monopoly。2019年の創業から5年で、12都道府県30店舗を展開し、売上が年商11億円を達成した。

30店舗はすべて直営店だったが、これからは全国でのフランチャイズ展開など、さらなる事業拡大への布石を着々と打ち出している。同社の創業者であり、代表取締役を務める森井健太氏に、美容業界への思いや経営哲学、そしてこれからの展望について話を聞いた。

楽天グループとユニクロで学んだビジネスの基礎

ーー起業のきっかけを教えてください。

森井健太:
私が美容室を経営しようと思ったきっかけは、子どもの頃の経験にあります。

私の両親は奈良県の田舎町で美容室を営んでいました。ピーク時には5人ほどのスタッフがいたのですが、ある日突然両親以外のスタッフが全員辞めてしまったのです。いわゆる組織崩壊ですね。そのときに「自分で美容室を経営したら、もっとうまくやれるんじゃないか」という思いが芽生え、将来は美容室を経営したいと考えるようになりました。

ーー実際に美容室経営に乗り出すまでにどのようなキャリアを重ねてきたのですか。

森井健太:
大学卒業後に楽天(現楽天グループ)に就職しました。楽天はECのトップ企業ですから、ITを使ったビジネスのあり方を学べると考えたのです。次に、リアル店舗の運営ノウハウを学ぶためにユニクロに転職しました。

楽天もユニクロも在職期間は3年以内でした。どちらの会社もビジネスの仕組みが明確だったため、必要な学びをすぐに得ることができました。また、何よりもそこで働く社員の皆さんが、どういうモチベーションで働いているのかというところを常に見ていました。特に人事システムや評価基準などの内容がとても今に生きています。その後、フィリピンに移住して起業しました。

ーーなぜフィリピンだったのですか。

森井健太:
当時、資金が80万円ほどしかなかったため、日本で美容室を経営するには資金が足りなかったのです。日本よりも物価の安い国で起業して、運営資金を貯めたいと考えました。

また、英語を身につけたいという思いもありました。楽天もユニクロも英語が社内公用語でしたが、私は英語が得意ではなく、コンプレックスを感じていました。フィリピンで起業すれば、仮にビジネスが失敗しても、英語は身につくと考えたのです。

ーーフィリピンではどのような事業を営んでいたのですか。

森井健太:
画像編集を中心としたBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業です。しかし、思うように売上が立たず、毎月赤字に苦しみました。フィリピン人の従業員が5人ほどいたので、自分の生活だけでなく、彼らの生活も支えなければなりません。「今月も給料払えるかな」なんて不安に怯えながら、食べていくのがやっとの状態が続きました。

そんなときに、当時フィリピンへの進出を計画していたランサーズから、事業譲渡の申し入れがあったのです。それから約4年間は、ランサーズの子会社として事業を継続しました。そして、資本金が貯まったことを機に、出身地である奈良県に1店舗目の美容室を出店し、美容室経営に乗り出したのです。

フィリピンでは、事業を続けていく上で大切なことを学びました。それは「市場」と「ビジネスモデル」の重要性です。どれだけ頑張っても、市場がなければビジネスは成り立ちません。逆に言えば、市場さえあれば、ビジネスチャンスはいくらでもある。その考えに至ったのが、私がフィリピンで得た一番の学びかもしれません。

分散化された美容市場をチャンスと捉える

ーー美容室経営に対する不安はありませんでしたか。

森井健太:
美容業界は、非常に分散化された市場です。市場規模は約1.5兆円あるのですが、美容室の数は25万店舗以上。「信号機の数より多い」と言われるほど、とにかく店舗数が多いのです。そのため、美容業界は競争相手の多い「レッドオーシャン」などと呼ばれています。

