繊維工業の事業所数が過去15年で約半分以下となるなど、国内の繊維業の衰退は著しい。そんな中、エネルギー事業から繊維事業に参入したのが、協和ホールディングス株式会社だ。同社はファブリックブランド「decon FAB(デコンファブ)」を展開し、サステナブルかつデザイン性の高い製品を提供している。
会社を立ち上げた経緯や、日本の製造業に対する思い、同社で働く魅力などについて、代表取締役社長の立松和也氏にうかがった。
家業を支えるため別会社の立ち上げを決断
ーー家業を継ごうと考えたきっかけを聞かせてください。
立松和也:
私は新卒で京セラソーラーコーポレーション(現京セラ)に入社し、太陽光発電の営業をしていました。多くの中小企業の経営者と接する中で、「自分も経営者になりたい」という思いが芽生えたのです。それを機に父の跡を継ごうと考えるようになり、父が経営する金属加工業の株式会社協和精機に入社しました。
ーー協和精機に入社した当初、会社や市況はどのような状況だったのですか。
立松和也:
当時はいわゆる町工場だったのですが、組織としてうまく機能しておらず、主力製品である半導体部品も市況が良くなかったのです。そこから企業の体制を整えるためさまざまな改革を行い、少しずつ立て直していきました。
それでも半導体市場は景気の変動が激しく、年間を通して仕事量にバラつきがありました。そこで他の事業で本業をカバーしようと考え、2017年に協和ホールディングスを設立し、2020年から本格始動しました。
主力事業以外に新事業を立ち上げた理由
ーー協和ホールディングス立ち上げ時のエピソードをお聞かせください。
立松和也:
当初はLED事業を検討していたのですが、京セラ時代の後輩が入社したのを機に、太陽光発電事業への参入を考え始めます。もちろん上手くいくか不安もあったのですが、当時の状況を鑑みてまだ私たちが入り込む余地はあると判断しました。
後輩が太陽光発電事業の業務に必要な資格を持っていたため、開業準備はスムーズに進んでいきました。そんな中、発電設備の建設業許可を取る場合、経営経験が5年以上ある人を管理責任者として置く必要があると知りました。
そこで急遽、とある大手企業で役員経験がある方に取締役として入っていただき、何とか事業の立ち上げに漕ぎつけました。
ーー主力事業となった太陽光発電事業だけでなく、新たにDtoC事業(※1)を始めたきっかけは何でしたか。
立松和也:
リーマン・ショックやコロナ禍を経験し、先行き不透明な状況でBtoB事業一本ではリスクがあると感じたことです。祖父から父の代までは、世の中が変化するスピードが今ほど速くなかったため、金属加工だけで何とか生き残ってこられました。
しかし、ビジネス局面の移り変わりが早い現代では、リスクを分散するため新たな事業へ投資する必要があると考えました。こうした理由から、主力事業が順調なうちに新規事業への参入に踏み切ったのです。
事業の立ち上げに際し、今の世の中に何が求められているか考えたところ、社会全体をより良くするプロダクトに行き着きました。そこからココロとカラダのセルフケアブランド「DECON」(※2)の運営をはじめ、リサイクル率の高いアルミ缶入りのミネラルウォーター「ka-ra-da mizu(みず)」や、水を使って温かくなる安全なお灸「co-co-ro suikyu(すいきゅう)」などの販売に着手しました。
環境に配慮したセルフコンディショニング商品を提供することで、この世界をより良いものにしていきたいと思っています。
(※1)DtoC(Direct to Consumer)事業:メーカーが自社で企画・製造した商品を直接消費者に販売するビジネスモデル
(※2)「DECON」公式サイト
日本のものづくりを存続させるため繊維事業への参入を決意
ーー新規事業のひとつである繊維事業についても詳しく教えていただけますか。
立松和也:
回収された着物からシルク素材を取り出すなど、一度廃棄された素材を再利用する生地のリメイクを行っています。自社で製造したオリジナル生地を販売しているほか、他社商品のプロデュースも手がけています。
この事業を始めた理由は、日本の製造業のひとつである繊維産業を復活させたいと思ったからです。金属加工事業に携わるようになってから、業界への危機感を抱いていました。しかし、それを上回る繊維業界のひっ迫した状況を知り、これは何とかしなければいけないと感じたのです。
そこで「日本が世界をリードしていた時代を取り戻したい」と思うようになり、繊維産業への進出を決めました。最近では作業着の販売をしており、自社の製品を展示した「脱炭素経営EXPO」の来場者からはデザイン性が高いと好評でした。
今後は海外に向けて発信し、弊社でつくった生地が海外のハイブランドで採用されることを目標にしています。このようにものづくりで日本を変えていくことが、私の使命だと思っています。
そのためには、環境に配慮した商品づくりや労働環境の見直し、代替エネルギーの活用などさらなる工夫が必要です。繊維業界の仕組みを抜本的に変えていき、世界で戦える事業に育てたいと考えています。
新しいことに果敢にチャレンジでき、経営者マインドも学べる職場環境
ーー最後に、貴社の魅力を教えてください。
立松和也:
弊社は新しい事業アイディアを積極的に受け入れているので、興味を持ったことにどんどん挑戦できる環境が整っています。また、結果は賞与に反映されるため、自分の頑張りを可視化でき、やりがいを感じられるでしょう。
さらに、将来的には経営者へのキャリアパスも用意しようと考えています。ゆくゆくは協和精機を統合し、太陽光発電事業、DtoC事業、繊維事業もそれぞれ子会社化する予定です。
そのときは、各会社のトップは社員に任せ、私は全事業を統括する立場に就こうと思っています。給与に関しても各事業のトップの判断に委ね、自分の報酬を自由に設定できるようにしようと考えています。
この構想を実現するため、経費の使い方について指導するなど、幹部候補の養成にすでに着手しています。新しいことにチャレンジできる職場環境や、マネジメントに興味のある方は、ぜひ弊社にお越しください。
編集後記
「ものづくりで日本を変えていくことが私の使命」と話していた立松社長。この言葉からも、製造業で国全体が活気づいていた元気な日本を取り戻したいという熱い思いが伝わってきた。新たなものづくりの形を模索する協和ホールディングス株式会社は、日本の製造業の新たな光となることだろう。
立松和也/2011年、成城大学法学部卒業後、株式会社京セラソーラーコーポレーション(現京セラ)入社。2016年、株式会社協和精機入社。2017年、協和ホールディングス株式会社設立。同年、株式会社協和精機取締役に就任。2018年、株式会社協和精機代表取締役副社長に就任。2019年、協和ホールディングス株式会社代表取締役社長就任。2020年、野村證券川越支店アドバイザリーボードメンバー選出。