※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

ギリシャ神話や聖書の中に何度も登場し、いにしえの時代から宗教的にも民族的にも重要な役割を果たしてきたオリーブオイル。ヨーロッパや中東を中心に、古くから民間療法や食用として重宝されてきた。

そんなオリーブオイルの歴史と文化を深く理解し、科学的根拠に基づいた製品開発を進めてきた日本オリーブ株式会社。業界の先駆者的存在である同社の代表取締役社長、服部芳郎氏に、企業理念と製品開発に込める熱意、そして社会貢献への思いをうかがった。

オリーブオイルの専門家集団として科学的根拠に基づき製品を開発

ーー貴社は創業76年(2025年時点)の老舗企業ですが、創業時のエピソードと家業を継いだ理由をお聞かせください。

服部芳郎:
岡山県に本社を構える弊社がオリーブ事業を手掛けるようになったのは、第二次世界大戦中のことです。服部家は江戸時代から続く商家で広大な土地を所有していましたが、軍から「食料確保のため、芋畑にしてほしい」と要請があったそうです。

「すべての土地を芋畑にすると瀬戸内市の美しい景観が損なわれる」との思いから「栄養価が高く、薬用にも灯火にもなる植物」として曽祖父が1942年、牛窓の山にオリーブを植樹したのが事業の始まりです。

その後、曽祖父はオリーブの効能について研究を重ね、1949年に日本オリーブ株式会社を設立。第一号製品である「オリーブマノン バージンオイル(化粧用)」を同時に発売しました。

私は幼少期から特に家業を意識することなく育ち、大学卒業後は、一番興味のある研究に取り組みたいと考えました。そこで、ソニー株式会社で半導体の研究に従事し、スマートフォンのカメラに用いられるイメージセンサーの開発に携わりました。世界最先端の現場で研究に取り組んだ経験が、私の仕事に対する姿勢を培ってくれたのだと思います。

30代になり、人生について考えたとき、祖先が築いてきた事業を一生の仕事にしようと決意し、弊社に入社しました。

ーー貴社の事業について教えてください。

服部芳郎:
弊社の特徴は、オリーブの専門家集団だということです。オリーブの栽培から、それを原材料とした化粧品や食品などの製品開発・製造・販売までを一貫して行っています。販売エリアは北海道から沖縄まで、日本全国に広がっています。

私たちの強みは、創業以来続く自社での研究体制です。直接人々の肌に触れる化粧用オリーブオイルを製品化するにあたり、「しっかりとした科学的な知見に基づき、人々の暮らしに役立つものを作っていこう」という創業者の思いを、70年以上受け継いでいます。

新規成分の開発においては、岡山大学との共同研究も行い、特許を取得しています。これまで、化粧品業界に先駆けて生薬を配合した化粧品、無香料の製品、果汁を配合した化粧水など、多彩な製品を開発してきました。科学的な裏付けをもとに、オリーブの可能性を引き出した製品を世の中に出していけることが、弊社の強みの一つです。

研究者としての経験を活かし、歴史と文化から紐解くオリーブオイルの本質

ーー新製品を研究するにあたって、こだわっていることはありますか。

服部芳郎:
私が弊社に入社して、疑問に感じたのは「おいしいオリーブオイルや、体にいいオリーブオイル」を追及する中で、歴史や文化に基づく研究をしている企業がどれだけあるのかということでした。

前職で出会った優れた研究者たちは、製品開発に取り組む際に、必ずその背景に基づいて対象にアプローチしていたため、私もオリーブについて歴史と文化から問いなおして、仕事に向き合おうと考えたのです。

オリーブの歴史をひも解いていくと、当初は「肌に塗るもの」であったことがわかりました。たとえば、イエス・キリストやギリシャ神話の英雄オデュッセウスとオリーブオイルとの関わりが、聖書や神話などに、頻繁に登場します。キリスト教の儀式では今もオリーブオイルが使われています。

また、ローマ帝国時代の博物学者プリニウスの文献には、「肌に塗るオリーブオイルと食べるオリーブオイルは正反対のものでなければいけない」と記されています。これは、食用のオイルは色や味が濃く、香りが高いものを、肌に塗るものは色が薄く香りのないものを選びなさいという教えです。

肌が弱い人には、強い色や香りが刺激になることも、紀元前にはプリニウスによって研究されていたというわけです。

こうした歴史的・文化的な背景を社内全体で共有することで、社員がオリーブに関わる仕事に対して改めて誇りを感じてくれるようになったと思います。

これまでオリーブオイルに抱いていた「体にいい」「おしゃれ」といった漠然としたイメージではなく、具体的な根拠を知ることは、仕事と向き合う上でとても大切なことだと感じています。

真摯な研究姿勢で、オリーブの可能性を引き出す

ーー貴社の新製品について、教えてください。

服部芳郎:
今回紹介するスキンケアの新製品「PLINI OLIVA (プリニオリーバ)スキン オキシバランシングエッセンス」は、オリーブオイルやオリーブの果実・葉からつくり出した独自成分など、オリーブの恵みをまるごと凝縮することで、肌本来のチカラを引き出す自信作です。

大きな特徴は、お風呂上がりの濡れた肌に塗って使う点ですね。一般的には、体にオイルを塗るとベタつくイメージがあると思いますが、当製品は濡れた肌の水滴と油分が混ざり合い、サラリと浸透するため、ベタつかずに快適にお使いいただけます。

お風呂上がりのわずか30秒でスキンケアが完了しますので、忙しい方や小さなお子さんがいる方にもおすすめです。毎日使うたびに、肌が潤っていくのを実感していただけると思います。

ーー貴社の未来展望についてどのように考えていますか?

服部芳郎:
これからも大切にしていきたいのは、真摯な姿勢で研究を続け、オリーブが持つ本来のチカラを引き出し、その魅力を多くの方に発信していくことです。

この取り組みこそが弊社の存在価値であり、使命だと考え、誠実に業務に取り組んでいきたいと考えています。

編集後記

インタビューを通じて、普段何気なく口にしたり、スキンケアに使ったりしている身近なオリーブオイルの奥深い歴史と文化に触れることができ、科学的なアプローチも重視する服部社長の製品開発への情熱と真摯な姿勢に感銘を受けた。

オリーブオイルを単に生活用品として捉えるのではなく、時を超えた価値を宿したものとして周知に努めている。日本のオリーブオイル業界をけん引していく同社の今後が楽しみだ。

服部芳郎/1983年、岡山県生まれ。大阪大学基礎工学部卒業。大阪大学大学院基礎工学研究科修士。2008年にソニー株式会社に入社し、半導体研究に従事。ソニー物性物理学講座の塾長を務める。2015年、日本オリーブ株式会社入社。2019年、代表取締役社長就任。経営者として事業を行いながら、研究者として歴史・文化を土台としたオリーブの総合研究に注力している。