しかし、私はそうは考えませんでした。市場の1%のシェアを獲得するには、単純計算で2500店舗展開していなければなりません。つまり、寡占化が困難なマーケットです。

1社が突出して業界を支配することはできない。それぞれのサロンが、各地域に根差して、独自の強みを磨きながら戦っている。私はむしろ、そこに美容業界の魅力を感じました。規模の大小にかかわらず、創意工夫次第で誰もがチャンスを掴める。そういう意味では「超ブルーオーシャン」と言えるかもしれません。

美容業界は、分散化されているがゆえに多様性に富んでいます。お客様のニーズも十人十色。だからこそ、自分たちなりの価値を見出し、提供し続けることができる。その土壌があるからこそ、ビジネスチャンスも生まれてくる。私はそのことを身をもって学びました。この1.5兆円の巨大市場に挑戦できる喜びをかみしめながら経営に向き合う毎日です。

ーー事業を拡大していく上で、どのような戦略を立てていますか。

森井健太:
創業から4年間、資本金300万円という少額からスタートし、ゼロから直営店を増やしてきました。1ヶ月に1店舗のペースでしたが、この4年で11都道府県に30店舗を出店できました。ここまでは自分たちの目が行き届く範囲で、店舗運営のクオリティを担保しながら拡大を続けることができたのです。

しかし、いよいよ30店舗になると、融資だけだと資金的な限界が見えてきます。そこで、次のステージとして考えているのが、フランチャイズ展開です。

当面の目標としては、10名のフランチャイズオーナーを育成したいと考えています。1人のオーナーが10店舗ほど運営してくれれば、100店舗体制の実現が可能です。

フランチャイズ展開のポイントは、「志あるオーナーをいかに増やすか」だと考えています。だから私たちは、「Monopolyの理念に共感し、自ら手を挙げてリスクを取ってくれる人」を応援する。それが私たちのフランチャイズ戦略の核心です。

ヘアケアメーカー事業による差別化戦略

ーー今後の事業展開について、どのようなビジョンを見据えていますか。

森井健太:
弊社ではヘアケアメーカー事業も行っています。髪質改善トリートメントを開発し、全国の美容師さんに使っていただいています。

多くの美容室にとって、売上の1割がシャンプーやトリートメントなどの材料費です。全店舗の売り上げが10億円だとすると、年間1億円以上の材料費がかかる計算です。それが自社製品に切り替われば、コストを大幅に抑えられ、利益率の向上につながるわけです。

美容室向けのヘアケア市場は、1300億円規模あると言われています。今はまだヘアケアメーカー事業の売り上げは年商1億円規模ですが、将来的には100億円規模のメーカーに成長させたいと考えています。他の美容室にはまねのできない強みを築いていきたい。それが私たちの戦略であり、差別化の武器になると信じています。

ーー最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。

森井健太:
弊社では美容室の経営だけでなく、ヘアケアメーカーの運営、そして今後はフランチャイズ展開など、さまざまな事業に挑戦していく計画です。美容師としての腕を磨きたい方はもちろん、経営やマーケティング、商品開発など、美容業界のさまざまな分野で活躍したい方。ぜひ、私たちと一緒に新しいことにチャレンジしてみませんか。

編集後記

「正しい努力が報われる美容業界をつくる」という崇高なビジョンを掲げ、業界の変革に挑む森井社長。会社設立からわずか4年で11都道府県30店舗を展開するスピード感には目を見張るものがあった。

ヘアケアメーカーの立ち上げ、フランチャイズ展開など、次々と新しい取り組みに果敢にチャレンジする姿勢からは、美容業界に対する熱い思いが伝わってくる。美容室の枠を超えて、業界全体のイノベーションをリードするMonopoly。その挑戦に終わりはなさそうだ。

森井健太/2010年、立命館大学人工知能学部卒業。大学卒業後に楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)に入社し、その後、株式会社ユニクロへ転職。オンラインとオフラインのリーディングカンパニーでビジネスを学び、その経験を活かしてフィリピンにて起業。2019年10月に1店舗目の美容室を出店し、5年後の2024年には美容室30店舗の直営店を12都道府県に展開中。