※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

爪切りや毛抜きなど刃物製品の製造・販売を行う株式会社グリーンベル。創業以来堅実なものづくりを続け、今年で創業56年目を迎えた。

日本製の高品質なオリジナル製品が消費者から支持され、今期は同社最高売上となる見込み。
ますます成長と進化をとげる老舗メーカー株式会社グリーンベルの代表取締役の石田逸人氏にこれまでの軌跡と今後の展開をうかがった。

高品質のオリジナル商品を生み出し続ける老舗企業の強み

――貴社の事業内容を教えてください。

石田逸人:
私たちは爪切りや毛抜き、はさみなどの刃物製品を製造する刃物メーカーです。私の父が1968年に創業し、私自身が2014年に3代目社長に就任しました。
売り先は国内がメインですが、海外にも販路を広げています。

――貴社商品の強みは何でしょうか。

石田逸人:
弊社の製品の強みはなんといっても品質の高さです。弊社では95%国内製で最終加工までを行うため、品質が安定し不良品がほとんどでてきません。
また、検品体制は一見「異常だ」と思われる程厳しく、検品した製品のうち50%はやり直しを実施しています。海外製の商品でここまで徹底して品質を管理することは困難です。
加えて、自社オリジナル商品を開発できることも強みの1つです。
市場調査のほか、美容師やトリマーの方など消費者の所へ出向き、「不便なところはないか」「どのような商品が欲しいか」など、直接ニーズをおうかがいしています。半年に一度全社員で新商品の開発会議を行っており、そこででてきた提案を深掘りして商品化することもあります。

弊社では利益第一主義ではなく、品質や消費者第一主義を掲げ、消費者の方々が喜ぶ商品作りを心がけています。

――2014年12月に社長に就任されましたが、その際に困難は何かありましたか。

石田逸人:
社長に就任するという重圧は大きかったですが、ひたむきに仕事に取り組んできたので、特に困難に感じたことはありませんでした。

創業者からは「何ごとも物ごとの本質を見極めることが大切」ということを学びました。この教えを軸に、日々新しいことに取り組み、改革を進めています。

海外展開での苦い経験を力に。3代目社長として取り組む体制改革

――商品販売について苦労されたことはありますか。

石田逸人:
弊社で最も販売量が多いのは、「匠の技」ブランドのシリーズ商品です。しかし、この商品を中国で販売し始めたばかりの段階で、中国の会社に商標登録されてしまった経験があります。
また、オリジナルで開発したプラスチック製のまつげカール器が、中国、台湾、韓国の会社にコピーされ、世界中で販売されるということもありました。これらの経験から、新商品については全てデザインパテント(意匠登録)取得を厳守するようになりました。

――社長就任後の社内改革についてはいかがでしょうか。

石田逸人:
1番に取り組んだのは部署間のコミュニケーションの活発化と社員の労働環境の見直しです。
弊社は小さい会社ですが、他部署との交流がほとんどなく部署間に溝がありました。そこで営業所間で競い合うのではなく、協力し合うことで売上を増やしていくという体制に変革するために、各店の統括として、マーケティングの責任者を創設しました。こうした改革もあり、コロナ禍で一時落ち込んだ売上も回復し、今期は創業以来最高の売上となる見込みです。

労働環境については上長と部下が1対1でミーティングできる機会を設け、社員が意見を伝えやすい場を作っています。私自身も定期的に工場に足を運び、準社員さんを含めた皆さんに声掛けをしています。

積極的な人材採用により生産力を強化。商品をより多くの人の手へ

――人材採用についてはどのようにお考えでしょうか。

石田逸人:
ありがたいことに現在たくさんのご注文をいただいており、需要に対して生産が対応しきれていないというのが現状です。そのため弊社としては人材採用を積極的に行いたいと考えています。
これまで積極的な採用活動ができていなかったのですが、最近では高校を回り、地道に先生方に会社のPRをしています。

また製造工場がある岐阜県関市で年に一度開催されている「刃物まつり」へも出展しました。一般消費者の方に弊社の商品を知っていただくことが目的でしたが、こちらの催しで弊社を知り、中途入社してくれた社員もいます。こうした露出も重要だと感じました。

中途採用も積極的に行っています。
弊社は多種多様な商品を製造しているので、どんな経歴を持っているかに関わらず、その経験を生かしていただける環境が整っていると考えています。

――海外展開についてはいかがでしょうか。

石田逸人:
海外からも多くの需要をいただいておりますが、やはり人手不足で対応しきれていません。
これほど引き合いをいただけるということは弊社の技術力、商品力の証だと思うので、この需要にお応えできるように生産体制強化を進めていきたいと考えています。

――今後の目標を教えてください。

石田逸人:
昨今の時代の変化は激しく、先行きが非常に見通しづらい時代になったと感じています。弊社は幸運にも他社が真似できない技術を先人が開発し、市場に受け入れていただいています。今後もこの高品質の技術を活かし、さらなる改善を加えながら、少しずつ世界の人々に日本の刃物を広めていきたいと考えています。

編集後記

同社の爪切りや毛抜き、耳かきなどの日用品は誰もが一度は手に取ったことがあるのではないだろうか。
徹底した品質管理から生み出されたオリジナル商品は、国内外の消費者から強い支持を受けている。
また、商品作りだけでなく、部署間のコミュニケーションの活性化や職場環境の改善といった社内改革、デザインパテントの取得厳守といった会社の屋台骨の強化にも抜かりがない。

今後の株式会社グリーンベルの躍進に注目したい。

石田逸人(いしだ・いつと)/1991年7月に株式会社グリーンベルへ入社。海外課・マネジャー、2002年には支店長としてアメリカ駐在、マーケティング課・マネジャー及び商品管理部部長などの業務を経て2014年12月、同社の代表取締役に就任。