アニメ・ゲームグッズを展開する株式会社アルジャーノンプロダクトは、2024年7月にグループ再編を完了し、社名を株式会社カフェレオから変更したばかりだ。2001年の設立当初、なぜアニメ・ゲーム業界に参入し、そして、今なぜグループ再編に踏み切ったのか。今後の展望も含め、創業者で代表の内山田昇平氏に詳しく話を聞いた。
アニメ文化黎明期を見据えた市場開拓への挑戦
ーーまず、アニメ・ゲーム業界に興味を持ったきっかけを教えてください。
内山田昇平:
私は専門学校を中退し、21歳でパソコン販売店に就職しました。パソコンが好きだったので、仕事でも楽しみながら販売のコツをつかむことができました。しかし、高い期待をいただいていたのですが次々と難しいミッションが課せられ、社会経験の不足もあって4年間でエリアマネージャーまで勤めて退職しました。
その後、その会社の退職と同時に取引先のパソコンソフト卸販売の会社から声をかけられ転職しました。ちょうど「Windows 95」が発売され、個人向けパソコンの普及が急速に進んでいた頃です。
同時期に「新世紀エヴァンゲリオン」が放送され、秋葉原がアニメファンで賑わう様子を目の当たりにしました。そして、この分野がこれから大きく拡大するだろうと確信したのです。新しい業界に挑戦したいという気持ちが強まり、半ば勢いで転職して間もない会社を辞める決断をしました。
ーー会社を設立するまでの経緯についてもお聞かせください。
内山田昇平:
アニメ・ゲーム分野で何かをしたいと会社を辞めたものの、転職活動は思うように進まず、雑貨会社の営業職に就くことになりました。そこで、出会った大手ゲーム会社の方から、自社のゲームグッズをイベントで販売しているが、店舗での取り扱いが難しいという話を聞き、「それならば私が」と名乗りを上げてゲームグッズの卸事業を始めました。
少しずつ事業は拡大していったのですが、いくつかの問題もあって経営状況が悪くなり、事業の継続が難しくなりました。自身も責任を取って退社をすることとなりました。しかし、顧客から「なくなると困る」と言っていただけるまでになり、2001年に株式会社アルジャーノンプロダクトの前身となる株式会社カフェレオを設立しました。
ーー設立当初、どのような苦労がありましたか?
内山田昇平:
当時は「オタク文化」が認知されていない時代で、キャラクターグッズ市場もまだ確立されていませんでした。売り場づくりから始まる全てのプロセスが前例のない試行錯誤の毎日でした。
さらに設立当初は、若くして起業することに対して風当たりが強く、信用を得るために本当に時間がかかりました。よい商品があっても取引が成立しないという状況には精神的にも苦しい時期でした。しかし、その後市場が大きく変わる時期が2度訪れました。
最初は2000年代前半の食玩ブーム、次は2010年前後の女性市場の拡大です。今では誰もが当たり前のように、自分はオタクだと公言していますよね。弊社もその波に乗り、成長することができました。
市場の変化を見逃さない!グループ再編での大転換
――運営上で特に気をつけていることや、貴社の強みを教えてください。
内山田昇平:
アニメ・ゲーム業界は非常にトレンドのサイクルが速いため、そのスピードに遅れをとらないことが最も重要です。四半期ごとに60タイトル以上のアニメが放送され、さらに無数のゲームが発売される中で、ユーザーのニーズに迅速に対応し、商品を届けることが求められます。
弊社の強みは、アニメ・ゲーム業界において数少ない「ものづくりから流通まで一貫して行える企業」である点です。長年にわたる卸売業の経験から得た販路や知見、そしてグループ内に抱える物流企業や商品開発力が、その基盤となっています。新商品の企画や制作、ウェブサイトやシステムの開発など、全てをグループ内で完結できる体制を整えています。
――2024年7月に実施されたグループ内での合併と社名変更についてもお聞かせください。
内山田昇平:
市場の変化に対応するための決断です。従来は、版元やメーカーが川上に位置し、卸業者が川中で仲介し、店舗が川下で販売するという流れでした。しかし、EC(電子商取引)が一般的になるにつれて、版元やメーカーが直接販売するようになり、卸業者の役割が縮小しつつあります。
この流れに対応するため、弊社も卸業からメーカー業へと大きく転換する決断をしました。グループ内の3社を合併し、吸収したメーカー会社の社名を引き継いで、アルジャーノンプロダクトに改称したのです。
ニーズに応え、サプライズを創出する、挑戦し続ける企業へ
――採用に関して、どのような考えをお持ちですか?
内山田昇平:
私自身が30歳で起業した経験から、社員の成長を支援できる会社でありたいと常に考えています。これまでは必要なポジションに補充する形で採用していましたが、これからはオープンポジションを設定し、応募者のキャリアプランややりたいことと会社のニーズをすり合わせる形で採用を進めるつもりです。
アニメ制作会社や出版社、ゲームメーカー、販売店など、多くのステークホルダーと関わる業界であるため、ビジネスチャンスは豊富です。
――今後の会社の方向性について、どのように考えていますか?
内山田昇平:
現在、会社全体で「前例をつくる会社」というテーマを掲げています。私たちの使命は、単にニーズに応えるだけでなく、お客様に驚きと感動を提供することです。
グループ再編を経て、会社規模の拡大よりも、アイデアと技術を結集し、新たな挑戦を続けることが重要だと感じています。日本国内でもまだまだ挑戦の余地はありますが、今後はグローバル展開を視野に入れ、アルジャーノンブランドを世界に広めていきたいと考えています。
編集後記
着実な努力と成果の積み重ねの重要性を強調した内山田氏。その言葉の裏には、市場の動向を敏感に察知し、即座に的確な対応をとる内山田氏の卓越した感覚がある。メーカーへの転換を果たしたアルジャーノンプロダクトは、今後も業界の先駆者であり続けるだろう。その製品が「アルジャーノンブランド」として世界に認められ、大きな飛躍を遂げる日が楽しみだ。
内山田昇平/1971年、東京都昭島市出身。専門学校を中退後、パソコンショップやPCソフト卸売業で営業職を経験。2001年、ゲーム・アニメ関連のキャラクターグッズ流通業の株式会社カフェレオを設立。2024年にグループ再編を行い、社名を株式会社アルジャーノンプロダクトに変更。